ホルモン治療の副作用
ホルモン治療の基本と重要性
ホルモン治療は、特に乳がんにおいて重要な治療法です。この治療は、女性ホルモン依存性のがん細胞の増殖を抑制することを目的としています。乳がん術後の患者の約70〜80%※1,2がこの治療を受けており、その有効性は高く評価されています。しかし海外ではホルモン治療による副作用である疼痛が理由で、約30〜50%の乳がんサバイバーが治療を中止※3しています。これが治療継続の鍵となります。
ホルモン誘発性関節痛の発生率と特徴
ホルモン治療を受ける乳がんサバイバーの約20〜75%※4が、関節痛を経験します。この痛みは、タキサン系化学療法を受けた方や閉経後5年から10年以内※2の患者に特に多く見られます。症状の多くは治療開始から約3ヶ月以内に始まり、手関節や膝関節などに多く見られます。
疼痛のメカニズム
ホルモン治療によりエストロゲンが急激に減少することが疼痛の主な原因です。これにより内因性オピオイドの減少や、腱・腱鞘の保護作用喪失が生じ、痛みが引き起こされます。特に40代後半から60代前半の患者やアロマターゼ阻害薬を服用する患者において、症状が顕著になることが知られています※2。
運動療法による疼痛管理
ホルモン誘発性疼痛には、運動療法が効果的です。RCT研究によると、EXCAPのような運動療法は疼痛の程度や機能障害を軽減する効果が確認されています※5。また、ホルモン治療による全身痛が中枢感作(CS)に関連している可能性があり、これを評価するためにCSI(中枢感作指標)の使用が推奨されています。
総括と臨床への応用
ホルモン誘発性疼痛は主に手関節や膝関節に現れ、多くの場合、治療開始から3ヶ月以内に発症します。腱や腱鞘による制限が強い場合、ROMエクササイズを含む運動療法が重要です。また、痛みの部位が多い場合は、中枢感作の影響を考慮し、CSI評価を行うことが推奨されます。
【目次】
[参考文献]
※1Peppone L.J, et al. The effect of YOCAS©® yoga for musculoskeletal symptoms among breast cancer survivors on hormonal therapy.Breast Cancer Res Treat. 2015 Apr;150(3):597-604.
※2Beckwee D, et al. Prevalence of aromatase inhibitor-induced arthralgia in breast cancer: a systematic review and meta-analysis.Support Care Cancer. 2017 May;25(5):1673-1686.
※3Hershman DL, et al. Association between patient reported outcomes and quantitative sensory tests for measuring long-term neurotoxicity in breast cancer survivors treated with adjuvant paclitaxel chemotherapy.Breast Cancer Res Treat. 2011 Feb;125(3):767-74.
※4Robert K et al. Structural insight into allosteric modulation of protease-activated receptor 2.Nature. 2017 May 4;545(7652):112-115.
※5Irwin ML et al.Randomized exercise trial of aromatase inhibitor-induced arthralgia in breast cancer survivors.J Clin Oncol. 2015 Apr 1;33(10):1104-11.
参考:がん性疼痛の評価・治療(セラピスTV)
【目次】
チャプター1:がん性疼痛について
チャプター2:中枢性感作の影響が考えられた慢性痛症例
チャプター3:薬物療法後の慢性痛
チャプター4:骨転移痛/その他
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