今月8日、順天堂大学大学院医学研究科・スポートロジーセンターの江島弘晃研究員(現ユタ大学)らの研究グループは、2型糖尿病患者に生じる骨格筋の筋力低下は、細胞内カルシウムイオンの調節障害が関与していることを見出した。さらに、運動療法により筋力低下だけでなく細胞内カルシウムイオンの調節障害も改善することを明らかにした。
近年、糖尿病患者では同じ筋量でも筋力が低いという、筋肉の質の低下が起きていることがわかってきている。そこで、この筋肉の質の低下が糖尿病患者でどのように生じているのか、その分子メカニズムを明らかにするため、研究グループは、筋肉の質の指標となる筋力と筋収縮に関わる細胞内カルシウムイオンの濃度変化に着目し、分子メカニズム解明の研究を実施した。
まず、研究グループは、2型糖尿病モデルマウスの生体から摘出した骨格筋を筋力測定装置のひずみ計に取り付け、電気刺激時の筋の収縮力をひずみ計の細動によるトルクに変換させることで骨格筋そのものの筋力(張力)値を算出した。また、蛍光イメージング法を駆使し、収縮時の細胞内のカルシウムイオン濃度を測定した。その結果、2型糖尿病モデルマウスでは電気刺激時の筋力が健常群に比して著しく低下しており、さらに筋収縮時の細胞内カルシウムイオン濃度も低下していることを見出した。
つぎに、筋力の向上に効果的である継続的な運動トレーニング(ランニングマシン)による効果を検証。徐々に負荷を増やしていき、かつ下り坂のような傾斜によって筋力を意図的に増やすような運動トレーニングを6週間行った。その結果、2型糖尿病モデルマウスの筋力が改善されるとともに、細胞内カルシウムイオンの濃度の低下も同時に改善されることを明らかにした。
江島らは、「本研究成果は、糖尿病患者の筋力低下の予防法および治療薬の開発につながることが期待され、我が国の予防医学を推進する上で有益な情報になる」と述べている。なお、本研究は、アメリカ生理学会雑誌「Journal of Applied Physiology」オンライン版に2018年11月15日付で公開されている。