■この記事を読むとこうなる!
・梨状筋症候群の症例に対して鑑別から治療戦略が立てられるようになる
・梨状筋症候群に対する筋膜アプローチを行えるようになる
【梨状筋症候群】の正しい鑑別方法
梨状筋症候群は、梨状筋により坐骨神経が絞扼されて生じる症候群で、殿部から下肢にかけての疼痛が生じうる疾患である。と定義され、セラピストとしても臨床でよく経験する疾患の1つです。
臨床症状としては、
・日常生活における殿部痛や大腿~下腿後面痛
・長時間座位における下肢後面の痺れ・痛み
・中腰姿勢での殿部痛
など、坐骨神経に由来した症状を主訴とするのが一般的です。この梨状筋症候群を正しく鑑別するにはポイントがあります。
それは、
下記に紹介する、3つの徒手検査を併用して鑑別することです!早速その3つの徒手検査の内容をチェックしていきましょう。
■1 FAIR テスト
・方法:
①患者を背臥位とし、検査側の股関節を屈曲させる。
②検者は一方の手で検査側の膝を、他方の手で検査側の足部を把持し、股関節を他動的に内転・内旋させる。
・陽性判定:検査側の殿部〜下肢に放散痛が生じる。
注意すべき点は、股関節の屈曲角度を90°未満で行うこと。梨状筋は、起始停止の位置関係から、股関節60°〜90°で作用が逆転し、内旋筋になるため、90°以上屈曲させてしまうと梨状筋が伸張しなくなってしまうので注意が必要です。
■2 フライバーグテスト
方法:
①患者を背臥位とし、検査側の股関節を屈曲させる。
②検査側の股関節を他動的に内旋させる。
陽性判定:検査側の殿部に疼痛が生じる。
■3 ペーステスト
方法:
①患者を端座位とする。
②検者が大腿外側に加えた抵抗に抗するように股関節が外転外旋収縮を行わせる。
陽性判定:検査側の殿部に疼痛が生じる。
梨状筋症候群と筋膜の関係
鑑別ができたら、アプローチへと進んでいくのですが、その前に梨状筋症候群の痛みのメカニズムをおさらいしてみましょう。基本的な考え方としては、
・股関節の運動に伴う坐骨神経の絞扼
・梨状筋の強い収縮や長期間のスパズム
によって、症状が生じると考えられています。また、坐骨神経鞘が梨状筋筋膜に連続することから、この筋膜における張力上昇は坐骨神経鞘における正常な機能を変異させると考えられ、これが神経圧迫に似た症状を引き起こす。
引用:Carla Stecco 筋膜系の機能解剖アトラス 医歯薬出版 2018 p319
とされています。
つまり、梨状筋症候群 または それに類似した痛みを改善させるためには、梨状筋の適度な伸張性を獲得することが必要と考えられます。では、具体的にどこのポイントへアプローチすればいいのか?それは、
です。なぜこのポイントかというと、
大腿二頭筋は、大腿筋膜の線維である外側筋間中隔に入り込み、股関節の近位部分で大腿方形筋・閉鎖筋・梨状筋など殿筋群によって形成される深層の殿筋膜と融合する。
引用:Luigi Stecco 筋膜マニピュレーション 理論編 筋骨格系疼痛治療 医歯薬出版 2011 p130
つまり、梨状筋と大腿二頭筋が殿筋膜を介して連結しているため、大腿二頭筋が梨状筋の伸張性に影響すると解釈できます。
筋膜の評価方法
では、具体的にどのように評価を行えばいいのか?
それは、
ことです。
▼実際にはこんな感じ
皮膚の上を滑らすように丁寧に触っていくと高密度化を起こしているケースでは、皮膚の動きまで悪く固まっているようなポイントがあります。その部分を少し圧迫してフリクションした時に痛みを訴えるような場合はそこの筋膜が硬くなっていると判断します。
筋膜への具体的なアプローチ方法
では、これに対し実際にどういうアプローチをしていけばいいのか?
それは、
ことです。
▼実際にはこんな感じ
正しくアプローチできていると、
「ごりごりした感じ」と「痛み」があります。その固さと痛みが取れるまで3分程度続けてみてください。
※このアプローチは、深筋膜に対し機械的刺激と炎症反応による熱刺激を加えてヒアルロン酸の状態を変えるので、かなりの痛みを伴います。
アプローチはマイルドに行ってくださいね。
※アプローチの目的と理由をしっかりと患者さんに説明し、同意を得てから介入してください。
さて、このアプローチを行ったら前後でFAIRテストや動作時痛などの症状の変化をみてみてください。これで改善がみられるようであれば、数回に分けて介入を続けて症状の改善を目指します。(1回の介入で取り切るのは難しいです。)
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