皆さん、こんにちは。火曜日担当の藤本裕汰です。本日もよろしくお願い致します。前回まで腰痛の鑑別方法、非特異的腰痛について解説しました。非特異的腰痛は割合も多く、腰痛の方に介入する際には非常に重要な知識になります。本日も腰痛の要因になる腰部脊柱管狭窄症の解説をしていきたいと思います。
腰部脊柱管狭窄症の疫学
腰部脊柱管狭窄症は腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔(解剖学的には脊柱管に含まれていない)の狭窄により、神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ、症状を呈すると考えられていますが、定義について完全な合意は得られていません1)。中高年の方に多く、殿部から下肢にかけての痺れや疼痛、脱力、神経性間欠破行が症状として出やすいです。
診断基準に関しては
①臀部から下肢の疼痛や痺れを有する
②臀部から下肢の症状は、立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽減する
③腰痛の有無は問わない
④臨床所見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄症所見が存在する
とされています1)。
基本的に椎間孔は腰椎を伸展・側屈した際に狭くなるため、立位や歩行時に症状を認めます。前屈や座位姿勢では腰椎は屈曲位であり、椎間孔は広がるため症状は寛解します。
本来は画像での診断を合わせて行うことが重要ですが、スクリーニングとして腰部脊柱管狭窄症診断サポートツールというのがあります。これは病歴・問診・身体所見の評価で合計点は-2~16点になります。7点以上の場合は腰部脊柱管狭窄症の可能性が高く、7点がカットオフの場合の感度92.8%、特異度72%と報告されています3)。
腰部脊柱管狭窄症の治療
腰部脊柱管狭窄症の治療に関しては保存療法と手術療法が存在します。保存療法には神経ブロック、薬物療法、運動療法が含まれます。手術療法には除圧術、固定術、制動術が存在します。
初期の治療は保存療法で行われることが多く、無効である場合には手術療法が勧められます。膀胱直腸障害や進行する感覚・運動障害を有する場合は手術適応になります。
脊柱管狭窄症の手術療法で注意が必要なことは患者様のイメージと症状が一致しないことであると考えています。手術をしたのに痺れが治らない、歩けないなど訴える方も多いと思います。ガイドラインにおいても術前に安静時の下肢しびれを有するものは術後の下肢しびれ・歩行障害が残存しやすい、糖尿病を有する場合は下肢痛・しびれが残存しやすいと報告されています。
この様な知識は患者様に聞かれた際に情報として伝えるのは必要であると考えられます。