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【変形性膝関節症】慢性期における伸展制限の解剖と運動療法

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今回は、膝関節伸展制限に対する因子、解剖学、問診を基にした評価と治療に対する考え方をお伝えしたいと思います。伸展制限を正しく理解していないと改善しないことや逆に痛みを悪化させてしまいます。また、2次的に発生した全身のアライメント不良を改善しないと伸展制限の改善がなかなか進まず、膝の伸展制限が改善しても再度制限が発生する可能性があります。このようなことが起きないようにすることが大切になってきます。

1.問診からどこが痛いのかを考える

まずは臥位または長座位にて、膝関節を強制的に可能な範囲で伸展させていきます。その際にどこに痛みが生じ伸展制限を起しているのか、ということを問診で聴取していき予測を立てていきます。そして、それに対する治療や運動療法について動画や写真を用いながら解説していきます。*今回は、special test等の詳細な評価は省略させていただきます。

・膝の前面が痛い

膝蓋下脂肪体

図1:膝蓋下脂肪体の図

膝蓋下脂肪体は線維性滑膜に覆われた脂肪組織であり、膝蓋靭帯の深部の間隙を埋めています。本来の作用としては膝関節の関節角度の変化に応じて機能的に変形し、関節軟骨と膝蓋靭帯の摩擦を軽減する作用を担っています。膝蓋下脂肪体は疼痛の閾値が低いといわれており、膝関節の周囲の中でも特に疼痛に敏感な部位でもあります。動態としては膝屈曲位で深層に移動し、伸展位で表層に移動するとされている為、圧痛確認や治療には基本的に伸展位で行います。

動画2:徒手で脂肪体に対して

膝関節伸展位で膝蓋腱から内外側に分かれて触れることができ、脂肪体が逃げないように中央に向かって軽く圧迫しながら動きを出していきます。脂肪体に硬さがある場合には、疼痛が生じやすい傾向があると感じるため、硬さを取るように意識しながら行っていきます。

膝蓋上方組織-大腿四頭筋、膝蓋上脂肪体、膝蓋上嚢、大腿骨前脂肪体

図3:膝蓋上方組織

膝蓋上方組織には大腿四頭筋をはじめとして層になって脂肪体が存在します。ここに硬さが生じると膝関節伸展時に膝蓋骨の上方移動が阻害され、伸展制限や疼痛、大腿四頭筋の収縮不全に繋がることがあります。

動画4:自主練方法

自主練習方法として膝関節伸展位で膝蓋骨上方を手指で圧迫し、その状態から膝関節を屈曲方向へ動かすことで軟部組織の柔軟性を高めることができます。少しずつ部位を変えていくことで、どこに硬さがあるのかを把握してもらいながら行うことができます。

・膝の後面が痛い

膝窩組織

膝窩筋の痛みの発生メカニズム

後方軟部組織の硬さ➡脛骨の後方偏位➡膝窩筋過外旋による伸張ストレス(内旋作用がある為)➡筋内圧による痛み

脛骨の後方偏位=サギング

図5:サギング

本来は膝後十字靭帯の損傷をみるテストの1つではありますが、脛骨の後方偏位(落ち込み)をみることも出来る指標となっています。

実際に問題があると判断した場合のアプローチ

動画6:徒手で膝窩筋に対して

膝窩筋は深部に位置する筋であることから直接触診することが困難ですが、腓腹筋の内外側頭の間をわって圧をかけていきます。膝窩部よりやや遠位に位置している為、しっかりと位置を確認してアプローチを行う必要があります。

大腿二頭筋

実際に問題があると判断した場合のアプローチ

動画7:二頭筋自主練動画

ポイントとしては、さまざまな方向に対し膝の屈伸も併用して行っていきます。上記の膝窩部痛をはじめとする膝痛の多くは下腿の過外旋を呈していることが多い為、筋のリリースとともに過外旋の修正も図る必要があります。ここでは下腿の過外旋を修正する方法を解説していきます。

伸展方向への下腿内旋誘導アプローチ

動画8:補助あり

膝関節軽度屈曲位から大腿骨を外旋、脛骨を内旋方向に保ちながら最終伸展へと誘導していきます。

屈曲方向への下腿内旋誘導アプローチ

動画9:補助あり

屈曲方向に関しては可能であれば、腹臥位や座位等の様々な肢位で、自動屈曲動作に伴い内旋方向へと他動的に誘導していきます。

動画10:下腿内旋誘導の自主練(伸屈曲)

自主練習に関しては、つま先の方向を下腿内旋方向に誘導できるように指導し伸屈曲動作を行ってもらいます。*専門的な言葉の使用には注意

 

本来であれば正常な構造を持つ膝関節では,大腿骨の形状や靭帯の緊張などの解剖学的特徴によって,screw home movementと言われる膝伸展運動に伴い脛骨の外旋が起き、屈曲運動に伴い脛骨の内旋が起きるとされています。このことから下腿内旋誘導をしたい場合には、先に屈曲方向での内旋を獲得したのちに、伸展位で過外旋した膝関節を伸展位で内旋誘導アプローチをするとスムーズにいきやすいと実感しています。

 

ここまでは下腿の過外旋を修正する方法をお伝えしてきました。また、最終伸展域では強制的に伸展を促すことで完全伸展が獲得できることが多いと実感します。その際に脛骨後方偏位を伴う膝関節には注意が必要です。例としては下腿遠位に枕やタオル等を置き強制伸展をかけていく方法があります。しかし、サギングが出現している膝では下腿の後方偏位を強めてしまうことから逆効果になる可能性があります。

写真11:下腿遠位で伸展を促してしまう

よって最終伸展を促す方法として、下腿の近位の方まで枕等を設置したうえで強制伸展を促すと、脛骨後方偏位を防止しながら伸展を行うことができます。

動画12:下腿近位での強制伸展

・膝関節の側面が痛い

半膜様筋

半膜様筋は部分的に腓腹筋内側頭との線維性結合をしていることから、伸展制限になりやすいと考えられます。

図13:半膜様筋の図

また扁平足がある方は、歩行時のTst時に踵離地遅延が起こり背屈位となることで、半膜様筋と腓腹筋内側頭の摩擦負荷の増大が起こりやすくなってきます。

図14:扁平足の図

実際に問題があると判断した場合のアプローチ

動画15:半膜様筋介入動画

半膜様筋を保持した状態で、伸展を促していきます。その際にもやや下腿の内旋も入れていくと伸展がスムーズに起こりやすいです。

動画16:半膜様筋セルフケア

自身で半膜様筋を把持してもらい屈伸動作を繰り返していく*声かけてとしては、太ももの内側後面をもって動かしてください等のわかりやすい指示で行ってもらう。

動画17:腓腹筋ストレッチ

あらかじめ足関節の背屈を促した状態で、ストレッチを行ってもらうことで、スムーズなストレッチが行える印象があります。

・膝の全体が痛い

まずは男女差の話をしていきます。身体の構造上、男性の足は皮下脂肪が少なく、女性の足は皮下脂肪が多い傾向にあります

これに関しては特に個人的な意見とはなりますが、足の全体が痛いと訴える皮皮下脂肪が多い女性やむくみやすい女性はそれ自体が、可動域制限や疼痛の原因の一つになっている可能性があります。また皮下組織は浅筋膜と深筋膜の間に位置している為、皮下組織の影響が筋膜問題へと波及することも考えられます。

図20:皮下組織の図

臨床上は、徒手などを利用して下肢全体の皮下組織の柔軟性をだしたうえで、局所を評価・アプローチを行うと結果が得られやすいと感じています。可動域を広げていく、動きをスムーズにだしていくことを考えると、この皮下組織の影響を考えてアプローチを行うことは重要となります。

・股関節屈曲位から膝伸展制限

膝関節の問題以前に股関節屈曲拘縮が起き、膝伸展制限を呈している方も多くいます。臨床上は立位時に股関節が屈曲位となっている場合には、同側の膝関節も屈曲位を呈しバランスをとっています。これは反対側の膝関節にも影響し、負荷の増大に繋がり疼痛誘発の原因になることもあります。このような方に対するストレッチやトレーニング時には、骨盤の前傾や腰椎の前弯に注意し、進めていく必要があります。

写真21:股関節伸展ストレッチ

・膝関節伸展制限でみる姿勢

膝伸展制限が起きると体幹にも影響を及ぼし、側弯などにも繋がる可能性があります。逆に側弯が起因し、膝伸展制限につながる場合もあります。このような際にも体幹へのアプローチを忘れずに行う必要があります。ここでは詳しいアプローチは割愛しますが、基本的には側弯がおきている方向の逆方向に動きを促すことがポイントになってきます。

写真22:側弯エクササイズ

今回は慢性期における膝伸展制限の解剖と運動療法ということで紹介をしてきました。 問診を基に徒手での介入・ストレッチ・セルフエクササイズ・トレーニングを行い、伸展制限の改善に努めていくことで、疼痛の改善にも繋がってきます。

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【変形性膝関節症】慢性期における伸展制限の解剖と運動療法

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