葛藤の中での言い合い
POSTインタビュアー:ドイツで感じたリハビリテーションのおもしろみはどんなものでしょう?
勝田先生:ドイツというより、平和村での話になりますが、平和村の子どもにとってリハビリテーションの時間は本当に大事な時間です。
例えば自主練をしながら、子どもたちは自分の体のことを考えます。また、帰ったら何がしたいとか、どんな生活をしたい。例えば学校へ行きたい。友だちとサッカーしたいなどを考える時間にもなります。また、普段の生活で、何をしたときに痛みが強く出る。今はどんなことが難しいのか。いうことを話し合える時間になります。
リハビリ室には、常に3~7人の子どもがいるので、子ども同士で話して、いろいろ相談しているのは本当に興味深いです。違う国の子どもたちが、自分の国の自慢話をしていたり、家族の話をしたり。まさに異文化交流です。
リハビリをしている時間がそういう時間になるので、子どももそして私も本当にリハビリテーションの時間が好きなんです。子どもたちが自分の身体に関心を持って、帰国後のことをイメージする。そして、子どもたちが作業療法をすることで『自分で健康を手に入れる』と思い行動していると感じることが、平和村で働く面白さのように思います。
POSTインタビュアー:勝田さんが疑問に感じていた国に返すというリハビリテーションは実際に経験してみてどうですか?
勝田先生:まだまだイメージ、行動は出来ていない気がします。それは子どもたちの国を実際に見ていないということも大きいですね。子どもたちがどんな場所で生活しているのか…を子どもたちの声や現地に出向くスタッフの声から想像しているだけにすぎないので。
トイレの状況にしろ、寝具にしても…。子どもだから、自分たちの生活を話す際に、見栄を張っていることもあるんです。その子がどういう気持ちで話しをしているかをしっかり見ないといけないですね。
学校までの道のりも手段も、その子たちによってそれぞれですが、日本で想像している通学とは異なることが多いのは明らかですよね。どんな道のりをどんな人数で乗り合わせたバスで通学するのか…その際、「膝が曲がらない」っていうことがどれほど、障害になり、その子の「通学」に対しても障害になりえないか、など。正解が分からないことも多々あります。
POSTインタビュアー:なるほど。
勝田先生:8㎝の補高をした子がいたんです。平和村の施設内での生活は問題なく、すべてが自立していました。補高靴でサッカーするくらいでした。でも、彼は実は遊牧民だったみたいで、帰国してから報告を受けたんです。
丘を越えたりもするようで、坂道は相当歩きにくいですよね。補高靴で良かったのかな?と考えます。ただ他にどんな方法があったのだろう。脚の延長?そうなると治療期間はぐっと長くなりますよね。短い滞在期間が理想です。でも、母国でできる限り少ない障害とともに生活してほしい。「障害」って言葉を用いると語弊が生じるのかもしれませんが、でも、子どもたちには母国で障害が少なくなることを目指しています。そんな中で、「母国へ帰る」て、本当に難しくて、本当に子どもとその母国や生活と向き合わなきゃいけない。
POSTインタビュアー:非常に難しいですね。
勝田先生:「自分でできるようにならないと!!」って思いが強くなりすぎて、時には言い合いになることもあるんです。「私は一緒に帰れないの。」というと「ママが手伝ってくれるから大丈夫。」と言われ、「ママに頼ってばかりでいいの?」って。もちろん子どもも、本当なら、一人でできるようになりたい。難しい。無理かもしれない。
そんないろんな葛藤で頑張っている中で「ママに手伝ってもらう」という発言で、実際にそれでいいと思って発言しているわけではないのですが・・・・それを分かっていても言い合いになりますね。もっと、私自身が成長しなければと反省ばかりです。
「行動」に移すきっかけは自分次第
インタビュアー:では、最後に海外志望のある療法士にメッセージをお願いします。
勝田先生:私自身は日本で働いていた時に、自分の中での『できない』と勝手に思って、いろんなことに対して行動を起こすことに制限していた気がしますね。何かに縛られて行動していたような感じがします。
そして、いつも「何かに支障がでたら…」とかよく考えていましたね。これをしたら、ここに迷惑がかかるかも。だからできない。と、何かする前に勝手にそう考えていました。
「海外志望のある方が実際に行動するためには、どうしたら良いのか」という明確な答えはわからないです。でも、助言できるとしたら、たぶんそれら(考えていること、希望など)を試しても、きっと誰にも迷惑が掛からないと思います。人は周りと支えあって生きているけど、でも固定されてはいない気がします。あいまいな表現ですが。
あとはタイミングでしょうか。興味関心が伴って行動をしているときはなんだかタイミングが良い様に思います。でも根源には好奇心が必要ですね。私はどうしても平和村を見てみたかったんです。
インタビュアー:これからはどういう働き方をされるんですか?
勝田先生:まだ働いていたいですね。まだまだ『母国に帰る』というのをわかってないから。同時に、途上国に直接働きかけたいという思いもあります。平和村で働いて、作業療法の楽しさを感じさせてくれました。
以前には、作業療法士をやめようと感じたことも何度かあったので、今は作業療法をしっかり続けて、良し悪しも知って、作業療法の面白さをみんなに伝えたいです。作業療法を仕事として選んだ人が、『選んで良かった』って思えることを一緒に共感していきたいです。
インタビュアー:ありがとうざいました。