そもそも認知症が"顕在化しない"
インタビュアー中川:
地縁関係ってすごい大事だなと思います。森田先生:
そういうことですね。地縁を使わなくても問題なく生きられる社会だけど夕張では認知症はほとんど問題にならないんです。
いないと
例えば都会で問題になっている徘
いや、
なぜなら昔から知ってるご
昔からやってることは大体できますね。
認知症スケール・長谷川
インタビュアー中川:
なるほど。認知症が顕在化するのはそういう社会システムだから森田先生:
つまり、これからの高齢社会に伴って、そうじゃないとみんな病院や施設に入ることになって、
ま、 こんなかんじなんで事故死とか孤独死とかかなりあるんです。
なんとなく「地域の中で生き 切った」、というムードがあります。
90代後半独居のじいちゃん は「1000万円もらっても他所には行かない」と言いました。
ご 近所でも人気者です。
そういうことなんだと思います。
地域包括ケアシステムに必要な「覚悟」
インタビュアー中川:
まさにこれからあるべき姿。今言われている地域包括ケアシステ森田先生:
まさにそうですね。地域の力と関わっていく必要があります。だけ ど地域包括ケアというのが前提であっても、今の形のままの在宅医 療を推進していては、あまり変わらない可能性もあると思います。
インタビュアー中川:
今の形の在宅医療では変わらない。それは地域資源が少なすぎる
森田先生:
少なすぎるというよりも、サービスの量とか質とかという話よりも 、もっと根本的なところですね。
在宅医療の世界では寝たきりで意 識のない管だらけの人がたくさんいます。
そういう世界っていうの はどこか不自然ではないでしょうか。
在宅医療って基本的に寝たき り、またはそれに準ずる患者さんを対象にしています。
そうなのに、意識もなく寝たきりのまま10年も生きる人がいた りするんです。
現状を前提に、医療を構築するっていうのはどこか 不自然なんじゃないかなという気がします。
意識もないまま寝たきりになるぐらいなら死んだ方がいいと思う方 がほとんどです。
じゃあそうしていけるように支えていく必要があ るように思います。
欧州はそうで、寝たきり患者がいない世界は実 際にあるわけですからね。
ヨーロッパの人なんて太っている人が多 いからすぐ寝たきりになります。
だけど寝たきりになったら自分の 人生はここで終わりだと悟り、延命治療は基本的にはしません。
だから寝たき りはいないですし、延命治療も基本的にはないですね。
インタビュアー中川:
根本的な個人の想いとしては日本人も同じでしょうか。森田先生:
日本人も同じですが、そこの覚悟が出来てないと思います。
ですか ら、希望してないはずの寝たきり患者がたくさんいるんでしょうね 。
インタビュアー中川:
覚悟ですか。昔の人は姥捨山をある程度察していたというのを聞 いたことがあります。
森田先生:
かつてはあったでしょうね。
インタビュアー中川:
今はなぜその覚悟が減ってきたんでしょう。病院という存在が、ある意味「死」 というものをタブー視して見なくても良いものにしてしまったのか もしれませんね。
昔は家で死ぬのが当たり前。団塊の世代の人たち は子供のころじいちゃん・ばあちゃんが家で死んだってのを知って いるはずです。
だけど、 それが病院という便利な箱が出来たために、見えなくなってしまっ たんではないでしょうか。
「生老病死」という言葉がありますが、 その中の生まれる・老いる・病む・死ぬ全てを病院が請け負ってく れます。
要するに外注化されたわけです。
人間の人生がですね。
それが高度成長期の間にそ ういう文化になり、それが今当たり前になっているんでしょうね。
インタビュアー中川:
なるほど。新たな文化になってしまったのですね。
森田先生:
そういう覚悟がない上での福祉だと「なんでもやってくれ」 になってしまうかもしれません。
宗教観ともリンクしていると思います。
向こうは信仰がありますからね。
宗教観のなさというのも病院信仰が受け入れられた土壌かもしれま せん。
特に報道なんかはそうですね。
そういう覚悟をもった上での福祉ということですね。
日本は頼るところがないので、 近代日本で病院以上に信頼されている箱はない様に思います。
だけど少しずつ変わり始めています。
NHKは終末期のことやることが増 えてきていますから。
昔だったらタブーで放送できなかったことを 放送していますね。
身寄りがなくて意思決定ができない男性が人工 呼吸器で意識もないのに生かされているって内容のものも見たこと があります。
変わってきたなーっと思いますね。
そうやって民意も変わると思います。
市民の意識が変わらないとな にも変わらないので、喜ぶべきところですね。
だからそれの一助に なればいいなと思って本も書いています。
【バックナンバー】
森田洋之先生の経歴
【主な経歴】
1990:一橋大学経済学部入学1996:同大学卒業、宮崎医科大学医学部入学
2002:同大学卒業県立宮崎病院(初期研修)、同心会古賀総合病院(内科後期研修)
夕張市立診療所(2012年は所長)
ナカノ在宅医療クリニック
現在:南日本ヘルスリサーチラボ代表
【次回は2015年4月23日に配信予定です】