理学療法士(PT)は、患者のリハビリテーションや運動機能の回復をサポートする重要な役割を担っています。本記事では、福岡整形外科病院で15年以上のキャリアを持つ藤田さんにインタビューを行い、理学療法士としての道のりや経験、そして日々の業務に対する情熱についてお話を伺いました。

特に注目すべきは、藤田さんがキャリア10年以上を経てから臨床研究を始めた点です。多くのPTが悩むこの節目に、藤田さんの挑戦は異彩を放っています。学生時代の苦労や現場での実践、そして研究に対する取り組みを通じて、PTとしての成長と自己研鑽の重要性を語っていただきました。これからPTを目指す方々や現役のPTの方々にとって、藤田さんの経験は大きなインスピレーションとなるでしょう。
はい、よろしくお願いします。福岡整形外科病院の藤田と申します。
理学療法士(以下PT)になろうと思ったきっかけは何ですか?
高校時代の職業パンフレットを見て、PTがいいなと思ったんです。中学の職業体験でPTを見学したことや、ラグビー部で友達が怪我した経験も影響しました。
そうです。ラグビー部で友達が前十字靭帯を切ったりして、PTの仕事に興味を持ちました。
あの学校は福岡県内の学校に入って普通に真面目にストレートでPTになられたんですか?
一応ストレートはストレートなんですけど、昼間の学科を落ちて夜間部だったんですよ。6時から9時までの夕方の。
じゃあ昼間はバイトしたり遊んだりして、夜学校に行ってまたそこから遊んで…自由時間が多いじゃないですか。
そうですね。6時から9時まで学校行って、9時以降また遊んでました。飲みに行ったり遊んだり、バイトしたりしてました。
バイトはたくさんしましたよ。苗木屋さん。久留米の方では苗木が有名なんですよね。植木とか。
苗木って「なえぎ」ですね。スポーツブランドのナイキだと思いました。
みかんの木を収穫して出したり、薬局やレストラン、引っ越し、ホテルの仕事もやってました。7〜8個ぐらいのバイトを単発でいろいろ経験しましたね。
現場に立ってから、PTってやっぱり人と人との関わりじゃないですか。レストランでビールがなくなったら「ビールどうですか?」と気遣うように、患者さんにも「大丈夫ですか?」と気遣うことが大事だと思います。そういった社会勉強にはなりましたね。
就職しようと思った時、福岡整形外科で就職したんですよね?
福岡整形外科以外にも病院があったと思いますが、選んだ基準は何ですか?
整形が見たかったんです。同級生が「こんなところ出てるよ」と教えてくれて、ダメ元で受けたら合格しました。基準はただ単に整形手術後が見たかったという純粋な気持ちです。
高校生の時の気持ちはそのまま変わらず、スポーツ整形や整形外科の分野に行こうと思ったんですね。
病床数175床で、全部整形です。手術件数は年間2100〜2200件で、すべての関節に対して専門医がいる病院です。主に力を入れているのは膝ですね。人工関節や膝の手術が多く、股関節の手術も年間100件ぐらいあります。
そうですが、手術は平日しかしていないので、1日7〜8件やっていることになります。
リハビリを行う方は、基本的に手術後の人たちが多いんですか?
手術後がメインですが、当院では手術前のリハビリにも力を入れています。人工関節などの疾患による手術前リハビリを行ってから手術に入ることも多いです。
例えば、手術前に関節可動域が悪ければ改善しますし、手術後に行う筋力増強運動の練習や習慣づけをします。手術後の経過説明や、どのくらいで回復するかのイメージを持たせる説明も行います。不安を減らして手術に臨めるようサポートしています。
藤田さんは整形外科で15年やっていると思いますが、若い頃はどのように勉強していましたか?
技術の勉強会に積極的に参加していました。地元福岡で行われる新人向けの勉強会やクリニック単体の徒手療法の勉強会などに参加していました。
当時の課長は「目的が一緒なら何をしてもいい」と言ってくれました。例えば退院時に120度以上曲がってADLに問題がなければ、患者さんが不快な思いをしなければどんなアプローチでも大丈夫でした。自由に育ててくれました。
学会や論文の発表もされていますが、入職した時からやっていたんですか?
やり始めたのは田中創先生が来てからです。コロナ前くらいからですね。研究を始めたのは3年前ぐらいで、いろいろ教えてもらいながらやり始めました。
臨床経験を重ねてから研究を始めるのは大変そうですね。マインドを変えるのは難しかったですか?
大変でしたね。やったことがなかったので。でも、若い子たちには早ければ早い方がいいと言いたいです。自分の中での経験値的な判断能力はありましたが、それを数字や客観的に表さないといけないと思っていました。田中創先生が協力してくれて形にできたのは良かったです。
今メインでやっているのが前十字靭帯再建術の定期評価で、どれだけパフォーマンスと関連しているかを調査しています。術後早期から見ているので、その状態や術後3ヶ月の筋力回復しやすい人としにくい人の特徴などを調査していきたいです。
福岡整形外科は整形の学会で必ず何題か発表されていますね。演題の取り合いになるんですか?
いや、そんなことはないですね。発表する人は1/3〜1/4くらいです。やりたい人が自主的にやっています。
発表しない人たちにも手伝ってもらわないといけないですね。マネジメントには秘策がありますか?
うちは「この疾患が来たらみんな同じ評価をしよう」と共通認識を持って取り組んでいます。例えば人工膝関節が来たら術前はこの評価、術後1週間はこの評価、術後1か月はこの評価、退院時はこの評価というようにルーチンで決めています。評価の練習もして、みんなで同じ評価をします。
そうですね。当院は仕組みを作っていて、人工膝・股関節、腱板、五十肩、腰、アキレス腱、ACL、半月板、コーレス骨折など、約10種類の疾患で同じ評価をしています。評価が大事な理由を一つ一つ説明して理解を得て、その中で決めてやっています。数年ごとにチームを作り、疾患ごとに評価を見直し、アップデートしています。
仕組み化が勉強になりました。若いセラピストたちに「こういうことをやっといた方がいいよ」というアドバイスはありますか?
若い頃から勉強会に参加して、他の施設のセラピストがどんなことを考えているか、どんなことをやっているかを知ることが大事です。自分の施設に偏らず、新しい考えを取り入れることが重要です。
そうですね。学会でもいいですし、近所のクリニックの人たちと飲みに行くのもいいです。
私が藤田さんと出会ったのも学会ですからね。学会というか飲み会というか。
最後の質問ですが、藤田さんにとってプロフェッショナルとは?
常に最高の状態で、最高のものを提供できることです。昨日より今日が一番いいものを患者さんに提供できるように日々頑張りたいと思います。
藤田先生、今日はインタビューありがとうございました。

このセミナーでは、頸部痛(神経根症、非特異的頸部痛、ストレートネックなど)を有する患者様への効果的な評価や治療法を学び、理学療法士、作業療法士、柔道整復師としてのスキルをさらに深めることができます。
具体的な内容としては、頸部痛の原因となる頸部の評価方法、評価から基づく効果的な徒手療法・エクササイズの選択、そして患者様への適切な自主運動の選定などアドバイスの提供方法などを学びます。
さらに頸部の評価や介入に加えて、姿勢に対しての評価・介入も提示させて頂きます。
*アーカイブ配信はプレミアム会員限定となります。
プログラム
1.頸部の解剖学、運動学
2.頸部痛を有する疾患(神経根症、非特異的頸部痛、ストレートネック)
3.頸部の評価、運動療法、理学療法アプローチ
4.姿勢に対する評価、運動療法、理学療法アプローチ
講師:
福岡整形外科病院 リハビリテーション科
藤田 慎矢(理学療法士)
概要
【日時】 2月13日(木) 20:00~21:30
【参加費】無料
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。
申し込み▶︎▷https://forms.gle/ntFWr6rs5zszKFgTA