6種類のJandaファンクショナルテスト
今回行う運動パターンテストは「Jandaファンクショナルテスト」というもので、6種類の運動パターンで行うテストです。このテストによって、筋の過緊張、筋の弱化ををチェックすることができます。
体幹屈曲テスト
検者は患者さんの足の裏に手を置き、患者さんに起き上がってくるように命じます。肩甲骨が浮いたところでよろしいです。見るべき点は、この時に顎が上がってこないか後頭下筋群の過緊張、それから頸部の深部屈筋群が弱い場合は、顎が上がってくるパターンが見られたり、それから胸鎖乳突筋が強く収縮したりするところを観察してください。
それと次の点は、腸腰筋が有意であるかということをチェックします。私が足の下に手を置いたのは、起き上がり運動が起こる時に、この足がベッドから浮いてしまう、もしくは圧が下がってしまうという所見がみられた場合は、腸腰筋の有利なパターンという風に判断いたします。それから起き上がり運動した時に震えが出る場合、腹筋の弱化がありますと、震えが出たりすることが見られます。
股関節伸展テスト
このテストは、殿筋が股関節伸展の時に、うまく働くかどうかを見ることができます。まず最初に患者さんには触れることなく、自分で足を上げてもらいます。左右で3回ずつ行います。見るべき点は、股関節で運動が起こっているかどうかです。正常では20°の可動域があることが必要ですが、この時にすぐに骨盤が浮いてしまう。この方の場合は、可動域があまりありませんから、すぐ骨盤が浮いてしまう。
それから筋肉収縮を観察いたします。大臀筋を使わないで、脊柱起立筋が優位の場合、骨盤が前傾、腰椎の前弯が強くなるということが見られます。また大殿筋の代わりにハムストリングを使う場合、膝の屈曲が起こるという現象が見られる。これらのパターンをチェックしていきます。実際に患者さんにテストする場合ですけども、患者さんに聞いてみることも非常に役にたちます。「ちょっとあげてみてください」「どこがきついですか?」「ここです」と言った場合に、この方はハムストリングを過剰に使っている、ということが予測できます。
股関節外転テスト
このテストは、股関節の外転時に、中殿筋がうまく働くかどうか代表的なパターンは腰方形筋を過剰に使う場合、または大腿筋膜張筋を過剰に使う場合、または梨状筋の過緊張がある場合に、異常な所見がみられます。後方から観察いたします。この時に観察すべき点は、腰方形筋が過剰に使われるかどうか。腰方形筋を過剰に使う場合は、腰椎の側屈が見られることがあります。
それから大腿筋膜張筋が過剰に使われる場合は、下肢が前方に上がってくるパターンが見られます。また梨状筋が過緊張の場合は、下肢の外旋が入るパターンが見られます。またこの外転運動は40°可動域があるべきなのですが、内転筋が非常に硬いと、この角度が制限されることになります。また臨床で非常に便利なのは、患者さんに尋ねる(「ちょっとあげてみてください」「どこが疲れる手で触ってみてください」など)ことです。
静的背筋持久力テスト
このテストは、腰痛と非常に関連があるという報告があります。実際には4分持続して、伸展することを目標としますが、途中で痛み、脊柱起立筋の震え、その他、患者さんが不快な症状があった場合はその時点で中止いたします。
方法は、上前腸骨棘の辺りから先をベッドの端に出します。下に椅子を置いて、休む場所を作っておく必要があります。「よーい始め」の合図で、体幹をまっすぐに維持します。患者さんには無理をさせてはいけません。痛みとか震え見られた時点ですぐ終了です。このテストは時間を測ります。このように持続的に4分間まで計ります。
片足立ちテスト
片足立ちテストはよくやられているテストで、広く使われておりますが、まず患者さんに立っていただいて、片方の脚を股関節45°膝関節90°程度あげていただきます。30秒間立てる立つことができればOKとします。
「片足あげてきてください」この時みるのは、トレンデレンブルグがあるかどうか、それから動揺が起こっているかどうか、股関節の安定性が悪い場合、股関節で動揺したり足関節の安定性が悪い場合は、足関節で動揺します。実際に異常なパターンは、右での片足立ちでトレンデレンブルグ兆候の場合、左の骨盤が下がってしまって、傾斜してしまうという所見がみられます。逆に反対側に代償的に傾斜する場合、逆トレンデレンブルグという所見をとります。
スクワットテスト
このテストも多くの方がやられていて、いろんな情報がございます。まず患者さんに、ゆっくりとスクワットをしていただきます。大腿部が水平になるくらいまで、曲げていただきます。「やってみてください」はいこの時に、見るべき点は、腰椎の前弯が強くなるかどうか、それから股関節がしっかり動いているかどうか、踵が持ち上がるかどうか、ということをチェックします。
この時点で腰椎の前弯の深くなる場合は、所見としてとります。この方の場合、踵が浮いたりすることはなかったですが、顎が前方に出てしまって、頭部が前方姿勢になってしまいます。この時に仙骨と胸椎、それから頭部が一直線になることを目標とします。
それから下腿の成す角度と体幹の成す角度、これが平行であることが理想的です。前額面での観察する点は、膝の位置と足の関係です。いわゆるニーイントゥーアウトの状態が見られるかどうか、ということをチェックして下さい。
参考:マッスルインバランスの考え方による腰痛症の評価と治療(セラピスTV)
【目次】
チャプター1:マッスルインバランスの考え方による腰痛症の評価:講義
チャプター2:姿勢の評価①
チャプター3:姿勢の評価②
チャプター4:姿勢の評価③
チャプター5:運動パターンの評価(Jandaのファンクショナルテスト)
チャプター6:主要な筋の長さ評価①
チャプター7:主要な筋の長さ評価②
チャプター8:軟部組織の評価①
チャプター9:軟部組織の評価②
チャプター10:マッスルインバランスの考え方による腰痛症の治療:講義
チャプター11:姿勢の修正エクササイズ(静的アライメントの改善)
チャプター12:過緊張筋(優勢筋)の抑制のためのテクニック1①
チャプター13:過緊張筋(優勢筋)の抑制のためのテクニック1②
チャプター14:過緊張筋(優勢筋)の抑制のためのテクニック2①
チャプター15:過緊張筋(優勢筋)の抑制のためのテクニック2②
チャプター16:弱化筋(劣勢筋)の活性化エクササイズ
チャプター17:運動パターン修正のためのエクササイズ:講義
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荒木 茂先生インタビュー
第三回:フロンティア精神
第四回:診療の補助行為
最終回:理学療法士の品格