一般社団法人WheeLog代表の織田友理子さん(写真中央)は、22歳のときに進行性の筋疾患、遠位型ミオパチー(空胞型/GNEミオパチー)の診断を受けました。その後、当事者団体「PADM(遠位型ミオパチー患者会)」を立ち上げ、2015年には、Googleインパクトチャレンジにて「みんなで作るバリアフリーマップ」がグランプリを受賞をしています。WheeLog!を通じて目指す「車いすでもあきらめない世界」について伺いました。
心のバリアの乗り越え方
ー 杉山葵さんの記事を見て、私もWheeLog!アプリをダウンロードさせていただきました。WheeLog!が目指している「車いすでもあきらめない世界」について教えてください。
織田さん 私たちは、車椅子ユーザーが情報が足りないという理由で外出を諦めてしまっていたり、そこに行ってみるまで分からないという状況をどうにかしたいと思いアプリの開発を始めました。情報によってバリアフリーを促進するというのが目指しているところになります。
一方で、単にバリアフリーデータを集めていく団体ではなく、コミュニティーとしての役割を大切にしています。
街歩きイベントに来てくれた参加者同士が仲良くなってfacebookで繋がったり、アプリ内にユーザー同士の掲示板があってそこで繋がったりもしています。
イベントは有料で開催していますが、毎回80人ほどの方に集まっていただいていて、私が絡んでいなくても、ユーザーが独自で開催もしたりしていて、徐々に広がってきています。
ー イベントの参加者は、車椅子ユーザーさんだけでなく、健常者の方も多く参加されていますね。
織田さん そうですね。アプリの登録者を見ても、6割ほどが健常者です。それだけ車椅子ユーザーさんのためになりたいと思っている人がいるというのは、心の支えになると思います。
車いす生活になる理由は難病や事故など人によって様々で、中には障害によって身体が不自由なり、気持ちも消極的になってしまうこともあります。
でも、これだけ暖かい世界が必ず存在するということ、理解者がいるということ、安心して参加できるコミュニティーがあるということを知れば、少しは車椅子の方も外出しやすくなるのではないでしょうか。
ー 織田さんもはじめは、外出に抵抗とかあったんですか?
織田さん ありましたね。かわいそうだと思われたら嫌だなとか、借り物の車椅子に乗りたくないとか。
ー その時、どうやって心のバリアを乗り越えたんですか?
織田さん 私の場合は、夫に「かわいそうと思ってしまう人の方が、かわいそうだよ」と言われて、「自分の器がちっちゃかったな」と気づきました。
もちろん、そういった思考の転換が起きるキッカケは人によって違うとは思いますが、アプリでもなるべく気持ちを後押しできるように工夫しています。
心のバリアの乗り越え方
ー 障害者に対する差別意識って、どうすればなくなっていくと思いますか?
織田さん 一つの解決策としては、教育にあると思います。WheeLog!の教育プログラムを活用し、中学生や高校生にも車椅子に乗って町歩きしていただくことがあるのですが、車椅子に乗った前と乗った後で全然変わります。
自分たちの街がどれだけバリアフリーを頑張っているのか分かりますし、逆に足りないところも分かって、車椅子ユーザーの気持ちを少し理解できるようになると思います。
これまで、全くの他人ごとだったのが、少しだけ自分ごとに近づけることができると思い、私たちもそういう機会を提供していきたいと思っています。
ー 織田さんにとって理学療法士や作業療法士はどんな存在ですか?
織田さん 私もPT・OTさんにはとてもお世話になっていて、生活の困りごとや福祉用具の困りごとをよく相談させていただいています。リハビリはキツいことも多いですが、色々な話題や情報が豊富な理学療法士さんとの時間はとても楽しくありがたいと思っています。
ー 患者(当事者)の方からそう言っていただけると、ありがたいです。
織田さん 反対に、担当のPTさんに、塩対応失礼な対応をしてしまって申し訳なかったと思っていることがあって。
今では自宅用と出張用の2個持ちするほどお世話になっているモルテンの「電動エアマット」ですが、当時勧めていただいた時には、障害がもっと重くて大変な人が使うものだというイメージがあってすぐには導入しませんでした。
ある時、ふと思い出して実際に利用してみると生活の充実度が格段にあがりました。教えていただいたことに感謝しています。なのでやっぱり、PTOTさんには、その時点だけでなく、長期的な視点を持って患者にアドバイスをいただけると嬉しいですね。
あとは、車いすはあくまでツールでしかないので、「何が好きですか?」「何がしたいですか」と、やりたいこと、実現したいことに対して向き合ってくれると、気持ちが前向きになると思います。心が明るくなります。
好きなことを実現できるか、人生を思い描けるかというのは関わってくれる方の温度感で変わってきます。障害というより、患者一人ひとりに向き合ってくれているのは私たちにも伝わっていますよ。
ー 最後にPTOT読者に向けてメッセージをお願いします。
織田さん もちろん福祉機器についてもそうですが、外出するための引き出しをも多く持っていてくださると、車椅子ユーザーにとても心強いです。それは、福祉機器についてもそうですが、住んでいる街のバリアフリーなレストランとか、その人の障害程度に合ったお出かけ方法とか。私たちが作っているWheeLog!についても、是非知っておいていただきたいと思っています。
車椅子ユーザーだけではなく一般の方々にも、そして特にリハ職の方々にも利用していただいて、WheeLog!アプリユーザーの輪を広げていけたらと願っています。
11月14日(土)に第4回つながり∞イベントとしてオンラインイベントを開催します。
特別支援学校でWheelog!をやってみた ~地域とつながる教育とは~
1 )特別支援学校でやってみた街歩き
2 )いかに地域につながって豊かに生きる力を育むか
上記の点に感心がある皆さまと一緒の時間を共有させていただき、より良く楽しい共生社会実現のために自分や自分のコミュニティで出来る事を考える時間に出来たらと思います。
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