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紆余曲折を経て、米国で学校作業療法士に【松田 直子】

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第345回は、アメリカで作業療法士の資格を取得し、働いている松田直子さんのインタビュー。松田さんは関西外語短大を卒業後、渡米し、オハイオ州立大学に通い、作業療法士資格を取得。主に小学校で働く作業療法士として20年以上培ってきたキャリアを伺いました。

リストラとOT就職氷河期

ー まずは、アメリカで作業療法士になるまでのいきさつを教えてください。

松田さん 最初はただ英語が喋りたくて、関西外語短期大学の英語学科に入学したのですが、あまり上達せずに、卒業後に留学することを決めました。

 

ただ当初は、語学留学のつもりでしたが、当時バブルが弾けてまだ数年しか経っていない頃で「英語を喋れるだけでは、就職先がない」と言われており、せっかくなら手に職をつけようと資格の本を開いて作業療法士の仕事を知りました。

 

それで興味を持って、数回病院でボランティアを体験して、作業療法士になることを決めました。その時はニューハンプシャー州の小さな私立大学にいたのですが、その大学にはOTの学校がなかったので、とりあえずニューヨーク州に移ることにしました。

 

ただ、OT学科のあるニューヨーク州立大学のバッファロー校は、ニューヨーク市からも受験者が来るので、とても競争率が高かったため早々に諦め、最終的にはオハイオ州にあるThe Ohio State Universityに通いました。

 

振り返ってみたら、アメリカに来てから作業療法士学部に通うまで3年もかかってしまいました。

 

ー 大学卒業後に、病院ではなく小学校で働こうと思ったんですか?

 

松田さん オハイオ州立大学卒業を間近に控えた頃に、一つのフィールドワーク(実習)を修了する事が出来なくて、卒業が伸びてしまったので、3ヶ月くらい個人開業のセンサリークリニック(感覚統合セラピーのクリニック)でボランティアをしていました。

 

そのときにちょうど担当してくださったOTの方が、クリニックと掛け持ちで公立幼稚園で働いていたんです。彼女はコネチカット州の実家に帰るからと、私を公立幼稚園の仕事に誘ってくださりました。

 

私が大学を卒業した時はちょうど就職氷河期で、メディケアという医療保険でリハビリの予算上限が新設されて、高齢者向けの施設で働くセラピストのリストラが盛んに行われていた時期でした。

 

では、リストラされた作業療法士がどこに流れたかというと、特別支援教育の現場である学校でした。そんな時期に労働ビザを持っていない、英語もそこまで上手くない新卒の私を雇う方が珍しいでしょう。(笑)

 

職場を選んでられないような状況でお誘いいただいたので、素直にありがたいと思い、その幼稚園で働くことを決めました。

 

でも結果的に、自分にとても合っていて、これまで小児の作業療法一本でやってきました。

 

小・中・高 どの学校にも作業療法士が配置されている

ー アメリカだと作業療法士は学校にどのように配置されているのですか?

 

松田さん まず、アメリカは高校までが義務教育で21歳まで高校に在籍出来ます。作業療法士はIEP(Individualized Educational Plan)ミーティングでOTサービスが必要と認定された子供たちにどの過程でも必ず関われるように配置されています。

 

私は、Diploma Bound(ディプロマバウンド)という、いわゆる定型発達のお子さんが学習する内容と同じものを学ぶけれど、人数の多い通常学級では習得が難しい(IEPを持つ)生徒さんを集めた特別支援学級(Self-contained classroom)を担当していて、修了すると最終的に4年制大学への入学申請の資格が得られます。

 

Self-contained classroomの生徒も、定型発達の生徒とクラスが完全に分かれているわけではなく、社会・理科、図画工作や音楽、体育は通常学級の生徒と授業を受けたりします。科目を問わず、サポートの必要に応じて作業療法士が関わります。

 

ー つまり、障害がある子もない子も同じ一つの学校(空間)で学ぶ体制になっていることですね。

 

松田さん はい、そうですね。あとは、Certificate Bound(サーティフィケイトバウンド)という社会での自立を目的としたクラスもあって、生活に必要な機能に根ざした授業内容になっています。例えばバスに乗ったり、買い物をしたりといったことですね。

 

ー 通常学級とSelf-contained classroomではどのような違いがあるのでしょうか?

 

松田さん まず、先生と生徒の割合が違います。通常学級は一クラス20人から30人弱ですが、私の勤めている小学校ですと生徒数10人前後に対して主担任が一人、補助二人が常駐して、少人数制で授業をサポートしています。

 

自閉スペクトラム症やADHD、ダウン症、医療的ケア児、AAC(Augmentative and Alternative Communication)が必要といった生徒に対して、障害に関わらず、障害のない子供と最大限一緒に学ぶための環境で、義務教育を受けられることができるようにサポートしています。

 

個別対応と集団対応

 

ー 作業療法士が、授業中に教室に入ってサポートをしているということですか?

 

松田さん もう少しで作業療法を卒業(目標を達成する、障害による不都合をテクノロジーや環境調整などで補えて、それを先生達が支援する事ができる用になる等)出来そうな子に対しては教室でサポートすることもありますが、多くは、個別や少人数制のグループ対応の時間を設けて一緒にエクササイズをしたり、話をしながらセラピーを行います。

 

少人数制の教室によっては、10人中、8人がOTサービスを受けているというところもあったりするので、そういうところだとSTと一緒に教室に入ってグループセラピーをしたりします。

 

学校作業療法においては、セラピーを行っていない時間の過ごし方が、目標達成に向けてとても大切です。

 

週一回の個別・グループOTよりも、いかに教室内でOTが推奨するアクティビティが行われるかが目標達成への近道というエビデンスもありますし、学校生活全体を見ることが作業療法士に求められてきています。作業療法士の考え方を他の職種にも繋げて、チームでサポートすることが大切だと思っています。

 

松田先生も登壇!参加無料です⬇︎

【日時】 5月30日(土) 21:00~22:30

【参加費】無料 ※セキュリティーの関係上、POSTの会員登録(無料)が必要になります。

【定員】95名

【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。お申し込みの方へ、後日専用の視聴ページをご案内致します。

▷ 申し込みはこちら

 

紆余曲折を経て、米国で学校作業療法士に【松田 直子】

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