壬生先生:色々と論文を読んでいますと、「ここで言っているCRPSとは、我々が普段診ているCRPSの患者さんとはたして一緒なのだろうか」と思うことがあります。
それくらい、多様化した症状がありますので、やはり慢性化する前に、未然に防ぐということが非常に重要になってくるのではないかと思っています。
「何でこんなになるまで、ほっておいたんやろ」と思うことが本当に多く、「リハビリってしたことありますか?」と聞くと、多くの方は「ある」と答えます。
もちろん、リハビリと言いながらも理学療法士が行わない、物理療法だけの場所もありますが、それでも理学療法士に診てもらった方々も一定数います。
「理学療法士に頑張って診てもらったけど、なかなか変わらなかった」という人もいれば、「理学療法士にやってもらって余計痛くなった」という人もいます。
この点に関していうと、理学療法士の技術あるなし、ではなく患者さんとの関わり方のような気がしています。まだまだ、CRPSに関して、理学療法士の知識が追いついていない部分も多いかなと思います。
ー 一方で、病院の敷居が高く、すぐに病院を受診せず、マッサージ屋さんに行ってしまう患者さんも少なくないのではと思います。
壬生先生:確かにそうですね。文化的な面なのか、“受動的”な方は多いかもしれないですね。それを能動的に、日常生活での活動量を増やしていこうと患者教育を行うのも大事ですが、また難しい部分でもありますね。
ー 患者さんの行動が変わるということは、ある意味人の感情を変えることにも近いと思います。それですら難しいと思いますが、それができるようになる理学療法士を教育するのも難しいのではないか、と思いました。先生は、そういった理学療法士の教育にも関わっていかれる予定でしょうか?
壬生先生:そうですね。教育にも携わりたいと思っています。理学療法士によって、キャラクターも性格も違う中で、それを教育するのは難しいかもしれません。
でも、CRPSの患者さんに対して、必要なメソッドというか、目的のようなものは、共通認識としてもっている必要はあると思いますので、その辺りの教育になるのかなと思います。
我々はあくまでも身体、運動というものに対して関わっていく専門家ですから、運動を通して、その人の思考や行動をどう変えていくのか、というのを方法の一つとして捉えるべきではないかと思います。
ー ありがとうございます。先生のお話を聞いていると、先生が後10人くらいいないと、大変だろうなと思いました。笑
壬生先生:やるべきことが多すぎて、私自身最終的にはどこにいくのかというのは決めていません。というかわかりません。今は、いまやるべきことが一番やりやすい環境が、今の場所なのかなと思っています。
ー 最後に、先生にとってプロフェッショナルとは?
壬生先生:患者さんは悩んでいますし、困っています。それに対して我々はサポートするしかありません。ただ、患者さんは何ができるのかということを気づいていないので、その気づきを与えてあげられることがプロフェッショナルかなと思います。
ー完ー
【目次】
第一回:西上先生に救われた過去
第二回:疾病利得
第三回:痛みは良くならないとしても
最終回:慢性疼痛を阻止せよ
壬生先生オススメ書籍
壬生 彰先生のプロフィール
学歴
2007 年 3 月 広島県立保健福祉大学保健福祉学部理学療法学科 卒業
2013 年 3 月 神戸大学大学院保健学研究科博士前期課程終了 修士(保健学)
2018 年 3 月 大阪大学大学院医学系研究科博士後期課程 単位修得退学
職歴
2007 年 4 月 社会福祉法人恩賜財団済生会兵庫県病院リハビリテーション科(2012年6月まで)
2012 年 7 月 医療法人曉会田辺整形外科上本町クリニックリハビリテーション科(現在に至る)
2015 年 4 月 大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニック(現在に至る)
2017 年 4 月 甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 助教(現在に至る)
受賞歴
2014 年 6 月 第36回日本疼痛学会 優秀演題
その他(社会活動や著書など)
2016 年 9 月 日本ペインリハビリテーション学会 代議員(現在に至る)