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第二回:人生の切り売り的仕事【細川寛将先生】

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業界依存スキルと組織依存スキルと汎用可能スキル

 仕事を依頼される人物像ってどんな人だとお考えでしょうか?

 

細川先生 まず、スキルには「汎用可能なスキルと業界依存型のスキルと組織依存型のスキル」というのがあります。組織依存型のスキルは〇〇病院では「すごいね」と言われていて、他では通用しないことです。また業界依存型のスキルは、〇〇テクニックとかのことで、PT・OTの業界に特化したスキルなので、それを元にセミナー講師とかに呼ばれたりすることがあると思います。ただ、他の業界からしたらよく分からないスキル。

 

一方、汎用可能なスキルは僕が考えるに、それらの情報を統合して、どう異業種に役立てようかということです。これは少し抽象度が高いというか、何処と何処をつなげるとか、リハビリ×〇〇とかいってみたりですね。〇〇テクニックとかではなく、「作業療法士として社会や環境を変えていきたい」という想いがあったので、そういう抽象度が高いものを扱っていました。

 

自分をもっと知ってもらうために、ブログなどで発信していて、それが周りからも可能性を感じてもらえた要因だったのだと思います。

 

 医療業界で複業が広まっていくとしたら、どのようになっていくと思われますか?

 

細川先生 医療業界は他の大企業なんかと比べるとAIもIOTもそうだけど、大体遅れて入ってきます。そもそも、なぜ複業とかパラレルキャリアとかが求められているかというと、日本では大企業、主にはエンジニア系から広まってきています。エンジニアって人材難なんですよ。それを補うために、働き方の多様性が求められてきます。一方で医療業界はというと、人材難なんですよね。そうなると人材難という点においては、共通項です。

 

しかし医療業界の人たちは、就業規則の兼ね合いでこそこそと副業している人はよく聞きます。看護師さんが夜のお仕事をしたり、介護士さんがコンビニでバイトしていたりという話です。医療、介護業界は、他の企業とどう違うかというと、常勤換算があることですね。7対1看護だったり訪問看護でいうと2.5だったりとか、国が定めた基準があるので、それを満たさないと事業として回って行かないんですよね。

人材コストで6~7割くらいの業界なので、人材難というのは付いて回るし、そういった面でも複業とかパラレルキャリアとかは認めていくべきだと思っています。一方で地方の過疎村は、それが問題になっています。例えば市民病院とかはDr.がいっぱいいるけど、他の総合病院は人材難、そして兼業も禁止だと。

 

それで「どうしよう」となった時に、公務員だけど条例で認めようということにします。少しずつ出来るようになってきていて、条例で他の病院に行くことも出来るようになってきています。それが、地方単位のレベルで出来るように取り組んでいるので、人材難の突破口になっています。

 

 *副業:収入の足しにするためのもので、本業の収入にプラスアルファの収入を与えて、家計の足しにしたり貯金を殖やしたりする、財布の中身を増やすためのもの
*複業:収入が増えるというのはあくまで付加価値であり、その本当の目的は人間的成長や夢の実現になる行為で、第二のキャリアを自らつくるもの

*パラレルキャリア:軸足はあくまで本業の会社におき、社外活動であっても何らかの形で本業に結びつけることを意識し、社外との関わりを作ることを指す場合が多い。この点が、本業と全く関係ない仕事を時間外に行う「副業」と異なる点。

(複業・パラレルキャリアは類似点が多いため、まとめて用いられ「副業」と分けて使われることが増えてきている。)

 

自分自身の「看板」「ブランド」をもつ

 

病院勤務のPTOTが外の世界に出てすぐ活躍出来ますか?

 

細川先生 結構聞くのは、週休2日で休みの日に訪問看護として働いているということを聞きます。それが将来的にずっと続くのかというと、結局は自分の時間を削って仕事をしているだけですし、それでスキルが上がっているわけではないです。あとは、ブロガーとか増えてきていますけど、ブログをやってもなかなか収益って上がってこないんですよね。

 

PTOTが時間の切り売りで働くとなると、デイサービスや訪問看護にスポットで行ったりすることになります。そう意味では、病院外でも通用すると思います。

 

ただ、それが将来のキャリアに繋がるかというと目先の“小銭稼ぎ”になってしまうので、いわゆる日雇い労働者と同じですよね。ただ、訪看のバイトっていいかというとリハに関しては、どんどん点数は下がってきています。昔ほどは稼ぐことが出来なくなってきています。そうなると、次の手段は「他のバイトに行ったほうがいいんじゃないか」とか考えますよね。

 

そうじゃなくてPT・OTが本当に考えなくてはいけないのは、時間を切り売りするのではなく、自分のキラーコンテンツを作ってそれを自己表現することです。そうすると、僕の友達のPTでもいますが、医療機器や車椅子などの開発に関わる案件が増えてきます。彼らが何をしているかというと、スポットでいって月々10万円くらい貰っています。

 

医療機器メーカーからすると、専門職を雇うほど余裕はないと。ただ、現場レベルの意見は聞きたい。けど、そういう動きってないですよね。そこでミスマッチが起こっているんです。ということは、そこをマッチングしてあげるだけで、収益に繋がります。自分の価値を活かせる。価値を活かすためには、他の人とは違う「キラッ」とした部分を持っておく必要はあると思います。そこを売り出していける「ブランド・看板」を持つことが、大事なことではないかと思います。

 

【目次】

第一回:アートをリハに生かす作業療法士

第二回:人生の切り売り的仕事

第三回:やらないことを決める

最終回:「好きなことだけで生きていく」その先へ

 

■細川先生オススメ書籍

ポスト平成のキャリア戦略 (NewsPicks Book)
Posted with Amakuri at 2018.5.23
塩野 誠, 佐々木 紀彦
幻冬舎

 

 

細川寛将先生のプロフィール

作業療法士。保健学修士。作業療法士として病院勤務時代より「国家資格」「保険内」にとらわれずに専門性を活かしてナレッジワーカーとして活動。これからの医療・介護職の働き方の一つとして複業・パラレルキャリアを実践・推奨している。

 

現在は、医療法人陽明会グループ(名古屋市)で在宅緩和ケア住宅(サ高住)の施設長をする傍ら、株式会社クリエイターズ(金沢市)にて就労支援事業・メディア事業、その他NPO法人や一般社団法人の役員、ヘルスケアベンチャー企業の支援に携わっている。

 

最近は、地域でパラレルキャリアを実践する医療・介護職を支援するために一般社団法人守破離を起ち上げコワーキングスペースの設置やワークショップ開催、メンバーにキャリアデザインのコンサルティングなどを精力的に行っている。

 

第二回:人生の切り売り的仕事【細川寛将先生】

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