リハビリ職はリハビリだけ行えばいいのか?
インタビュアー細川:
よろしくお願いします。まず最初に高木先生は最近独立されたとお聞きしましたが、株式会社を設立するに至った経緯をお聞きしたいのですが。高木先生:
はい。まず、私も最初は病院に勤務をしておりました。臨床だけでなく、研究や教育の実績を積んでいかなければらない状況になったのが、臨床6・7年目くらいの時期でした。私や部下が大学院で勉強したり、臨床や運営に関する研究をしてきましたが、必ず勉強・研修した内容は対外的に必ず発表したり、社内の業務改善やリハビリテーションの質の向上に貢献できるように強く意識をしていました。
特に、MOT (マネージメント・オブ・テクノロジー)という概念を入れて技術開発が顧客・利用者・患者の獲得に繋がるような施策を実施しました。
医療・介護情勢や外部環境の情報というのはインターネット、セミナー、コンサルティング会社より得ることができるのですが、そういった情報に対応しようとしても、組織側に対応できる能力や体制がないということが非常に多いと感じています。
組織の多様性や対応能力が、医療や介護の現実世界に追いついていかないということを肌で感じました。では、なぜ対応能力が低いのか?ということですが、医者や看護師、セラピストを含め医療職全般に言えることとして、自分たちの仕事の多様性を追求できる土壌がないということがあると考えています。
これは、ライセンスを持ってしまったが故のボトルネックと分析をしています。
つまり、「看護師だから看護業務をしないといけない」というのは、ライセンスが一定の規範として決めている。しかし、別に看護師が看護業務を他のジャンルで活かすことや、他の社会貢献やビジネスをすることに関して、規制されていない。この考えが、これから社会ではすごく大事だと思います。
私は、看護業務だけ、リハビリテーション業務だけを行うことを否定するつもりはありません。
しかし、それらの業務だけで補えないこと問題が沢山、社会には出てきているということに行き着いて、これはもう自分で会社を起こして、ビジネスとして成立させたいと思いました。
何よりも僕自身が活き活きとして働かなければ示しがつかないと思いますし、理念に共感していただける仲間を作るためには株式会社という看板もいるというが起業の後押しになりましたね。それで、2014年12月に株式会社Work Shiftを設立しました。
3世代のジェネレーション分類
インタビュアー細川:
株式会社に関して「理学療法士で、コンサルタント」というと希少価値が高いというか、業界でいうとニッチなジャンルになってくると思います。療法士がマネージメントのことを最近重要視してきたと思うのですが、コンサルタントとして多くの事業所や病院を回った時に、療法士の質やマネージメントのレベルで感じることは何かありますか?高木先生:
理学療法士・作業療法士って”3世代のジェネレーション”に分かれていると思っています。このことは、日本社会の大問題と考えています。弊社でセミナーをした時に、マネージメント系のセミナーの集客率は圧倒的に悪いです。まさに、これが今のセラピストのテクニック偏重手技の現実を示しています。
逆説的に言うと、セラピストとしてのリハビリテーション技術とマネージメントが両立できれば非常に評価される時代になったと考えます。今のPT協会、OT協会が目指す地域包括ケアモデルを「敗北だ」と言われる方もいます。
「もっと医療モデルを追求しなさい。もっとアカデミックな活動をしなさい、開業権を取るべきだ」と、主張される方もいます。
しかし、僕はそうは考えていません。地域包括ケアシステムは、ICFを基本として考えています。そして、そのICFは心身機能と活動・参加の全体最適化を目指しています。
つまり、ICFは心身機能を否定していない。心身機能の改善を活動・参加に有機的に統合するという非常に魅力的な課題への兆戦だと考えています。
今まで、麻痺を改善させるためのリハビリテーションは治療室で行われていましたが、実際の生活の中でのリハビリテーションは少なかった。次の時代心身機能がどのように活動・参加に寄与しているのかということが、焦点である研究が増えると考えています。
だから、地域包括ケアやICFは過去の「リハビリテーションテクニックマイスターモデル」や「サイエンチィストモデル」を否定はしていなくて、それらを肯定した上で次のステップへの移行だと考えています。
私は逆に、” リハビリテーションテクニックマイスターモデル”、”サイエンティストモデル”の人達が本気でICFに取り組んできたら、すごく世の中が変わると考えています。
例えば腰痛治療で物凄く有名なセラピストがいたとします。自らが腰痛治療を提供するのと同様な効果を出す自主トレーニングプログラムや腰痛治療機材、エクササイズ方法を開発し、市場に導入した時に、それはICFが目指す包括的なケアすなわちIntegrated Careに変わります。
可 "転移可能なスキル"が重宝される時代
インタビュアー細川:
確かにマネージメントとか、時代に合わせた療法士のパラダイムシフトが起きてきていると思います。例えばセミナーでマネージメントをやる人がちょっとずつ前に出てきている印象があります。高木先生:
私は必ずしも起業を推進する必要性はないと考えています。働き方の選択として病院・施設で働くか、あるいは、それ以外の分野で働くかというものがあります。インタビュアー細川:
なるほど。高木先生:
マネージメントを構成するスキルは沢山あります。例えば、「コミュニケーションスキル」は、どのような職場や場面でも重要です。高木綾一先生の経歴
【主な略歴】
1999:帝塚山大学 教養学部 卒業2002:関西医療学園 理学療法学科 卒業
2008:大阪教育大学大学院 教育学研究科 修了2002-2007:医療法人寿山会 喜馬病院 リハビリテーション部(2006年よりリハビリテーション部部長)
2008-2014:医療法人寿山会 法人本部(2008年より法人本部長)
2014-現在:株式会社WorkShift代表取締役
2015-現在:関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
【資格等】
理学療法士・認定理学療法士(管理・運営)・3学会合同呼吸療法認定士・修士(学術)
【株式会社Work Shift】