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第二回:理学療法士の技術を活かせなかった病院勤務時代【看護師/理学療法士/介護福祉士|羽田真博先生】

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統一感の違和感

 

羽田先生が看護師として働く際、最初に急性期病院を選んだのはなぜですか?

羽田先生 急性期という医療の入り口・現場を知っていないと、看護師に対して失礼だなと思いました。自分がやりたいことをやるために、スピード感だけを求めるなら、すぐに在宅領域へ行っても良かったのですが、急性期を経験しておきたい理由が自分の中にはありました。

 

急性期病院のイメージは、1日中バタバタして、1人の人に長く関わることはできない、という漠然としたイメージがありました。実際、中に入ってみて、数多くいる看護師の中の1人として働いて、「多くの看護師はどんな感覚で働いているのか」を知りたかったんです。業務的な所ではなく、社会生活とか価値観、文化とかも含めて。もちろん、在宅領域で必要な看護技術も一通り経験しておきたかった。

 

実際働いてみてどうでしたか?

羽田先生 カルチャーショックがありましたね。看護師の場合、良くも悪くもみんな一緒。例えるのであれば、軍隊気質って感じです。出来なくても、出来すぎても浮いてしまう文化。

 

セラピストであれば、患者さんとの1対1の時間が長いですよね。チームで動く時間は少なく、マルチタスクでもない。

 

看護師は、チームで動いていることの方が多いので、統一化が重要視されます。患者さんにとっていいことであっても、チーム全員が同じことを提供できなければ煙たがられます。個人が突き抜けにくい文化ですね。人材が育ちにくいんじゃないかなという印象でした。金太郎飴キャリアと言いましょうか。あくまでも、私の経験上の話なので、業界全体がそうなのかは分かりませんが・・・。

 

逆に、療法士と比べてこういうところがいいよっていうのはありますか?

羽田先生 やはり資格を存分に生かした形での起業ができるのがいいですよね。特に、訪問看護ステーションは看護師が社長になれるわけですから。セラピストが経営している訪問看護ステーションも多いですが、なんで自分達で出来るのに雇われる方を選ぶのかなー?と思ったりもします。それが悪いとは言わないですけどね。

 

また、縁あって看護連盟の活動に参加させて頂いた際に、数の強さを実感しました。理学療法協会・連盟の比にならないですよね。そう思う一方で、170万人という数を上手く使えていないな、と感じる部分もあります。

 

療法士は今政治家3人でしたよね。看護師は4人。母数を比べると、ちょっともったいないなって気がしますね。単純計算したら、余裕で政党作れるくらいの政治家を出せるだけの素地はあるわけですよ。看護師は特にそうですが、昔は今よりも非人間的な労働環境だったわけです。人事院裁定無視の病院も多かったと。「ニッパチ闘争」と調べたら詳細は出てくると思いますし、看護連盟のあゆみを見られた方がよいと思います。

 

いくら現場で愚痴を述べていても国がハンドル握っている部分が多いわけですから、そういった事実と向き合わないと。政治に興味ありませんってことは、現行ルール変えなくても文句ありませんってことと一緒ですから。現場で愚痴や感情的批判ばかりを吐いて、建設的な代替案も出せないのであれば、黙っていてくれた方が、組織は平和ですよね。批評家なんて誰でも出来ます。変えたきゃ当事者になれと。

 

看護協会がやっぱり政治力では上回っているんじゃないですか?

羽田先生 強いというか170万人もいたら優秀な人もたくさん出てきますよ。その差は、ありますよ。上の人たちはロジカルに物事を進めてくださっているので、そういった意味ではどの業界でも優秀な人は優秀だなって思います。

 

PT協会は、正直、そんなに定点観測していないですけど(苦笑)、周囲から伺っている話も含めて考えると、理事の構成バランス、つまり、年代的な部分と職域のバランスは、もう少し戦略的に考えた方が、結果として組織の最大化を図れるのではと思いますね。世代で何人とか、病院系、教育機関系、起業系等で比率調整するとか。偏ると偏った意見や価値観になりがちですから。責任世代が理事に増えた方がいいと思いますね。本当に優秀な人は、次世代に道を創る、次世代をフォローするものでしょう?違いますか?

 

優秀な人間、実態のある人間、成果を出してきた人間は勿論、人が離れたい、興味を抱かない組織は、総じて上に責任があるものです。って、何かの本で読みました。これは、僕の意見ではないです。ここは編集しないでください(笑)。

 

あるインタビューで「看護師として勤務していた際、理学療法士の技術を活かすことが出来なかった」という記事をみたことがあるんですが、実際はどうでしたか?

羽田先生 病棟勤務の場合は、1人の患者さんに長く関われるわけではなく、複数人の患者さんを受け持って、マルチタスクとしてやっていかなければなりません。ERでは更にその速度も質の高さを求められます。そこに、理学療法士らしさを、そのまま出そうというのは無理な話です。そもそも、看護師として働いているわけですから、理学療法の提供が主たる業務ではないですし。

 

ただ、そこまで時間をかけなくても出来ることってあるじゃないですか。でも、呼吸が楽になる方法を知っているからといって、それをやろうとすると「あなた看護師でしょ?」という人も中にはいました。私は、「使えるものは使ったほうがいい」という考え方でしたが、看護学生の時もそういうことがありましたし、「看護学生なのだから理学療法士のバイト辞めたら?」みたいなことも言われました。入学試験では「なんで理学療法士のあなたが来るの?」とも問われましたし。その辺は、各自色々と考え方があり、私のためを思ったアドバイス、問い掛けだったと思いたいですが、今振り返ってみても、やっぱりよく分かんなかったなというご指摘もありました(苦笑)。

 

病院で求められるリハと、在宅で求められるリハは全く違う

 

理学療法士のイメージとして、フィジカルアセスメントの能力が高いように思いますが、看護師さんでも必要なスキルだと思っていました。ですが、そういうところで役に立ったっていうことは無いんでしょうか?

羽田先生 いや、役に立たないということは無いですけど、同じ知識でも使い方が全然違うと感じますね。セラピストのフィジカルアセスメントと看護師に求められるアセスメントは違いますし。セラピストはどうしても限局的になりがち。看護師はもっと広いですね。学生時代に学ぶアセスメント項目を見ても、その差は顕著です。

 

例えば、循環器・消化器・泌尿器等の内科系に強いセラピストは相対的に少ないと思うのです。やはり運動器や中枢神経系に偏りがちですよね。心臓リハや呼吸リハを専門的に行っているセラピストは圧倒的に少ないですし。認定PT数にも傾向は出ていると思います。

在宅領域で仕事をしていて思うのは、内部疾患を抱える患者さんに対しても、残念ながら運動器や神経系のアセスメントやアプローチしかしてこない、できないセラピストが多い印象です。

 

在宅においては、それだけでは全く足りません。内部疾患にアンテナを張っていないと「何のために訪問行っているの?」と言われてしまいます。食事の摂取量や排泄状況、睡眠の状態とかすごく大事なことなのですが、意識して見てくることはほとんどありません。

 

「生活をみる」という言葉を最近よく聞くようになってきましたが、「何をもって生活をみるのか」ということが抜けているように思います。今の私の感覚でいうと、病院でやっているリハを、そのまま在宅でやってしまっているように思います。病院で求められるリハと、在宅で求められるリハは全く違う分野だと認識することが大切です。

 

いまは主にマネジメントをされていると思うんですが、現場に行くときはPTとして?看護師としていかれることが多いんですか?

羽田先生 実は両方です。登録上は看護師で登録しています。ただそれは、私にとっては行政手続き的なものであって、看護師がリハビリをやってはいけないという話ではありませんから。

 

理学療法士として登録して、看護師の業務(診療の補助)を行うことはNGですが、逆はOKです。ですから、両方の資格を活かせるような働き方をしています。今はほとんど現場に出ないのですが、出ていた時は末梢点滴実施後に、リハをすることもありましたし、リハ依頼から看護も必要となり、看取りまでさせて頂いたこともあります。

 

あと、これは、会社の利益にならないかもしれませんが、私1人が行けば済んでしまうことも多々ありまして。看護もリハも介護も分かる、急性期から在宅まで知っているとなると、私1人で行って、アセスメントしてくる、会議してくると解決することも多いので、そういった意味では重宝されたりします。依頼する側も依頼しやすいですよね。ケアマネさんや退院調整スタッフの方々との共通言語を沢山持っているので。出来れば、属人的な仕事の仕方は増やさない方がよいのですが、立ち上げの頃は、時間も惜しいですし、勢いもつけたいですし、戦略的な部分もありました。

 

続くー。

 

【目次】

第一回:祖父の死で感じた逝き方を選択するということ

第二回:理学療法士の技術を活かせなかった病院勤務時代

第三回:価値ある人間であれ

最終回:ナンパをしたら給与が上がる??

 

羽田真博先生のプロフィール

看護師/理学療法士/介護福祉士

職歴

2006年4月:医療法人 仁斎会 国府病院 理学療法士

2012年4月:岡崎市民病院 看護局 看護師

2014年1月:協和ケミカル株式会社入職 

同年5月:総合ケア在宅支援事業部 

       キョーワ訪問看護リハビリステーション 寄り添い屋開設 マネージャー就任

2018年1月:株式会社 AGRI CARE入職 新規事業開発部 部長就任

 

その他

一般財団法人 日本尊厳死協会東海支部 理事

エンディングサービスセンター かかりつけライフマネージャー

自立支援リハビリテーション研究会 役員

株式会社COCOHALE 温故知新プロジェクト「-tsutau-つたう」 PR/プレス

医療・介護「働き方改革」推進協会 世話人

POTENTIALIZE(ポテンシャライズ) 

販売戦略室室長/適性・性格検査ポテクト 公認エバンジェリスト              ・・・等


 3次救急病院ERから療養型病院、介護施設、在宅まで様々な領域で経験を積み重ねてきた過程で得た「見る・視る・観る・看る・診る」といった多角的な視点と、職種・領域の違いによって起こる連携上の課題を実践知として経験していることが最大の強み。多様な「み方」を用いて、臨床・共育・組織マネジメント・異業種連携に携わっている。 弱みは、一つの領域に対する経験の浅さと、女子からの「おねだり」と「お願い」。座右の銘は、「日々是愛撫」。

第二回:理学療法士の技術を活かせなかった病院勤務時代【看護師/理学療法士/介護福祉士|羽田真博先生】

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