もともと、高校時代に「PT/ATC(アメリカで理学療法士とアスレティックトレーナーの資格を持つ者への呼称)」になるというのは、何年かかるかわからなかったが夢として持っていました。
ただ、初めはアスレティックトレーナーの現場ばかりで経験を積むものだと思っていた私が、大学卒業後に就職したのはDr. James Andrewsを中心とする、著名な医師が集う病院 “St. Vincent’s Hospital”のリハビリ施設でした。と言っても、あまりピンとこないかもしれませんが、スポーツ整形の世界では世界的に有名な病院で、アメリカだけでなく世界中の一流アスリートの手術が毎日行われている場所です。
By Chris Pruitt - Own work, CC BY-SA 3.0, ☑ St. Vincent’s Hospital
ここでは、アスリートに対して理学療法士と共に仕事をし、その病院での業務後は、スポーツ現場にも派遣され、アスレティックトレーナーの専門的経験も積ませてもらう事ができました。
医療施設での理学療法士の手法と、フィールドでのノウハウを両方同時に学ぶことができましたし、病院からスポーツ現場のシームレスな医療サービスシステムの一員として、その在りかたを肌で感じる毎日を過ごしました。世界第一線の現場で働けたこともそうですが、それ以上にかなり贅沢な日々を過ごさせてもらいました。
主に私は、NFL Europaに在籍するアメリカンフットボール選手のリハビリ専属トレーナーとして働きましたが、一緒に働いていた理学療法士達が素晴らしい人達ばかりでした。
ドカベンのようなリハビリチームというべきか部位ごと、疾患ごと、治療手技ごとにスペシャリストがいるのはもちろん、
・”歩く辞典”と呼ばれるような、質問すれば文献名とその記載場所をページ数や行数まで暗記している人
・科学で説明できないような事ばかりを臨床の場で研究し続ける人
・スポーツ現場での動作特異性に焦点を当てた運動療法を考える発想力に長けた人
・目の前に展開するリハビリの現場を盛り上げ、エンターテイメント化するスペシャリスト
そんな人達が集まる素敵な職場でした。
一緒にケーススタディの中で、先輩後輩関係なく治療について検討させて貰ったり、お互いにプレゼンテーターとなって、評価や治療の講習会を開いたり、本当に学ぶ機会が多く、自分の人間性形成の一部もここで成されたように思います。
「やっぱり、自分はPT/ATCとしてやっていけるようになりたい」
その気持ちを再確認しました。
実際は、経済的な理由もあり、アメリカではなく日本の教育課程に再度入りましたが、ここでも国内・国外両方の違いや特徴を比較検証しながら勉強する事ができたため、自分の世界観や考え方を深める事ができました。
Photo:米国のプロサッカーリーグ”Major League Soccer”のMedical Director Dr. Larry Lemak
☑ South Eastern Conference(大学スポーツリーグ)の野球大会 ホストトレーナーとして
☑高校でのACL損傷予防プログラムにて
☑“歩く辞典”とのワンショット
現在の仕事内容
現在の主な職場は、新大阪にある大阪回生病院のリハビリテーションセンターです。スポーツに限らず、様々な対象者に対して理学療法士としての仕事をしています。
始めは確かに、スポーツ整形に特化した施設で仕事をしようと考えていましたが、日本に帰ってきた後の学生生活で新たな知識と経験を積ませていただき、スポーツ以外の領域にも興味を持つようになりました。
ただ、自分の軸はやはりスポーツ。呼吸器や循環器の知識はもちろんスポーツに繋がります。
廃用症候群の患者に対する治療経験も、高齢者がスポーツに参加する事が多くなってきた超高齢化社会の日本において、リスク管理や予防医学の観点で役に立ちます。
特に脳卒中の患者から学ばせてもらった神経学的なKnowledgeは、運動制御・姿勢制御の観点で自分の治療戦略の引き出しをかなり増やしてくれました。実際に、杖歩行で来院された片麻痺の患者が、自分と関わることで1500mの中距離を走り切った時には、大きな感動を覚えました。
彼は私にとって最も印象に残っている素晴らしい患者で、感謝してもしきれない相手です。私が彼の能力を引き出したのではなく、彼が私の持っているスペックを引き出し、繋げてくれたというのが正しい表現だと感じています。
☑陸上競技大会でしっかりと走り切りました
病院外では、理学療法士として以外にも各種スポーツ競技をサポートするアスレティックトレーナーとして活動したり、様々な医療関連職種に対する現職者講習会、各種養成校、一般のスポーツ指導者研修会において、スポーツやリスク管理に関する講師のお仕事をいただいています。
☑世界バレー2018 医療班として
☑車椅子テニストーナメントでのトレーナー活動
☑大阪府理学療法士会主催 現職者講習会“障がい者スポーツ及びスポーツにおける理学療法の実際”の講師として
☑自治体のスポーツ指導者向けトレーニング講習会の講師として
もちろん、英語力も自分の活動の中では大切なPieceです。アジア理学療法フォーラム等の通訳や、海外の大学からくる実習生の指導、海外講師の通訳など。また、最近増えてきた外国人患者への治療にも携わるようになりました。
☑日本徒手療法学会 「パリスアプローチE2コース講習会」 通訳として
また、大阪府理学療法士会生涯学習センター研修部 部員や、日本スポーツ理学療法学会 運営幹事、日本理学療法士協会 アジア教育支援委員会 委員長、Japan Athletic Trainers’ Organization シンポジウム委員等、公務にも関わることで、かけがえのない貴重な経験をさせていただいています。
☑日本アスレティックトレーナーズ機構(JATO)主催「WFATT 2019 第10回ワールドコングレス東京」実行委員として
☑アジア理学療法フォーラム 通訳として
今後の目標
今年、有難い事に数多くの方に背中を押して頂き、日本スポーツ理学療法学会の運営幹事に当選する事ができました。
その時の立候補の主旨に、私の人生における大きな目標を掲げました。
スポーツ医療における他職種間の連携とサービス提供のシステム構築―――
アメリカでのアスレティックトレーナーとしての経験を活かしつつ、シームレスな他職種連携の元に構築された日本独自のスポーツ医療産業を展開する事を目指しています。
その為に、できるだけ色んな人に出会って色んな話をし、自分にできる事を常に探しながら、更に活発に活動していくつもりです。
・医療に関するノウハウを国内外へ輸入・輸出する事に貢献
・様々な業界同士のコミュニケーションを活発化することで、風通しの良い医療-健康サービスシステムを構築
・学生、現職者、職種に関わらず、様々な対象者への教育
短い人生ですが、やりたい事を挙げればきりがないと思います。
【目次】
第一回:Go to USA
第二回:"MUGON" DRIVE
第三回:I have a dream
プロフィール
<SNS>
Facebook: https://www.facebook.com/kyohei.miyazaki.14
Website: https://think-outside-to-mumble.amebaownd.com/
Twitter: https://twitter.com/k3y_y0
Instagram: https://www.instagram.com/k3y_yo/?utm_source=ig_embed&utm_medium=loading
<保有資格>
- スポーツ/脳卒中/運動器 認定理学療法士
- 米国公認アスレティックトレーナー (NATA BOC-ATC: Certified Athletic Trainer )
- 米国公認ストレングス・ コンディショニング スペシャリスト
(NSCA-CSCS: Certified Strengthening & Conditioning Specialist )
- ヨガ・ピラティス インストラクター
- アメリカ心臓協会公認 一次救命措置講習会 インストラクター(AHA-BLS Instructor)
<学歴>
2008年 米国 アラバマ州 Troy University アスレティックトレーニング学部 卒業
2013年 平成リハビリテーション専門学校 卒業
<経歴>
2008~2009年 米国 アラバマ州 Champion Sports Medicine 就業
– NFL Europa 専属リハビリトレーナー(アメリカンフットボール)
– University of Alabama アスレティックトレーナー (アイスホッケー)
– Pensacola High school アスレティックトレーナー (野球・サッカー・陸上・バスケ・バレー)
2010~2013年 パーソナルトレーナーとしてフィットネスクラブ勤務
2013年~ 互恵会 大阪回生病院 リハビリテーションセンター 理学療法士
2015年~ 大阪府理学療法士会 生涯学習センター 研修部 部員
2018年~ 一般社団法人 MSEP(医療介護スポーツ医学教育センター) Senior Leader
https://physioneer.amebaownd.com/
2019年~ 日本スポーツ理学療法学会 運営幹事
2019年~ 日本理学療法士協会 アジア教育支援委員会 委員長