疾患や加齢による筋萎縮は酸化ストレスの増大が一因であり、定期的な運動は抗酸化物質を増加することで酸化ストレスを軽減し、筋量の維持に貢献することが知られている。
今月19日、名古屋市立大学大学院の山田麻未さん、奥津光晴准教授らは、日本福祉大学、筑波大学とアイオワ大学の研究者と共同研究を行い、運動はオートファジーの調節に関わる因子を活性化し抗酸化物質の産生を促進することを筋肉で初めて発見。とりわけ筋萎縮しにくい遅筋では運動によるこの経路の活性化が抗酸化物質の産生に極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした。
山田らはKeap1/Nrf2 という、抗酸化物質の産生を調節する主たる細胞内情報伝達経路に着目。これらは、通常環境下では細胞質で結合しますが、ストレス環境下ではNrf2はKeap1 と結合せず核内に移行し、抗酸化物質応答配列に結合することで抗酸化物質の発現を誘導する。
近年、癌などの悪化した細胞はオートファジー基質であるp62 をリン酸化し、Keap1 に選択的に結合することでNrf2との結合を阻害し、Nrf2 の核内移行を促進することで抗酸化物質を産生することが明らかにされている。今回、骨格筋でもp62 のリン酸化を誘導しNrf2 の核内移行を促進すること、また運動による抗酸化物質の増加にはオートファジー基質であるp62のリン酸化が極めて重要であることを筋特異的にNrf2やp62 を欠損したマウスを作成し立証した。
本研究は、米国科学誌「The FASEB Journal (ザ ファセブジャーナル)」の電子版に3月26日付けで掲載されている。