作業療法士と言語聴覚士を兼務することがよくある理由とは?
中国のリハビリテーション医療の発展は、1950年代軍人障害者のために療養病院やリハビリテーション施設が建てられたことから始まり、1980年代から大きく発展してきました。それを担う職員のリハビリテーション教育は1983年中国衛生部が中国国内の3つの大学を全国リハビリテーション医学研修教育基地に認定したことから始まり、リハビリテーション治療学専攻に関する大学は2001年から中国教育部の承認を受けて設立し2002年から本格的に教育が始まりました。設立当初、つい最近まで理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の教育は区別されていませんでしたが、理学療法士と作業療法士については、現在では徐々に分化しつつあります。しかし、現在でも大学や専門学校の授業は「総合治療師」を育成するものとなっていることが多く、それらを卒業して就職した配属先が理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に分けていることが少なくありません。そのため、作業療法士と言語聴覚士兼務ということもよくあります。
給料に直結する卒後教育システム
中国には卒後教育として、日本でいう各協会の生涯学習プログラムの講習会にあたるリハビリテーション療法士正規化育成プログラムというものが存在します。年に何ポイント貯めなければならないという規定があり、そのポイントが不十分だと直接給料に影響します。また、日本で言う認定作業療法士、専門作業療法士にあたる制度も用意されています。大学卒と専門学校卒で若干の違いはありますが、下から「士」「師」「中級」「副高」という資格が用意されています。それらは経験年数と試験結果、論文などの実績によって判断されます。また、大学院にて修士や博士を持っていると優遇されるなどの制度も用意されています。日本では認定や専門を取ったといって給料に大きく影響することは今のところ少ないですが、中国ではそれらが直接給料に影響します。また大学卒、専門学校卒の違いも日本より厳しく判断され、就職をする上で重要な条件となっています。
日本人療法士としての可能性
中国のリハの現状として、ICFでいう身体機能、構造についての内容に注目しがちで、活動や参加の項目までみて患者や他職種、環境因子などを包括的に考え介入を実施していくという視点が乏しいように感じます。介護保険制度が現状無いということも、病院で機能障害を治すことに重点が置かれている一つの原因ではないかと思います。今後ますますリハビリテーションの需要が増加し、中国の療法士の数も増加してくると予測されます。日本の療法士として教育的な支援の必要性も今後増えてくるのではないかと思っています。