Buenos noces!terapeuta!(スペイン語でこんばんは療法士のみなさん)、週の真ん中水曜日の江原です。本日はこれまで書かなかった、『神経ブロック療法』についてです。医師の治療のことなのでできるだけ避けてきました。しかしながら他職種からの視点やチーム医療として理解しておくのは、脳卒中のt-PA療法とか、TKAの手術について学ぶのと同じだと考えています。
私がペインクリニック科の理学療法士だと話すと、必ずと言っていいほど『神経ブロックって効かなくないですか?』という問いをよく投げかけられました。
神経ブロック療法が効くか効かないか…。肌感としてはフィールドが違うと見える景色も異なるため、ペインクリニックから見える景色を通じて反論となるような神経ブロックの基本的話をまとめたいと思います。『神経ブロックは効きます』、その理由がわかる記事になるよう物申していきたいと思います。
「神経ブロック」の現実と幻想
まず最初に、「神経ブロック療法は効果ない」論に対する一定解を導こうと思います。
「神経ブロック」という言葉から、ある神経を壊せばその痛みがずっと取れて楽になる、痛みが治ってしまうといったイメージを持ち、期待する患者が少なからずいる。ときに医療従事者でさえそのように誤解し、一度の治療で治らないと、「ペインクリニックにかかっても痛みが取れない」と訴えるケースさえある。
実際の神経ブロックでは基本的に局所麻酔薬を用いる。すなわち、局所麻酔薬の作用時間を過ぎると神経ブロックの効果は消失することを意味する。局所麻酔薬による一時的な痛みの軽減をなぜ行うのか?これは一時的なごまかしではないのか?一時的ではなく、長い時間を麻痺させる方がよいのではないか?こうした疑問は当然であるし、実際に患者から質問されることも多い。
参考文献より引用
要するに前述の「神経ブロック療法は効果ない」と言われることはペインクリニシャン、麻酔科医にとっては「あるある」です。そもそも局所麻酔薬を使用することが多い、神経ブロック療法の効果は一時的であります。
しかしながら、神経ブロック療法で症状が改善し、消失する症例は数多くいます。特に私の記事で度々論じている本来の意味の「急性の坐骨神経痛」、急性の神経障害性疼痛はほとんど神経ブロック療法で改善していると言えます。
つまりリハビリ職種が担当する患者は、神経ブロック療法を含む治療に反応が悪くリハビリが処方されている方が多いので、結果的に「神経ブロック療法が効かなかった患者」をいつも担当しているため、そのような錯覚が起きていると考えます。
著者も引用部分以降で「実際に神経ブロック療法を繰り返すと、薬効以上に長時間にわたって鎮痛を得ることは少なくない。神経ブロックは決して姑息的な対症療法ではない」とまとめています。
ペインクリニック科と神経ブロック療法
神経ブロック療法は1980年代にアメリカで始まり、日本では東京大学医学部の麻酔科の若杉文吉先生が関東逓信病院に開いたペインクリニック科が先駆けと言われています。ペインクリニックは「痛みの診療科」のため神経ブロック療法はその手段の一つです。従って神経ブロック療法をあまり行わないペインクリニック科も存在します。日本においては麻酔科の医師が多いため、神経ブロック療法はメインの治療と言っても良いかもしれない。
私がリハビリを行っている病院は現在3か所ありますが、すべてペインクリニック科で神経ブロック療法は治療手段の中心となっています。また神経ブロック療法はペインクリニック科だけでなく、修練を積んだ整形外科医も行うことがあります。
神経ブロックを行う際の必要な事項には、
①心理社会的要因の関与が大きい症例では注意が必要
②十分なインフォームドコンセントを得ること
③合併症に対して速やかに対処できる技量を持つこと
などが挙げられます。
クリニックなどでは③に関連する麻酔の管理が難しいため、侵襲が低い神経ブロック療法が治療の中心とります。麻酔科医と比較すると専門的な神経ブロック療法に比べると実施できる種類は限られます。その点で、本来は効果的なブロックを選択できず効果的でない神経ブロックを行われている可能性もあります。