#1 日本理学療法士協会 半田会長の目には映画「栞」がどう映ったのか
#2 生と死との向き合い方【映画:栞】
#3 半田会長が映画「栞」の中で好きな2つのシーン
POST編集長イマイ(以下イマイ):本日は、10月26日金曜日、映画「栞」の公開を記念しまして、緊急特別対談を行なっております。今回は、日本理学療法士協会の半田会長、主演(理学療法士役)を務められた三浦貴大さん、そして監督の榊原監督をお招きし、対談をさせていただきます。早速、榊原監督からこの作品を創られた経緯をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
榊原監督(以下、監督):はい。まず、この映画の主演の設定が理学療法士なんですけど、そもそも自分が約10年前理学療法士として働いていました。この映画の話の前に、映像業界へ入ってきたきっかけから話をしないといけないのですが。理学療法士という仕事をしていると、人から感謝されて嬉しいと感じることも沢山あるのですが、それと同時に自分に対する無力さや葛藤を抱える場面も沢山あります。
一番のきっかけが、自分と同じ年で20代前半の患者さんだったのですが、骨肉腫という骨にできるガンで、骨を削って人工骨を入れる手術をして、術後の理学療法を担当していました。術後からすごく頑張って理学療法をやっていて、復帰に向けて頑張っていましたが、ある時、レントゲンを見たら肺に転移しているのが見つかって…。僕がカルテを見たその日の夜に飲み会がありました。飲み会を楽しもうとしても笑えない自分がいて「自分はこんなところで楽しくしていていいのか。何かできることがあるんじゃないか」という強い葛藤が生まれたのが始まりです。
そこからいろいろ考えた結果、映像を創ってこの現実を世の中の人に発信していくことだと思って、この世界に足を踏み入れました。それから紆余曲折あって、プロデューサーの伊藤と出会い、構想約4年でこの作品が生まれました。
イマイ:実際に、半田会長も何十年と臨床経験があると思いますが、同じような葛藤を抱いたことはございますか?
理学療法士協会半田会長(以下、会長):私は38年間臨床の現場にいました。同年代の多くは教員の道を歩まれましたが、私はとにかく臨床が大好きで、臨床を離れませんでした。離れなかった理由に、現場には喜怒哀楽がいろいろあってですね、悲しいことも当然あるし、嬉しいこともある。非常に“劇場的”な仕事なんですね。
私も同じような経験をしていますし、この映画を通じて、元気な方々に日常生活と切り離された場所(病院)のことを知ってもらえるのは非常にありがたいという風に思っています。
イマイ:実際に今この時でも、同じようなことが起こっていることでもあると思いますが、それを演じるという点で難しいこともあったと思います。実際に、このお話を受けて三浦さんはどうお感じになられましたか?
三浦貴大さん(以下、三浦さん):そうですね。僕自身、理学療法とは関わったことがなくて、友達が理学療法士だったりするので、話には聞いているけど詳しくは知りませんでした。脚本などを読んだ上で、監督の想いを知らなければいけないなというところで、監督とお話しする機会をもらいました。
役者として1つの仕事を描くのはすごく難しいですね。特に、自分は経験者ではないので、経験者から見て「こういう人いるよね」と思われるようにすることが大変で、毎回プレッシャーです。今回の作品は命を扱うので、すごく難しいと感じましたが、僕の土台としてライフセービングをやっていたこともあり、そこで命に関わってきたという経験も役に活かせるのではないかと思ってこの作品に挑みました。
監督:この作品に入るだいぶ前に、喫茶店で三浦さんとお会いしてお話しする中で、三浦さんの過去のお話を聞いて、色々とマッチする部分も多かったので「是非よろしくお願いします」という感じの初顔合わせでした。
会長:映画を見ていて三浦さんの理学療法士の仕事っぷりは上手でした。(一同歓声)
演技とかそういうことではなく。どうしても理学療法士だと、理学療法士の技術的な部分に目がいってしまうのですが、三浦さんは理学療法士として上手にやっているなと、正直に思いましたね。
三浦さん:いやーもうそれ以上の誉め言葉はありません。笑
イマイ:実際、「理学療法士の動き」を習得するようなレーニングはされたんですか?
監督:実際現場には、理学療法士も何人かいましたが、特に細かい技術指導はなかったですよね?
三浦さん:自分で気になるところは全部質問したりして、色々ご指導いただきながらやりましたが、ライフセービングでも応急処置とか救急救命の方法などやっていましたから、人に触るという意味では慣れていたと思います。人を運んだり、どこを持ったら固定されるかというのは、ずっとやってきたことですから、イメージしやすかったのかなと思います。
監督:患者さんに触るときの触りかたとか、ものすごく違和感がなかったですね。それと、撮影前に衣装合わせがあるのですが、三浦さんがケーシーを着たときだけ拍手が起こりましたね。笑 すごい似合っていました。
三浦さん:なんか、私服よりも似合うって言われちゃいましたからね。笑
プロデューサーからも「ケーシー私服にしちゃえば」って言われましたからね。
(一同爆笑)
イマイ:そもそも監督が理学療法士、高野雅哉役に三浦さんをキャスティングしたのは何故ですか?
監督:映画をご覧になったらみなさん納得してくれると思うのですが「雅哉役は三浦貴大さんでしょ?」というくらいに言葉にできないもので、全部がぴったりだった、という感じです。実際、雅哉を演じるのはすごく難しくて、特に尖った部分もなく、ある意味ではどこにでもいるような人です。脚本を書いている段階から「雅哉は三浦さんでお願いします」と話していましたし、雅哉のシーンを書いていても、三浦さんをイメージして書いていましたからね。だから、「断られたらどうしよう」という感じで、初顔合わせの喫茶店では緊張していました。笑
会長:見ている側からしても、雅哉はすごく一定のテンションで、演じるのは難しいんだろうなと思いながら見ていました。どこかで、爆発しちゃうような部分でもあれば、演じやすいのかもしれないですけどね。
監督:そうですね。雅哉は、脚本を書く上でも、演じる上でも、撮影する上でも難しい役です。
イマイ:実際に演じる上でも、撮影する意味でも難しかったと思いますが、そもそも理学療法士は医療従事者の中でも、“命に向き合う”というイメージがあまりない職業という点も難しかった部分なのかなと思います。その点に関して、会長のご意見をお聞かせください。
会長:Rehabilitationの“Re”という部分は、“再び”という意味ですから、回復をイメージします。ただし、人間は絶対に死ぬものです。そこから目を背けては、生きることを語れないのだと思います。だから私は、若いときに“死ぬ”ということについてすごく勉強しました。生きた延長線上で生を感じるのではなく、死の側から見た“生きる”ということを考えてみたたかったのです。それから私の生涯学習のテーマとして「死」というものをみてきましたから、今回この作品を観て楽しかったというのは適切ではないかもしれませんが、私がずっと学んできたこと考えてきたことが描かれていたので、楽しめました。
イマイ:そういった点では、“生死”という大きなテーマを描く作品を演じる上で、命について“再び”考え直すことも多かったのではないかなと思うのですが、いかがだったのでしょうか?
三浦さん:そうですね。ライフセービングでも、直接的に命に向き合う仕事だったので、自分にとっての死生観だったり命に関する考え方はもっていました。だからこそ、こういった命を扱うような大きなテーマのものだったり、戦争ものだったりは自分の中ではすごく難しくて。自分が演じるキャラクターが持つ死生観と僕が持つ死生観が違うこともありますし、監督が描きたい死生観も違いますから。そういう意味では、台本をもらって、読んだ後に監督に会う機会があったので、もし監督がちょっとチャラチャラした感じの死生観をお持ちの方だったら、出演をお断りしていたかもしれません。笑
監督の描きたいものがしっかりしていましたし、命に対して真摯に向き合っている姿があったので、「やりたいな」とも思いました。“命”というテーマについて監督とも意思疎通ができていたと思うので、その点に関しては迷うこともなかったですね。
イマイ:実際に半田会長がこの作品をご覧になって率直にどうお感じになられたのか教えてください。
会長:この映画は、理学療法士を描いていますが、それだけを描いたのではないんじゃないかと感じました。家族のあり方とか、人が死ぬ意味というものをこの映画を観て感じて欲しいなと思いました。現状では社会全体として、“家族の崩壊”が非常に問題なんですよね。そういった背景があって、生死が描かれていると思います。私個人の意見としては、“家族”というのを1つのテーマに観て欲しいなと思います。
監督:この作品は、理学療法士だけを描きたいわけじゃなく色々な立場からの物語を描きたい、理学療法士が主人公ではあるけれど「理学療法士の映画」だけではないように創りたいと思っていて、実際にご覧いただいた方から理学療法士以外のキャラクターにフォーカスした感想もいただいています。なので、半田会長もおっしゃってくださいましたが、理学療法士以外の視点からも観ていただけたらな、と思います。
イマイ:三浦さんには撮影直後にインタビューさせていただいて、その中のコメントで「この映画を見て理学療法士なりたいと思う人はいないと思う。でも、この作品を見て理学療法士になりたいと思った人は、ある意味で覚悟をもって理学療法士になる人だと思います」とコメントいただいたのが、印象的でした。
三浦さん:僕は理学療法士をやった経験はありませんが、仕事をやっていて楽しいとき、嬉しいときもあると思いますが、どんな仕事でも辛い部分はあります。特に今回の作品では、理学療法士の厳しい部分をメインに描いているので、理学療法士の厳しいところだけをバンと見せられて「理学療法士になりてー」って人はなかなかいないですよね。この映画を観て、なりたいと思った人はきっと、“うわべじゃない理学療法士の魅力”を感じ取ってくれた人なんじゃないかなと思います。命とか人の生活とか、“人間と関わっていく覚悟”を持った方なんじゃないかなと思いました。
会長:非常にありがたいコメントですね。私たちは、いろいろな患者さんと接する中で、一つ一つ成長して技術を身につけていく仕事ですからね。それからやはり、映画に描かれている厳しい現実ももちろんありますが、私も38年臨床に携わって、本当に素晴らしい仕事だと実感しています。辞める時も、「いい仕事させてもらったな」と、「仕事を通じて成長させてもらえたな」と思いました。
そういう意味では、三浦さんに演じていただいて、描いていただいてありがたいという気持ちです。
イマイ:半田会長がご覧になって、印象に残ったシーンを教えていただけますか?ネタバレしない範囲で。笑
会長:さっきから厳重に注意されているからね。
(一同爆笑)
会長:三浦さんが関わったシーンで、2箇所大好きなシーンがありまして、あるシーンで三浦さんが病室を眺めていて、それを眺める看護師のシーンが1つ好きな部分で、もう1つがお地蔵さんに拝んでいるシーンがあるんですよね。この映画の中に、このシーンが入っていてすごくよかったなと思ったんです。
生死の世界は、科学の世界でもありますが、拝むという行為に対しては、科学でもなんでもないわけです。だけれど、拝みたくなる心理があって、何かにすがりたい気持ちは誰にでもあるわけです。本当にあのシーンは好きで、ぜひ皆さんにも注意して観て欲しいなと思っています。
監督:本当にあのシーンの描き方としては、サラッと描いているのですが、自分としてもこだわった部分で、半田会長にそこまで観ていただいて、すごく嬉しいです。何気なく観ていると見過ごしてしまうシーンなので、ぜひ注意して観てもらえたらと思います。
続くー。
【目次】
#1 日本理学療法士協会 半田会長の目には映画「栞」がどう映ったのか
#2 生と死との向き合い方【映画:栞】
#3 半田会長が映画「栞」の中で好きな2つのシーン
#4 三浦貴大さんが明かした、ある共演者とのエピソード
#5 「栞」と名付けたワケ
#6 三浦貴大さんがモニター確認しないというこだわり
POST特別割引(&特別ビジュアル)前売り券を販売!
三浦貴大さんが主演の、映画「栞」の公開日が決定いたしました。
映画「栞」は元理学療法士の経歴をもつ榊原有佑監督がメガホンをとり、監督自身が理学療法士時代に感じた葛藤や経験、命との向き合い方を紡いだ物語となっています。
本日7月6日(金)よりPOST特別割引価格で、限定ビジュアルの全国共通特別鑑賞券(前売券)を発売いたしますので是非、この機会にお買い求めください。
【前売券情報】
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販売期間 :2018年7月6日(金)~10月25日(木)
価格 :1,500円 (一般前売価格 1,600円)
購入サイト:https://www.major-j.com/info.php?f=M20180625001shiori
ID / PW :shiori18post (ID / PW共通となります)
※割引価格での前売券ご購入には上記のID / PWが必要となります
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また、10枚以上の同時購入で1枚1,400円の団体前売券もFAX・Emailにて受付けております。
団体前売券のお申し込み用紙はこちら
【作品情報】
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公開日 :2018年10月26日(金)
上映劇場
[ 秋田県 ]ルミエール秋田
[ 千葉県 ]T・ジョイ蘇我
[ 東京都 ]新宿バルト9、T・ジョイPRINCE品川
[神奈川県]横浜ブルク13
[ 愛知県 ]ミッドランドスクエア シネマ
[ 京都府 ]T・ジョイ京都
[ 大阪府 ]梅田ブルク7
[ 広島県 ]広島バルト11
[ 大分県 ]T・ジョイパークプレイス大分
新しい劇場が追加になりました!
[宮城県] MOVIX利府
[福岡県] T・ジョイ博多
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【映画「栞」POST特設ページ】
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