地域包括ケアを支える「かかりつけ医が利用できる共同利用のリハ施設」構想【山口和之先生】

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ー 山口先生は理学療法士初の国会議員であるわけですが、そもそも出馬しようと思ったのはきっかけはなんだったのでしょうか。

 

山口和之先生 もとより「理学療法士が政治に参加すべきだ」、あるべき姿を実現するために「国会議員による議員連盟を作りましょう」というのは、協会の中でずっと言い続けてきていました。超党派で理学療法やリハビリテーションを推し進める議員連盟を作ろうと思っていましたが、打てど響かず、誰も動かず。誰も興味がない状況だったんですね。当時は行政に要望書を出すことが手段でしたので議員にお願いすることは考えられなかったようです。

 

そんなこんなで理学療法士は政治に無関心でしたが、ただ看護師には看護連盟がありましたし、医師会にも医師連盟が、このまま理学療法士連盟を作らなければ理学療法士の理想像は実現しないかもしれない危惧があって、理学療法連盟の設立メンバーとなりました。そんな矢先に、ある議員さんから「今度の選挙、小選挙区から出馬してくれないか」とお誘いがありました。

 

結局お断りしましたが、ただ今考えれば、その議員さんもその党も当選するとは思っていなかったと思いますよ。(笑) 県内で介護予防をやっていることや、患者さんやリハの部下も仲間多いということから、ある程度票が集まるくらいにしか思っていなかったと思います。ただ、当時は「理学療法士の自分をかってくれた」と思って、けっこう嬉しかったですよね。

 

以前にはよく厚生労働省にお土産持ってロビー活動に行ってたりしてました。協会の理事になってからは「こういう政策はどうか」と提案して交渉しに行ったりしていました。ただ課長補佐くらいまでの役職者にしか取り入ってもらえなかったですね。壁は厚くなかなか声は届きませんでした。

 

後に再び選挙への誘いがあり、選挙に出ることによってその党への発言力も増すだろうと思って出馬を決めました。当時の勤務先の病院が二大政党制を押していましたのでその関係で民主党から出馬いたしました。ちょうど第45回衆議院議員総選挙は民主党が政権交代した年です。結果比例滑り込み当選した流れです。

 

当たり前だが病院では生活を支援できない

 

ー 政策の一つとして「地域ケア体制の充実」を挙げていますが、今の地域包括ケアシステムに対して山口先生が持っている課題意識はどこにあるのでしょうか?

 

山口和之先生 病院は治療するところで、生活を支援するところではありません。というか無理でした。ですので、まずは医療機関が何でもできる幻想からとにかく早く患者さんを地域に帰して、生活の場で医療に出会えるようにするのが、地域包括ケアシステムと思っています。

 

理学療法士として病院で働きはじめの頃、入院患者用のベッドの脚を切って高さを低くして、とにかく患者さんに歩いてもらいました。リハビリの時間が合計60分だとしたって、残りの23時間ベッドで寝ているだけではよくなるはずがありません。病院の意識改革しようとしたことがありますが、看護師さんは看護師さんで忙しいし、看護業務外の感覚でなかなか難しい。それならもう医療機関から早く出す。生活のなかでリハビリテーションするのが一番いいと思うようになりました。

 

ー 地域におけるリハビリテーションの機会や場が不足していることが一つ課題として挙げられると思うのですが、それに対して先生のお考えをお聞かせください。

 

山口和之先生 社会保障費の抑制傾向の中、保険外サービスとうまく連携していく必要があるように感じています。また、これから国民にとって有益と考えるのが、院外リハ制度の創設です。薬剤に関しては、医薬分業が進み院内処方から院外処方へ、つまり医師が処方を書いて、院外にある薬局で薬をもらうというようになりました。

 

同様に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが所属している地域のリハ施設を作って、AクリニックからもBクリニックからの処方も受けてリハを提供するような共同利用施設、院外薬局のようなリハ提供の仕組みができればいいと思っています。

 

さらに言うと、メディカルフィットネスのような保険外サービスと保険内の個別リハとをうまく使い分けるのもいいと思います。医師の処方を受ける必要がありますが、薬剤と同じように1週間何単位処方、3週間何単位処方などにすれば、リハ施設に競争原理が働き効率化が図られ、質の向上と共にその分社会保険費を節約削減できますよね。国民にとってとても有益です。

 

地域にいる子供も高齢者も脳卒中の患者さんも心疾患の患者さんもフォローできるリハを受けるために利用する。通所リハ、訪問リハも全て共同利用ができ、予防から障害フォローまでその道のプロがたくさん所属している施設があれば、働く人も地域の人もみんなHappyになって、日本の景色が変わると思います。日本の景色が変わればアジアの景色が変わる。日本は世界を牽引するすごくいい国になると思いますよ。

 

【目次】

第一回:脳・循環器リハは、法成立後どう変わっていくのか

第二回:世界をリードする理学療法士を育てるために

第三回:私が考える東日本復興戦略

第四回:地域包括ケアを支える「高齢者リハビリテーションセンター」構想

 

山口和之先生プロフィール

[ 職歴 ]
◆ 政治家として
2009年 9月~ 衆議院法務委員会委員、衆議院厚生労働委員会委員
2009年 1月~ 消費者問題に関する特別委員会委員
2011年 5月~ 東日本大震災復興特別委員会委員
2013年 7月~ 第23回参議院議員通常選挙にて当選
2013年 8月~ 参議院財政金融委員会委員、参議院東日本大震災復興特別委員会委員
2013年10月~ 党政策調査会社会福祉部門復興担当
2013年12月~ 参議院厚生労働委員会委員(2014年12月~オブサーバー)
2014年 1月~ 参議院東日本大震災特別委員会理事(2014年12月~オブサーバー)
2015年 1月~ 参議員国土交通委員会委員(オブサーバー)、決算委員会(オブサーバー)、東日本大震災復興及び原子問題特別委員会(オブサーバー)
2015年 3月~ 環境委員会、決算委員会、東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会
2016年 8月~ 法務委員会

◆ 理学療法士として

福島県理学療法士会会長、藍野大学医療保健学部非常勤講師。

日本理学療法士協会東北ブロック会長、同協会理事などを歴任。

地域包括ケアを支える「かかりつけ医が利用できる共同利用のリハ施設」構想【山口和之先生】

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