プロソディが単調なまま言葉の聴き取りや話す練習を行っていても、途切れた発話は改善しない
大沢先生 高校生の頃、地元の病院で言語療法の見学をさせて頂いた際に、言葉を理解しているのに話せない方や食事を食べられない方に携わり言語聴覚士に興味を持ちました。
それに僕は岩手県の海沿い出身ですが、当時沿岸北部・南部合わせてSTが3名しかいないと話を伺い、活躍すれば海沿いのパイオニアになれると思ったのを今でも覚えています(笑)
学生時代に失語症の分野を専門に学びたいと考えていたので、最初の4年間は失語症分野を専門に学べる病院に入職致しました。
言語構造を基礎から教わることができた点や、週に1回研修日を設けてくださり休日と合わせて外部研修にたくさん参加することができたことが今日に繋がっていると感じています。
また、先輩方の勉学に熱心に取り組む姿勢を目の当たりにできたことが一番の収穫だったとも思っています。8年目を迎えた頃にSTとして病院で働くことに疑問を抱くようになり働き方に迷いが生じていきました。
職場を退職し、今一番やりたいことは何かを考えました。そこで思ったのが、アメリカに行き失語症分野を学ぶことでした。
理由は、言語訓練の違いを感じてみたかったからです。見学を通して、訓練内容に特別な違いを感じることはありませんでしたが、日本語と英語では情意を現す形式に差が生じていると思いました。
日本語は意見や考えを口頭で述べる時に、相手の気持ちに寄り添い自分の情意を伝えることがより具体的に行える点が特徴の言語といえます。
つまり、日本人の失語症の方々に言語訓練を行う際には、日本語の特性を意識し情意を伝えるためにプロソディをしっかりと理解し表現できるように取り組むことも大切だと感じました。
そこで例えば、前頭葉損傷によるブローカ失語の方々を思い浮かべてみてください。非流暢な発話になっており「おはよー」が「お・は・よ・う」と文字を読んでいるような途切れた発話になりやすいかと思います。
このような方々に、文字を読む書く練習を行い、プロソディが単調なまま言葉の聴き取りや話す練習を行っていると途切れた発話は改善しません。
プロソディを意識し、相手の話していることの真意を理解しやすくする、途切れた発話でも伝われば良いではなく流暢に話せるように言語訓練を提供する必要があるとアメリカに行き強く感じました。
これからは、より日本語特有のプロソディや文法構造を意識し言語訓練を行っていきたいと思います。
言語聴覚士の必要性と楽しさを伝えたい
大沢先生 アメリカから帰ってきて、失語症の勉強以外にもう一つやりたいことがみつかりました。それは、医療従事者に問わずST分野をより多くの方に知ってほしい、STの必要性と楽しさを伝えることを仕事にしようと思いました。
現在は、医療従事者に問わず意見交換を行える場を設けつつ、病院に特化せず老健・特養・障害者支援施設やデイサーピス、訪問リハビリ、小児施設、専門学校にSTとして携わっています。余談ですが、私は旅が好きで人との繋がりに喜びや生き甲斐を感じています。
これからも医療従事者に問わず、多数の方々を繋げる場に関与し、ST分野の必要性と楽しさを伝えていきたいと思います。STって、本当にほんとうに魅力的な仕事ですよ。
あたり前のことだと言われてしまうかもしれませんが、携わっている対象者様のことを真剣に考え結果にこだわっていきたいと思っています。ST業務の重要性や楽しさを伝えつつも、当事者が一番求めていることは治療結果だと強く感じるからです。
また、対象者様にもっとも治療効果を出せるセラピストを紹介することや機能改善が難しい場合に最適な対応を行うことも重要な役割だと感じています。ST分野においても、セラピストによって得意分野は分かれてしまうので、仲間を増やしていきながら連携を図って行ければと考えています。
その他として、医療・介護分野に携わる日本人と外国人の交流の場を作って行きたいと考えています。EPA制度の規制が緩和され医療・介護に携わる外国人が増えたときに、コミュニティの場や医療や介護分野の勉強を行える場が必要だと感じているからです。
現在は、インドネシア人の方々と定期的に勉強会をおこなっていますので興味がある方はご連絡ください。これからも、自分にできることを少しずつ積み重ねていきたいと思います。
大沢良輔先生経歴
平成18年 総合守谷第一病院入職平成22年 三郷中央総合病院入職
平成26年 自営業開始
キーワード
♯言語聴覚士
♯アメリカ ♯失語症