地域に一番近い議会
― 国政ではなく、市議会での仕事の魅力はどんなところに感じていますか?
志智:市議会は、住民にとって一番身近な議会だと思います。
そこに直接関われて、独自に政策を打ち出せる部分もあるので、今までの知識や経験、専門性を活かせることに魅力を感じています。政策の効果や反応もダイレクトに返ってくるので、人々の生活に関われていることを実感します。
また、事前と事後の調査をしっかりやれば、施策の効果もハッキリと分かるのでやり甲斐も大きいと感じます。理学療法士・作業療法士は客観的な評価に基づいて課題を解決していきますが、このプロセスは施策の進め方と同じです。
たとえば、事例として、ある生活道路を車がスピードを出して通っていて危ないということに対して、立体に見える路面表示を付けてスポードを抑制しようということがありました。
でも、施策を行うにあたって、その塗装にが本当に効果があるのか検証しないといけませんよね。近隣の人に事後の感想を聞き取るだけでは客観的な評価にならないので、基準線を引いて、そこを車が何秒で通ったのかを動画で測定すれば、路面表示でどの程度減速されたのかが分かるのではないかと提案しました。
このように、リハビリとは関係ないところで作業療法士としての臨床経験が活きるという場面があったりします。
政治力の差
― 作業療法士資格を持って市区町村の政治に関わる人が、もっと増えてくるといいと思いますか?
志智:それはすごく思いますね。医療介護福祉に詳しいプレイヤーがこれからの時代はもっと必要だと思います。
国政選挙では理学療法士連盟が代表者を立てて、みんなで応援するよう活動をしていますよね。大切なことだと思います。
僕らの仕事というのは、医療介護保険下でのサービスですので目を逸らしていてはいけません。
今回のコロナの影響を受けて看護師が名古屋市に対して要望書を提出した結果、医療従事者に補助金が出ました。アクションを起こしたからこそ、行政を動かし、自分たちの職業が恩恵を得ることができました。
療法士は他の医療職種と比べて、そこの部分が弱い。自分が選挙に立候補したとき、作業療法士連盟から手助けが得られると思って連絡をしましたが、全く反応をいただけませんでした。
根に持っているわけではありませんが、もし次、チャレンジする人がいた時には、是非連盟でバックアップしていただきたいと思っています。
政治が自分たちの将来に関わるということを、もっと協会や連盟が真剣に伝えていかないと思っています。
冷静に怖がって
ー 最後に、志智さんの視点で若手でキャリアに悩んでいる人に対してアドバイスをお願いします。
志智:その不安がどこからきているのかを、明確にすることが大事だと思います。
ロボットやAIの登場によって、自分たちの仕事の仕方やアピールポイントも確実に変わってきます。今後のことを見通しつつ、理学療法士・作業療法士にしかできない働き方や社会貢献の仕方を見つけていく必要があると思います。
この仕事の専門的な知識や経験は、とても価値があります。
変に怖がりすぎることなく、冷静に怖がって、これからの社会変化についていってほしいと思っています。皆さんの、政治への参加も待っています。
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