きっかけは卒業生からの相談
─ 関節治療の専門家のイメージの強い蒲田先生ですが、産前・産後の取り組みを始めたきっかけは?
蒲田先生:産前・産後ケアの取り組みを本格的に始めたのは2年前からです。重度仙腸関節障害を患った卒業生から相談を受け、治療を始めたことがきっかけでした。
実は5年前から産後の骨盤痛の研究をしてはいたのですが、深刻な仙腸関節痛に遭遇したことはありませんでした。彼女の状態を診て衝撃を受けました。産後の仙腸関節障害はこんなにひどい状態になるのかと。
約2ヶ月(6回程度)の治療で徐々に症状を改善することができました。治療開始から3ヶ月少しして職場復帰を果たし、治療は一段落となりました。さらにその後2年経過した時点でもう一度治療の機会がありました。そのとき、根本的な痛みの原因組織を特定することができ、痛みを消失させることができました。
この治療経験から、産前・産後の仙腸関節痛を確実に治せるセラピストを増やすとともに、仙腸関節痛以外の未解決な臨床課題に対しても解決法を模索したいと思うようになりました。「快適に産前・産後を過ごすことができる」、という安心感は少子化対策にもなると思い、社会的な意義を強く感じています。
蒲田 和芳(がまだ・かずよし)
学術博士/理学療法士/日本体育協会アスレティック・トレーナー。広島国際大学教授。スポーツリハビリテーション、関節バイオメカニクス、関節リアライメント治療が専門。日本オリンピック委員会の本部医務班理学療法士として、アトランタ(1996年)およびシドニー(2000年)オリンピックに帯同する。大学での教育と研究、医療機関での臨床、ビジネス、疾病予防との社会活動、日本健康予防医学会でのリアライン認定資格者の育成、学会等での学術活動などとともに、オリンピックを目指すトップアスリートの怪我の治療やコンディショニングに携わっている。関節の歪み対策商品販売やセミナー運営を行う株式会社GLABと、9㎝ハイヒール専門ブランドLiberaciónを展開する株式会社リベラシオンの代表取締役も務めている。
セミナー開催に向けた『周産期ケア勉強会』
──産前・産後をテーマにしたセミナーを開催するにあたって、臨床知見はどのように得たのですか?
蒲田先生:産前産前・産後をテーマにしたセミナーを開催するにあたって、私自身が多数の症例を経験し、医学的知識や技術を成熟させる必要がありました。さらに、症状のバリエーションの理解、リスク管理、家庭環境を含む困りごと、心理的な側面などを総合的に産前・産後ケアの臨床を深く経験する必要がありました。まずは100名を目標に、産前・産後ケアを実践することにしました。
そこで、産前・産後の女性セラピストを対象とした『周産期ケア勉強会』という少人数性の勉強会を各地で開催しました。これは、会議室やホテルの一室などにおいて10名程度で行うもので、ライブ治療を通じて症状を解決・改善させるものです。東京のオフィスや会議室、そしてホテルの一室などで行っています。セミナー当日の夜など私の出張予定に合わせて開催しています。
参加者は「産前・産後ケア」に関心のある女性セラピストとしています。もちろん、産前の方、産後(1年以内)の方を歓迎しています。この勉強会をやってみてわかったことは、この領域に関心のある女性セラピストの殆どが、ご自身の「問題」を抱えておられます。つまり産前・産後ケアは他人事でなく、自分ごととして「真剣」に取り組んでおられるのです。
──その勉強会の中では、どのような症例を経験しましたか?
蒲田先生:始めたばかりのときは仙腸関節痛や頸部・上背部痛など、いわゆる運動器疾患の相談が多かったのですが、徐々に腹直筋離開、尿失禁、乳腺炎、生理痛、胃の症状(食欲不振、嘔吐、つわり)など、参加者の方がいろいろな「悩み事」を相談してくださるようになりました。治療効果が確実に得られるようになってきた症状に関して、その治療法をセミナーで紹介するようにしています。自分自身が治せないことをセミナーで教えることはできませんので。
この勉強会は、私自身の治療経験となっているとともに、参加者どうしの気軽なディスカッションを通じて悩み事、困り事を吐き出していただき、産前・産後ケアに関わる諸問題を把握することができます。この悩み事は、今後進めていく「産後ケアセンター」構想に取り入れていきます。
後半へ続く>>(※近日公開予定)
【告知】蒲田先生の産前・産後アプローチを学べるウィメンズヘルスケアフォーラム
会場 | 浅草橋ヒューリックホール ※総武線「浅草橋駅(西口)」より徒歩1分 ※都営浅草線「浅草橋駅(A3出口)」より徒歩2分 |
対象 | 療法士、看護師、助産師、その他セラピストなど |
定員 | 400名 ※実技講義は70名 |
主催 | ウィメンズヘルスケアラボ 株式会社エバーウォーク |
共催 | 株式会社GLAB |
産前・産後の仙腸関節痛に対する治療とセルフケア
妊娠中と産後では仙腸関節痛の病態も多少異なります。しかし、本質的には骨盤マルアライメントによる仙腸関節離開の状態を評価し、そしてその結果生じた疼痛の発生源を精密触診によって特定することにより、かなりスッキリと病態を整理することが可能です。この実技講習では、マルアライメントの治療に必要な治療技術として、デバイス(リアライン・コア)を含めた運動療法、癒着に対する徒手療法としての「組織間リリース」を紹介します。
原則として医師および理学療法士、作業療法士に限定させていただきます。株式会社GLAB主催のセミナーにご参加された方にとっては内容が重複しますので、まだ蒲田のセミナーを受講されていない方にお勧めの内容です。