こんにちは。
Sportipのサイエンスチームの小嶋です。
本日はトレーニングにおける考え方について紹介したいと思います。
ここで紹介したトレーニングの考え方を普段のトレーニングにも活かしていきましょう!
トレーニングとは?
広辞苑によると、トレーニングとは「訓練」や「練習」を意味する言葉であるとされています。
また、広辞苑によると、「訓練」とは「①実際にある事を行って習熟させること。②一定の目標に到達させるための実践的教育活動。訓育、徳育と同義にも用い、また技術的・身体的な場合にも用いる。」とされており、「練習」とは、「学問・技芸などの上達を目的に、繰り返して習うこと。習練。」と記載されています。
一方で、公認スポーツ指導者テキストによると、トレーニングとはある現象を深く追求し正解を出す探求作業ではなく、錯綜する諸要因をシステムアップしながら目標とするパフォーマンスを構築していく創造作業であるとされています(図1)。
これらのことをまとめると、トレーニングとは単純にエクササイズを行うだけでなく、目標設定を行い、計画を立案し、目標に向けたエクササイズを実施し、問題点を明らかにして、修正を行うことを繰り返していき、習熟や上達を目指す作業であると解釈することができます。
次の項では、トレーニングの手段を考える上で重要なトレーニングの原理・原則について紹介します。
図1. トレーニングとは(公認スポーツ指導者養成テキストより引用)
トレーニングの原理・原則
トレーニングの手段を考える上で、トレーニングの原理と原則を理解しておく必要があります。
この項では、トレーニングにおける3つの原理と6つの原則について紹介します。
トレーニングの原理
1.過負荷(オーバーロード)の原理
トレーニングでは、体に一定以上の運動負荷を与えることで機能が向上するという原理です。
つまり「いつもと同じ」では同じ結果しか出ないということです。
いつもより少し負荷を運動することが必要です。
2.特異性の原理
トレーニングで刺激した機能(内容)にだけ効果が現れるという原理です。
例えば、腹筋運動を行ったら腹筋の筋力がアップしますし、持久的な運動をしたら持久力がつきます。
3.可逆性の原理
トレーニングで得られた効果も、トレーニングを止めてしまうと徐々に失われてしまうという原理です。
トレーニングを止めてしまうと戻ってしまうということは、適切な運動を続けることの大切さを表しています。
トレーニングの原則
1.全面性の原則
「全身をバランスよく鍛えることが大事ですよ」という原則です。
鍛える部分が偏ると、全身のバランスが崩れて怪我や痛みの原因になりやすくなるので注意が必要です。
2.個別性の原則
「個人の特性や能力に合わせたトレーニングをしましょう」という原則です。
年齢、性別、体力、生活環境、習慣、性格、運動の嗜好など自分に合ったやり方がわかれば、効率的に体を鍛えることができ、継続意欲にもつながります。
3.意識性の原則
「トレーニングをするときの意識の持ち方によって効果が変わりますよ」という原則です。運動の内容、目的、意義をよく理解し、積極的に取り組むことが重要です。
そして、どこの部位を鍛えているのか意識しながら行うとトレーニング効果がアップします。
4.漸進性の原則
「コツコツ、焦らず少しずつレベルアップすることが大切」という原則です。
いつまでも同じ強度の繰り返しではそれ以上の向上は望めません。
一方で、運動強度・時間・頻度・技など急に激しく、難しいものに挑戦するのは怪我など危険を伴います。
少しずつ順を追って負荷や強度を高めることによって、適切に体を鍛えることができます。
5.反復性の原則
「継続は力なり…トレーニングは継続的に行うことでより大きな効果が得られます」という原則です。
体力の向上には少なくとも週3回以上、規則的に、長期間行うことが重要です。
技術面でも何度も繰り返し継続することで、神経系も強化され「自分のもの」とすることができます。
6. 専門性の原則
「競技や健康づくりなど目的にあった機能(筋力・筋パワー・筋持久力・有酸素能力・柔軟性など)を優先的に高めることが大切」という原則です。
例えば、競技種目ではその運動で使われる筋群を実際の活動様式(スピードが必要なのか持久力が必要なのか)に合わせて行う必要があります。
漠然とトレーニングメニューを決めるのではなく、上記のトレーニング原理と原則に基きトレーニングメニューを決めていきましょう。
次の項ではトレーニングの計画の立て方について紹介していきます。
トレーニングの計画の立て方
1日のトレーニングの計画の立て方
始めに、1日のトレーニングの計画の立て方について紹介します(今回は筋力トレーニングを対象とします)。
まず、ライフスタイルや体力に合わせてトレーニング時間と種目を考えます。
例えば、トレーニングに費やすことができる時間が1時間しか無い場合は、1時間で目的の筋肉を追い込むことができる種目を選択する必要があります。
また、1つの部位に対して1~3種目のトレーニング種目を行うことがお勧めです。
(例:肩を鍛える場合:ショルダープレス・サイドレイズ・リアレイズを行うなど)
トレーニング時間と種目が決まったら、次にトレーニングのセット法について考える必要があります。
セットとは、あるトレーニング種目で、特定の重量を連続して複数回反復する時、この一連の反復のことを指します。
筋力強化や筋肥大が目的の場合、1セットだけでは筋肉への刺激が不十分であり、通常はセット間にインターバル(休息)を挟みながら、何セットか繰り返しながらトレーニングを行う必要があります。
この時のセットの組み立て方(構成)をセット法と言います。
セット法には1つの種目だけ休息を挟んで複数セット繰り返す方法(シングルセット法)と、複数の種目を休息をとらずに連続して行い1セットと見なし、これを休息を挟みながら繰り返す方法(マルチセット法)があります。
シングルセットは初心者から熟練者まで用いられる最も基本的な方法で、技術を正確に習得したい場合や、その種目の最大筋力を高めたい場合に有効な方法になります。
一方で、マルチセットは複数の種目を連続して行うことにより、一定の時間内により多くの種目とセット数を行うことが可能であるため、トレーニングの時間効率を高めることができるトレーニング法になります。
また、マルチセット法には①拮抗筋(筋肉が力を発揮する際に反対の動きをする筋肉、例:腹筋と背筋など)の2種目を組み合わせる方法(スーパーセット法)、②3種目を組み合わせる方法(トライセット法)、③4~6種目を組み合わせる方法(ジャイアントセット法)、④7種目以上を組み合わせる方法(サーキットセット法)があります。
マルチセット法は組み合わせる種目数が多くなるほど、主なトレーニング効果が筋肥大や筋力の向上から筋持久力の向上へシフトします。
そのため、筋肥大や筋力の向上が目的であったら、スーパーセット法もしくはシングルセット法でトレーニングを行うようにしましょう。
1週間のトレーニングの計画の立て方
トレーニングに慣れてくると、トレーニング種目数やトレーニングの強度を増やす方が多いと思います。
そうすると、1回のトレーニングの強度が高くなり、体力(筋肉)の消耗も大きくなり、その疲労が十分に回復しないまま、次のトレーニング日を迎えてしまうという悪循環に陥るおそれもあります。
また、トレーニングを実施すると、筋肉は一時的に疲労しますが、一定時間をあけることで、その疲労は回復します。
その時トレーニングによる刺激が適切であったら、一時的に刺激を与える前よりも筋肉は高いレベルまで回復します。
この現象を超回復といい、トレーニング終了後48~72時間後に生じると言われています。
上記の理由から、筋肉の疲労を溜めずに、超回復を起こしながら、効果的にトレーニングを継続していくためには、全身の筋群を部位ごとに分割し、各部位を別々の日に週2~3回ずつトレーニングする必要があります。
この方法をスプリットルーティン(分割法)と言います。
1週間のトレーニング回数は増えますが、各部位のトレーニング回数は週23回であるため、質・量とともに内容の濃いトレーニングを行うことが可能です。
種目の分割法は部位で分けたり、大きな筋群(太ももの筋肉や胸の筋肉など)と小さな筋群(腕の筋肉や肩の筋肉など)で分けたりと個人の目的や体力レベルなどによって、いくつかパターンがあります。
初心者の場合には、上半身のトレーニングを行う日と下半身のトレーニングを行う日の2つに分けるのがお勧めです(図2)。
そして、トレーニングに慣れてきたら、トレーニングの種目数を増やすとともに分割の仕方を増やしていきましょう。
図2. 上半身と下半身の2分割のトレーニング例
1年間のトレーニングの計画の立て方
スポーツを行っている方にとても重要な1年間のトレーニングの計画の立て方についても紹介します。
1年間同じ内容のトレーニングを続けていれば、運動パフォーマンスや筋力は向上し続けるでしょうか?
答えはNoです。
おそらく同じ内容のトレーニングを続けていると、パフォーマンスが伸び悩んだり、怪我をすると思います。
そのため、トレーニングの内容、量、強度などを数ヶ月単位で計画的に変更する必要があります。
この計画的に変化させるプログラムデザインの戦略をピリオダイゼーションと言います。
この項ではピリオダイゼーションにおける期間の分け方とそれぞれの期間でどのようなトレーニングを行うと良いかについて紹介します。
準備期
準備期は、通常最も長く、試合がなく、競技特異的な技術やゲーム戦略の練習の回数が限られている時期になります。
この時期に最も重視するのは、より高強度のトレーニングに耐えられるように、コンディションの基礎レベルを引き上げることです。
そのため、この期間は体力要素を向上させるトレーニングを主に行います。
準備期は3つの段階に細分化することができ、段階を踏んでトレーニングを行います。
準備期の第1段階は筋肥大・持久力段階になります。
この段階では、低強度で量の多いトレーニングから行っていきます。
この段階の目標は、その次の段階と期間で行われる、より強度の高いトレーニングに耐えられるよう、筋を肥大させることと持久力を向上させることです。
そのため、この段階では競技や普段用いている強度よりも低い強度で長い時間もしくは高回数行うトレーニングを実施します。
準備期の第2段階は基礎筋力段階です。
この段階では、競技の主となる動作に不可欠な筋群の筋力増強を目標としています。
そのため、この段階では筋肥大・持久力段階よりも量を減らす代わりに、強度を増加させたトレーニングを実施します。
準備期の第3段階は筋力・パワー段階です。
この段階では、基礎筋力段階よりもさらに強度を上げたトレーニングを実施したり、競技で必要となる強度に近い強度でトレーニングを実施することによって、試合で運動パフォーマンスを発揮するのに必要な筋力やパワーを向上させることを目指します。
一般的に、それぞれの段階は2〜4週間行われます。
目標や選手のコンディションに合わせて、上記の期間を調整しましょう。
第一移行期
第一移行期は準備期と試合期の間の期間に設けられ、準備期の量を重視したトレーニング内容から、試合期の高強度のトレーニングへ移行する前の小休止の期間とされています。
この時期は試合期が始まる前の1週間とされることが多く、低強度で少量のトレーニングが行われます。
試合期
試合期の目標は、準備期よりもトレーニング強度をさらに増大させるとともに、トレーニング量をさらに減少させることで、筋力とパワーをピークに高めることです。
この期間は筋力やパワーといった身体コンディショニングに割く時間が減少するのに比例して、テクニックやゲーム戦術に費やす練習時間が増加します。
試合期では一般的に非常に高強度で少量のトレーニングが行われます。
通常、この強度でトレーニングを行い、筋力やパワーをピークの状態で維持できるのは約3週間です。
一方で、3週間以上高強度のトレーニングを行い、ピークの状態を維持しようとすると、オーバートレーニング症候群になってしまい、運動パフォーマンスが落ちてしまったり、怪我のリスクが高まります。
そのため、試合期が競技シーズン全体もしくは数ヶ月に及ぶ競技の場合は、中程度の強度と量で行うトレーニングプログラムを挟むことによって、筋力やパワーの低下を抑える必要があります。
第二移行期
試合期と次の準備期との間に第二移行期の期間が設けられます。
この時期は積極的休養(アクティブレスト期間)とも呼ばれ、傷害のリハビリテーションや身体的・精神的な休養を取ることを目的とし、1~4週間設けられます。
この時期では、完全に休むのでは無く、軽い強度の運動をレクリエーションレベルの活動を行います。
上記で紹介した準備期から移行期までを繰り返しトレーニング計画を立案しましょう。
また、試合などに出場せず、趣味や健康の増進目的でトレーニングを行われている方も、上記で紹介したピリオダイゼーションを取り入れることをお勧めします。
例えば、トレーニングを始めた頃はトレーニングの強度や量を低い状態から始めていき、だんだんと強度と量を増やしていき、慣れてきたら強度を重視したトレーニングを行います。ピリオダイゼーションを取り入れたトレーニングを行うことによって、トレーニング効果の伸び悩みの解消や怪我の防止に繋がることが期待できます。
トレーニング計画を立てるコツ
最後に、トレーニング計画を立てるコツについて紹介します。
トレーニング計画を立てる上でまず重要なのがニーズ分析をすることです。
ニーズ分析とはトレーニングの目的や目標を明確にするとともに、体力レベルや筋力の現状を明らかにすることです。
ニーズ分析を行うことによって、目的や目標を達成するための課題を明らかにし、その課題を解決するためのトレーニング種目と計画を立てることができます。
例えば、上半身の筋肉をつけたいトレーニング初心者の方に対して、ニーズ分析を行い、背中の筋肉が弱いというのがわかったら、まずは背中のマシンを用いた筋トレ種目であるラットプルダウンやシーテッドローイングを行っていき、トレーニングに慣れてきたら、背中を鍛えるバーベル種目であるデッドリフトやバーベルローイングを行うなどのトレーニング計画を立てることができます。
一方で、トレーニング計画を初心者の方だと作成するのはとても難しいと思います。
そこで、役に立つのが弊社のSportip Proとリハケアのトレーニングメニュー作成機能です(図3)。
弊社のSportip Proとリハケアのアプリでは、姿勢解析や歩行解析を行い、その結果に基づき、姿勢や歩行を改善するトレーニングメニューと1週間のトレーニング計画を自動的に作成してくれます。
また、トレーニングのやり方は動画で見ることが可能であるため、トレーナーの方がいなくてもやり方を学ぶことができます。
是非、Sportip Proとリハケアを用いてトレーニングを行っていきましょう!
図3.トレーニングメニュー作成機能
採用について
Sportipはヘルスケア・フィットネス・スポーツの運動指導を変革するため、研究開発から複数のサービスを展開していきます。そのためにも、理学療法士を始め、医療現場で活躍している方々の経験やスキルが必要です。自身の臨床経験を生かして、現場で感じた課題意識をもとにプロダクト開発に携わってみたい、動作解析を現場でもっと手軽に使えるようにしたい、という思いのある方を募集しています。
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