今月5日、富山大学の井ノ口 馨教授らは、ラットで脳海馬の記憶容量は神経新生により保たれていることを世界で初めて明らかにした。
▶︎ 脳海馬が記憶力を保つ仕組みを世界で初めて解明 ~記憶力低下の予防に一歩前進~
脳海馬が持つ記憶を獲得し蓄える能力は、小さいにも関わらず、脳は記憶を獲得し続けて蓄えることができるが、どのようにして脳がこの限界を超え、海馬を通して生涯新しいことを記憶し続けることができるのかは不明だった。
本研究グループは、ラットを用いて神経新生が鍵となることを発見した。人為的に海馬の神経回路を飽和状態注にすると、新しい記憶を形成することができなくなったが、2週間経つと記憶獲得能力は回復した。あらかじめ海馬の神経新生を阻害しておくと、2週間経っても記憶獲得能力は回復しなかった。一方、回し車で運動させ神経新生を促進させておくと、1週間で記憶獲得能は完全に回復した。
以上より、神経新生は海馬の記憶容量が飽和しないように、古い記憶を海馬から消去して大脳皮質に転送することで、海馬の記憶容量を保っていることがわかった。
神経新生はストレスや加齢に伴い低下し運動で亢進するため、今回の研究により、何故運動が加齢に伴う記憶力の低下予防に役立つのかを説明することができるようになった。また、アルツハイマー病モデル動物では神経新生が低下していることから、海馬の神経新生は認知症に伴う記憶障害の予防の標的になると期待される。