22日第22回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会が開催され「ICD-11第V章実用のためのフィールドテスト」などの報告が行われた。
【資料3】ICFの普及に関する取り組みについて(向野委員提出資料)
方針
令和3年2月に取りまとめられた生活機能分類普及推進検討ワーキンググループの成果を基盤として、国際的な動向を踏まえ つつ検討を行い、将来、ICFが多様な現場で広く使用されることを目指す。 そのため、当面、ICD-11第V章の活用に重点を置き、リハビリテーション等の先行している分野からの普及を目指す。 併せて、国内での活用状況や得られた知見を国際的に発信し世界のICFをリードしていく。
▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20953.html
本ワーキンググループでは、①ICD-11第V章に紐づけられた質問の仮訳案の作成と、② 一般的機能の構成要素の項目の評価ツールを用意することで、ICD-11第V章の全項目を臨床現場で 使用可能な状態とすることを目標とした。
2-3) フィールドテストの実施
作成した採点リファレンスガイドを用いて、多施設におけるフィールドテストを実施した(令和 2 年度特別研究により実施)。フィールドテストには、急性期・回復期を合わせて 20 病院が参加し た。各施設において入院リハビリテーションを実施中の患者を対象とし、計 927 名(男性 420名/女性 507名、年齢 75±14歳)のデータを収集した。
このデータを用い、急性期・回復期における生活機能 の評価に適した項目を明らかにするため、まず、急性期・回復期においてどのような項目に問題があり、どの項目が評価の対象から外れていたか、検討を実施した。国内で広く普及している生活機能評価スケールである Functional Independence Measure (以下「FIM」という。)においても評価対象となる 歩行や更衣、排泄などの項目だけでなく、活力及び欲動の機能、睡眠機能、日課の遂行など、これまで評価対象となっていなかった項目においても「問題あり」(WHODAS2.0 及び MDS において2点以上、一般的機能の構成要素において 1 点以上)と評価される患者が多数を占める結果となった。
これらの項目の一部は、先行研究において生活の質との強い関連があることが指摘されており[1]、 ICD-11 第 V 章を使用することで、患者の生活の質に直結する生活機能の問題を従来よりも広く捉え ることができることが示された。一方で、入院患者を対象としていることから、社会参加に関連した多くの項目においてデータが欠損しており、入院患者とそれ以外では評価の範囲を変えていく必要があることが示唆された。
新ガイドを用いた一般的機能の構成要素の評価(入院患者において欠損値の少ない項目の合計値)は、FIM 及び WHO-DAS2.0 とよく相関しており、生活機能評価と しての妥当性を有していることが示された。
【参考資料1】生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ成果報告書
また、新ガイドを用いた医療者による一般 的機能の構成要素の評価に比較して、WHODAS2.0 及び MDS に基づく質問紙において、何らかの問 題が報告された割合は高い傾向にあり(医療者評価 65.9±16.3% に対し、質問紙 77.3±14.4%)、患者の主観的な評価を合わせて実施することの必要性が示唆された。
今後はこれらの結果を踏まえ、急性期・回復期の入院患者や地域で生活する障害者など個々の病期、環境等に応じて評価すべき生活機能評価の内容を見直すとともに、主観的な評価を取り込む方法を模索し、医療・福祉における治療、 社会施策などが患者の生活機能にもたらす変化とその結果としての生活の質の向上を正しく評価する 仕組みの構築が求められる。
文献
[1]Prodinger B, Cieza A, Oberhauser C, Bickenbach J, Ustun TB, Chatterji S, et al. Toward the International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF) Rehabilitation Set: A Minimal Generic Set of Domains for Rehabilitation as a Health Strategy. Arch Phys Med Rehabil. 2016;97(6):875-84. https://doi.org/10.1016/j.apmr.2015.12.030.