献本いただきましたので、書評させていただきます。今回の書籍は、全9職種22名の専門家が表題通り「訪問リハのためのルールブック」を執筆しています。
どんな事にも、どんなものにもルールは必ず存在します。ただし、社会において決まったルールというのは、何で定められているのでしょうか?法律?憲法?組織?抽象度を考えれば、無限にルールがあり、それは我々療法士であっても例外ではありません。
一方で、ルールを破ることが創造性の始まりである、と考える人も一定数いるのも事実ですし、おそらく事実でしょう。しかしそこには、「ルールの中で」という前提があるように思います。
実は今回、献本いただいた書籍には、「前提のルール」が多く取り上げられていると感じました。表向きは、訪問リハのためのルールではありますが、ここで書かれていることは療法士はおろか、社会で働くための前提ルールが多く取り上げられています。
療法士も社会の一員であり医療従事者でもある
ある意味、医療介護の現場は一般社会から隔離された空間にあり、その中にいるとそれが社会全体であると勘違いすることがあります。本当は、社会の一部に医療介護があり、社会のルールの中で医療介護のルールが成り立つものです。
マクロで捉えれば、上記のような言い方になりますが、ミクロで捉えれば、療法士が自宅に訪問する際のルールというものにも当てはまります。療法士には療法士のルールがあって当然ですが、訪問先にもルールがあります。
そしてそのルールはどちらも正しい。この時、どう選択すればいいのか?ということが本書には書かれています。
「そんなの当たり前じゃん」
と思っている人ほど、ルールを無視する傾向にありますが、訪問リハに従事していないから、という理由でこのような内容に興味を抱かない人も同様、ルールを無視する傾向にあるでしょう。
皆さんは皆さん独自のルールと、他者のルールを切り分けて認識できているでしょうか?これに即答できない方は、是非本書を手にとってみて頂きたいと思います。
訪問リハでは完結しない
本書は、1章〜4章で構成されており一般社会でのルールから、法的制度、事例が書かれています。その中で、個人的に興味を持ったのは第3章に書かれている「他サービス・ステージにおける役割と公的制度」の部分です。
介護保険領域におけるサービス(通所介護、療養通所介護、居宅介護支援、地域包括支援センターなど)に加え、急性期病棟、回復期病棟で働く療法士が訪問リハを行う療法士に対して求めることが書かれています。
この辺りの内容は、現在訪問リハで従事している人はもちろん、急性期病棟、回復期病棟で働く療法士も必読な部分だと思います。同職種でもなかなか意見交換が出来ない、出来ていない部分であり、ある意味では痒いところに手が届いた書籍ではないかと思います。
【目次】
●第1章
訪問リハにおけるお作法
(1)事務所内のお作法
〇事業所内のお作法
〇電話応対の基本
〇書類の作成方法
〇上司への相談、部下への助言
〇事業所内での情報共有や報連相
〇担当交代・複数名で関わる時の留意点
〇チームビルディング
(2)他事業所連携のお作法
〇基本的な礼儀作法とその意味
〇名刺交換のお作法
〇サービス担当者会議での留意点
〇他職種との連携で注意すること
〇営業方法
(3)利用者さん宅のお作法
〇身だしなみの注意点
〇玄関でのお作法
〇和室のお作法
〇おもてなしの受け方
〇お宅の独自ルールへの対応
〇訪問リハを実施する際のお作法
〇提案時の心遣い
〇利用者さんやその家族とのコミュニケーション
〇よくあるクレーム事例と対応例
(4)その他のお作法
〇移動中に注意すること
〇リハサマリー作成時の注意点
〇ケアマネジャーへ提案の工夫
〇地域住民との関わり方
〇院内や病院窓口におけるお作法
〇退院前ケースカンファレンスにおける確認事項と重要性
●第2章
訪問セラピストが知っておくべき公的制度
【1】介護保険
【2】医療保険
【3】障害者総合支援法
【4】公費負担制度
【5】訪問リハビリテーション
【6】訪問看護
●第3章
他サービス・ステージにおける役割と公的制度
【1】訪問診療
【2】訪問看護
【3】福祉用具・住宅改修
【4】通所介護
【5】訪問介護
【6】療養通所介護
【7】居宅介護支援
【8】地域包括支援センター
【9】急性期病棟
【10】回復期病棟
●第4章
他サービス・ステージと連携し奏功した事例
|事例その(1)|家族を最高のサービス提供者に!想いをつなげるチーム連携
|事例その(2)|多様化する多職種連携の在り方~スマートフォンを利用した連携で入浴動作のADL向上に繋がった事例~
|事例その(3)|片麻痺の人が活躍できる場所『カタテバル』~多くの専門家と連携したきっかけづくり~
|事例その(4)|福祉用具専門相談員と連携し、就労支援移行へ繋がった症例
|事例その(5)|訪問診療・訪問看護師と連携し、長期間関わり自宅で看取った症例
|事例その(6)|回復期入院時から訪問セラピストが関わることで繋ぐリハを提供できた症例