【書籍紹介】2020年新刊特集ー三輪書店ー

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初めて日本の作業療法臨床哲学についてまとめた本。

 数学的客観化が困難な作業療法の質的エビデンスとはどのようなものか、どのように積み重ね、どのように伝えたらよいのか。その理解と実践のためには、作業療法の理論や技術の質的エビデンスの基盤となる根拠、すなわち作業療法哲学が必要である。

 

本書では日本の作業療法の哲学的基盤について、現象学的アプローチ、西田哲学、中動態、動的平衡といったキーワードとともに解説し、さらに作業療法において欠かすことのできない視点として、当事者研究、悲哀の仕事、障害受容について記載している。また著者、山根寛の提唱する「YMCOT-臨床作業療法山根モデル」についてイメージモデル図を用いてまとめ、紹介している。

日本の「作業療法の夜明け」を一緒に創ろう!

 作業療法カウンセリングとは、作業療法を円滑に進めるため、作業(意味のある生活行為)的存在であるクライエントの「気づき」と「意欲」を引き出して意味のある活動へと導き、主体的な生活が営めるように援助する双方向的な一連の意思疎通をいう。

 

これは、「治療」を主たる役割とするのではなく、障害があっても「できる」を支援する専門職として、クライエントの心と向き合える作業療法という新たな(本来あるべき)概念を前提に置いた認知作業療法の中核的技術である。今の日本の作業療法の教育と臨床実践には、これらの概念と技法を早期に定着させる必要がある。

小児訪問リハビリテーションの専門セラピストが書き下ろした実践的ヒント

 はじめてお宅に訪問して行う小児リハビリテーションは誰もが緊張することだろう。お子様の状態はどれほど大変であることだろう。状態が悪くなったらどうしよう。そもそも自分に何ができるのだろうか?

 

一方、お子様の成長する場である「家」で行う小児リハビリテーションには多くのメリットがある。日常生活と緊密に連動し,疾患や症状の変化に対応できる。ごく自然な普段の様子を間近で評価し、体調や必要度に応じて発達を支援する。そして、日々の「出来た!」の場面に立ち会える。

 

こうしたいくつものメリットや在宅小児リハに必須の知識、技術的な面や実際の組み立てについて、これまで長い間小児訪問リハに関わってきた筆者の経験から具体的にまとめた。本書が、これから在宅小児リハに関わるセラピストの方のお役に立てれば幸いである。

「高次脳機能障害・発達障害・認知症のための邪道な地域支援養成講座」の"実戦編"

 ADHDやASDといった発達障害のある当事者の困りごとの原因として、注意障害などがトピックとなってきた。問題の主体は、社会的コミュニケーションの問題、あるいは共感性の問題と呼ばれているものである。

 

知能に問題がなくても、共感性、社会性に問題があれば、社会生活はできない。また、こうした社会性の問題は、知能の問題をも伴う高次脳機能障害でも認知症でもおきる。だからといって知能の問題だけに注目していていいだろうか?社会性の支援はどうしたらいいだろうか?注意と感情を他者と共有することは、共感性の礎になる。

 

そのため、本書では、まず共感性の基礎作りとなる注意の要素訓練(マインドフルネス瞑想)と感情を他者と共有する能力(情動の伝染)について紹介し、その応用段階である社会的な視点取得の解説へとすすみ、最終的には「当事者の視点に基づく支援」すなわち「ポジティブな行動支援」の具体的な話へと展開する。

 

社会性の支援のためには、限りある当事者の「注意資源」を「社会性に割り振るためのコツ」が必要である。あなたの知らない「社会リハビリテーション」がつまった新しい1冊である。

【書籍紹介】2020年新刊特集ー三輪書店ー

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