フィジー共和国によるリハビリテーションの現状|三田村徳さん

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初めまして、2017年6月から2年間、JICA青年海外協力隊によりフィジーへ派遣されていた三田村徳です。

 

皆さん、フィジーの場所はご存知でしょうか?

 

もし知っている方は海が綺麗でリゾートがあるとイメージされると思います。大洋州の中ではリゾート地も多く立地し、中進国となっています。国土は四国と同等の土地を持ち、約330の島からなっており、人口は90.5万人(2019年)です。

 

フィジー人が60%、インド人が35%、その他5%程度の割合となっており、公用語が英語となっています。首都近郊はインフラが整っていますが、一歩街を出ると昔ながらの自給自足の生活をされています。公立病院はフィジー全土に26ヶ所あり、公的医療機関は基本的に無料により診療・薬剤を受けることができますが、常に患者が集中し長時間待たなければなりません。

 

また、医療従事者が不足しており、評価や治療に当てる時間も短く適切な医療を受けられないことも多くあり悪循環に至っています。そのため富裕層や在外国人は高額医療の私立病院を受診していることが多いです。

 

 

 

Photo:リゾートの海

 

Photo:フィジー理学療法士協会 National Physical Activity Symposiumの集合写真

 

リハビリテーションの現状

理学療法士の人数は74名(2019年6月現在、フィジー理学療法士協会への加入人数)となっています。作業療法士と言語聴覚士はおらず、オーストラリアやアメリカからのボランティアが支援している病院もあります。日本との人口比と比較すると約2倍少ない人数となっています。また、フィジーではCommunity Rehabilitation Assistant(CRA)という職種があり、入院患者に対してのリクレーション、フィジー全土に対して巡回・訪問リハビリのアシスタントを担う職種もあります。

 

私立病院は少なく、理学療法士の職場としては公立病院が9割です。そして理学療法の質としてはまだ低く、知識・技術そして物理療法を行える機材もない状況(ホットパックも壊れて使えない)です。急性期病院では1週間程度で退院することが多く、理学療法は運動療法を基本的に行い、ADLまで繋げることが難しい状況です。国立リハビリテーションでは回復期リハビリテーションのように病棟生活内によりADLへ繋げ、家族指導や家屋評価も行なっています。

 

また、近隣大洋州のサモアやキリバス、ツバルなどからも脊髄損傷疾患や脳卒中疾患の患者が転院されてきます。しかしながら同僚の理学療法士一人により診ているため治療時間は一人当たり約15分/日であり、十分なリハビリテーションは受けらません。唯一、長期入院が可能なため退院まで医師・看護師とともにチームアプローチを行い、退院後も外来や訪問リハビリなどで定期的に援助を行なっています。

 

  

Photo:国立リハビリテーション病院 理学療法室内

 

 

Photo:草の根事業により寄贈された物品

 

 

 フィジーにおける義肢装具の現状ついて

 

Photo:下肢装具と装具作成場面

 

作成できるのは義足のみ??

フィジーにおいて義肢装具歴史は約20年前に発足され徐々に拡大し、現在は下肢装具を中心に作成しています。フィジー内に装具作成できる場所は国立リハビリテーション病院だけであり、ツバル・キリバスなど他大洋州諸国の切断患者も外来・入院し作成される方もいます。現在、義肢装具士は4名(ライセンスなし3名)おり、下腿・大腿切断装具、AFOを中心に作成しています。上肢の義肢は作成していないが、理学療法士からリクエストすることで体幹ベルトやポジショニングクッション等も作成してくれます。

 

 

フィジーでは年間約800人が下肢切断となっており、そのほとんどが糖尿病による下肢壊死からはじまり切断に至ります。義肢装具士と材料の不足のため装具が必要な患者は1年以上待ったということもあります。そしてフィジー全土に向けて巡回を年2回行っているが、全ての患者へフォローアップができていない状況となっています。

 

 

義肢装具の材料はインドやアメリカから定期的に輸入しており、安価な素材を利用しています。膝継手やAFOを作るプラスチック等が足りないこともあり長期待機患者も多くいます。また、定期的なメンテナンスとしては装具利用後3ヶ月ごとに外来へ来られる方はチェックを行います。環境や金銭面からも外来へ来ることができない方は巡回により、修理を行います。もし修理できない状況であれば新しい装具を計測し、次回の巡回の際に持っていきます。

 

理学療法士としては切断後の切断端管理、弾性包帯の巻き方、関節可動域訓練、筋力向上、歩行器具の評価と指導などを行い、装具作成できるか評価を行います。作成後も歩行練習や段差、装具の着脱を家族を含めて指導し、再度歩行できるよう定期的に診ています。

 

余談となりますがフィジーの義肢装具士の第一人者モセセさんは義肢装具士の資格を取るために単身ブラジルへ行き、学んできました。しかし、フィジー国内で義肢装具士の資格をとれる大学はなく、モセセさんが現場で知識・技術を教えています。

 

日本へもJICAからの支援プログラムとして2回研修を受けて来ています。また、アメリカから医師・義肢装具士のボランティアも2017年から継続的に支援へ来ていたため、知識・技術ともに発展途上ではあるものの支援を受けながら、向上しています。

 

Photo:左大腿義足

 

Photo:右下腿義足時の歩行

 

【目次】

第一回:リハビリテーションの現状

第二回:教育と住環境

第三回:医療事情

 

三田村徳さんプロフィール

2010年3月 東北文化学園大学 理学療法科専攻卒業 

2010年4月 公益財団法人 宮城厚生協会 泉病院入職

2017年6月–2019年6月 JICA青年海外協力隊によりフィジーへ派遣

National Rehabilitation Medicine Hospital(国立リハビリテーション病院)

 

フィジー共和国によるリハビリテーションの現状|三田村徳さん

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