好きこそものの上手なれ
POSTインタビュアー:先ほどお話で、研究と教育がメインだと思いますが、具体的にはどのような研究をされているのですか?
飯田先生:今やっている研究というのは、主に①近赤外光イメージング装置を用いた脳機能研究、②脳卒中患者へのバイオニッグレッグの使用効果です。
POSTインタビュアー:一つ目の研究について教えてください。
飯田先生:”近赤外光イメージング装置”というものを使った研究です。この機械は脳の血流動態を測るような機械で、簡単にいうと、脳のどの分野が働いたかがわかるという機械です。
たまにテレビとかでも紹介されたりしてますね。それを使って、主に動作と脳の兼ね合いについて調べているところです。
私は脳科学者ではないので、脳の解剖や細かいところを特化して研究しているのではなく、臨床の中でどう生かせるかを考えています。
例えば、以前行った研究では、脳卒中片麻痺者の歩行時の脳血流を測り、装具を使っている時と使っていない時の脳活動の違いを見るという研究しました。
また、視覚を利用した訓練とそうでない訓練の違い、単一歩行課題と二重歩行課題時の脳活動の違いなども調べたりしました。
POSTインタビュアー:それは元々先生がお好き、もしくは得意な分野だったから研究対象になったんですか?
飯田先生:そうですね。もともと興味がありました。カナダに行った時に、初めてニューロリハビリテーションを知りました。
脳科学や神経学の研究で明らかになった知見をリハビリ治療に活かしていくというものです。今までのリハビリテーションだと動かない手足を動かしましょうと手足だけを動かしていて、脳のことを十分に考えてこれなかった。
手足を動かすことによって、アプローチしている先は脳なんだということがニューロリハビリテーションかと思います。もともと日本にもあった言葉で、当時から日本でも研究されている方もいましたが、まだまだ多くなかったことと、私自身が知らなかった内容でした。
脊髄損傷の患者さんを機械を使って歩かしたり、脳卒中の方に機械的刺激を加えた上で反復促通していくなど、このカナダでの経験をきっかけに、脳卒中リハビリテーションのエビデンスに興味を持ち始めましたね。
PTの"目安"は必要
インタビュアー:なるほど。では、二つ目の研究について教えて頂けますか。
飯田先生:現在は、アルタGバイオニッグレッグという電動アシスト付きの長下肢装具を使用し、脳卒中の方々の効果を検証しています。
まだ始まったばかりの研究ですが、比較的良い結果がでてきていますね。
インタビュアー:それらの研究を通して、今後の展望や理想はどのようにお考えですか?
飯田先生:今やっている理学療法士の治療が本当に効果があるのかを客観的に研究していきたいと思っています。
エビデンスがまだ証明されてないけども、効果はあるということは結構あるんですよね。
実際、臨床では効果があるんですが、客観的な指標がなかったり、上手く解析できていなかったりしている。
そういうもののデータを集めて、理学療法士が普段やっているリハビリテーションに効果がきちんとあるんだよという研究をしていきたいと思っています。
あともう一つは、例えば脳卒中のリハビリテーションにおいても、セラピストによってアプローチが変わってきてしまう。同じにする必要はないですが、あまりにも外れたものは少しまずいのかと思います。
例えば新人さんでどうしていいかわからないというPTに対して、統計学的な治療の目安になるものようなデータを集めて作っていけたらいいなと思いますね。
<続く・・・第三回は10/10に配信します>
【バックナンバー】
飯田 修平先生経歴
[資格]
理学療法士
[現在の勤務先]
帝京平成大学 健康メディカル学部 理学療法学科 助教
[最終学歴]
帝京平成大学健康科学研究課、健康科学研究課修士
[所属学会]
日本理学療法士協会、日本義肢装具学会、脳機能とリハビリテーション研究会
[主な研究項目]
・近赤外光イメージング装置を使用した脳機能研究,脳血管障害片麻痺患者の短下肢装具主な研究業績
・褥創がある対麻痺患者のADL自立に向けての援助 /リハビリテーション・ケア合同研究大会 2008抄録誌/共著/2008.11
・短下肢装具の作製状況・時期の調査とその後の対策 /リハビリテーション・ケア合同研究大会 2009抄録誌/共著/2009.11
・歩行のイメージ時と準備時が前頭前野の活動に及ぼす影響 /第20回脳機能とリハビリテーション研究会抄録誌/共著/2013.04
・カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーにおける視察研修と医療制度の紹介 /リハビリテーション・ケア合同研究大会 2012抄録誌/単著/2013.10
・被殻出血片麻痺患者の短下肢装具の有無による脳血流動態の比較 /第30回日本義肢装具学会学会誌/共著/2013.10
・短下肢装具の有無による歩行分析と表面脳血流動態の観察 /リハビリテーション・ケア合同研究大会 2013 抄録誌/単著/2013.11
・歩行想像時の表面脳血流動態の観察 /リハビリテーション・ケア合同研究大会 2013 抄録誌/共著/2013.11
キーワード
♯理学療法士 ♯産業リハ
♯腰痛 ♯リハビリテーション