皆さん、こんにちは。火曜日担当の藤本裕汰です。本日もよろしくお願い致します。前回は梨状筋症候群の考え方について解説しました。その中で仙腸関節による要因が考えられると説明しました。本日は仙腸関節に対する介入についての解説をしていきます。
梨状筋症候群の考え方
まずは前回の復習からしていきます。梨状筋症候群の発症機転を3つに分類した報告があります1)。その中では①仙腸関節由来の梨状筋症候群、②椎間関節由来の梨状筋症候群、③梨状筋単独の梨状筋症候群に分けています。
仙腸関節の前方はL4/L5/S1が支配しており、後方はL5/S1/S2が支配しています。仙腸関節に生じたトラブルにより、L5/S1/S2に支配される梨状筋・双子筋・大腿方形筋に反射性攣縮が生じると推測されています。
椎間関節についてはL5のトラブルにより、内側枝を介して外旋筋群の反射性攣縮が生じていると推測されています。また、多裂筋が同神経に支配されており、多裂筋にも反射性攣縮が生じます。
梨状筋単独のパターンに関しては梨状筋の過用によるものであると考えられます。この場合はブロック注射や梨状筋のリラクゼーションで疼痛が消失すると考えられています。
このように3つのパターンに分けられるため、それぞれに対する評価は必要であると考えられます。ここからは仙腸関節に対して解説していきます。
仙腸関節の基礎
仙腸関節は脊柱の根元に存在し、仙骨と腸骨で形成される関節となります。役割としては体重の約2/3を占める上半身をしっかりと支えること、地面からの衝撃をわずかな可動域で緩和しています2)。仙腸関節には骨間仙腸靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯など多くの靭帯が付着しています。骨間仙腸靭帯で仙骨と腸骨が靭帯結合しているため、小さな関節運動のみ可能であると言われています。
仙腸関節の動きは大きくありませんが、仙腸関節により疼痛が生じることもあります。仙腸関節由来の疼痛は腰痛の中の5.6%程度であると言われています3)。あまり多い数字ではないですが、梨状筋症候群のみでなく腰痛を考える中でも非常に重要な知識になります。
仙腸関節由来の腰痛に関してはPSIS周囲・殿部痛・鼠径部痛・デルマトームに一致しない下肢症状を伴うことが多いと言われています。股関節疾患により生じる疼痛と似ている部分もあるため、股関節疾患との鑑別は重要になります。
仙腸関節の安定化に関してはニューテンション・カウンターニューテーションが関与します。ニューテンションは安定する肢位であり、カウンターニューテーションは不安定な肢位になります。立位や座位など安定が必要な場合はニューテーション、背臥位ではカウンターニューテーションとなります。
ニューテーションは仙骨前傾、上方・前方並進運動し、寛骨が外旋し、PSISが閉じます。カウンターニューテーションでは仙骨後傾、下方・後方並進運動し、寛骨が内旋し、PSISが開きます。