今回も三輪書店様よりご献本いただきましたので、書評させていただきます。本書は、「環境適応 実践実技ノート―中枢神経系障害への知覚探索アプローチ」の名の通り、環境適応に関する実践的手技について症例を通して解説した書籍です。
私個人、「環境適応」というものを、知覚探索アプローチというものを存じていないため、正直具体的な内容に関して解説することはできません。また、本書を拝見し、個人的な見解を述べることも誤った認識の発信となる可能性があるため、避けたいと思います。
症例報告を通した手技の紹介
基本的には、作業療法士の方が中心となって書かれている書籍で、症例を通した具体的アプローチを紹介している実践系の書籍となります。中枢神経系へのアプローチとして、機能に特化した手技は数多あります。
本書の特徴として、というよりも環境適応というものがそうなのかもしれませんが、基本的動作強いては社会生活に生かされる機能とリハで行われる機能改善手法との間にはこれまで大きな溝があり、本書はその溝を埋めるようなアプローチ方法なのではないかと思います。
よくある、リハ室でT-cane独歩となり退院後は全く歩行手段として使われなかった、という話はよく聞きますが、この辺り“環境適応”まで考えた機能障害に対するアプローチの欠落によって起こるものかと思います。
よって、本書では実際の社会活動、日常動作の中で機能を高める工夫が多々紹介されています。
実技書籍の読解
書籍の内容は上記以上に語ることが難しいため、抽象度を上げ「実技書籍」の使い方について、個人的な経験をもとにお伝えしようと思います。本書は、「実践実技ノート」とも記載されている通り、臨床のヒントが散りばめられています。
このような書籍は、セラピストにとってすぐ臨床で生かされるものであり、喜ばれる場合が多い印象ですが、失敗例も多く生まれる可能性があります。例えば、「書籍に書かれた手技をそのまま使用したけど効果がなかった」という意見。
上記意見は、非常に多い意見ですが、書籍の使い方として上記の方法は誤った使い方といえます。また、それだけでアプローチ方法に意味がないと判断するのも早すぎる判断となります。
我々療法士が行う手技全てにおいて言えることは、“評価”があって“取捨選択”をどのように行ったのか?という点は必ず必要です。よって、手技のみを真似て完成されるアプローチは存在し得ないわけです。
だからこそ、実践系の書籍はそのままのアプローチを真似るのではなく、そこに書かれている意味を理解し、どのように臨床へ“適応”させるのか、それを考えるための書籍であるといえます。実践系の書籍はTo DOリストではないことを認識した上で、手に取り日々の臨床に落とし込みことが必要だと思います。