以前より整形外科的テストは多くの治療現場で欠かせないツールとして認識されていますが、その実践的な使用方法については十分に理解されていないことが多々あります。本書『適切な臨床に導くための 整形外科徒手検査法ナビ−検査の選び方とエビデンスに基づくアプローチ』は、この問題に対して明確な答えを提供しています。
知識としての整形外科的テストから臨床応用への橋渡し
本書を読んで強く感じたのは、多くの治療者が整形外科的テストの知識を持っていても、実際の臨床でそれをどのように活用すべきかがブラックボックス化しているという現実です。技術的な側面もさることながら、テストの目的や得られた結果の解釈が不十分であることが問題でした。しかし、本書はこのような問題を丁寧に解きほぐし、実際の臨床場面を想定した具体的な流れの中で、整形外科的テストの導入方法を詳細に解説しています。編集の松村氏が序文で述べているように、本書は前作『適切な判断を導くための整形外科徒手検査法』の続編として位置づけられ、整形外科的テストを臨床現場でいかに効果的に活用するかを詳細に解説しています。
特に注目すべきは、整形外科的テストの「何のために行うのか」という基本的な問いかけからスタートし、その結果をどのように解釈し、それを基にどのような治療を選択するかを順を追って説明している点です。これは、多くの治療者が持つであろう疑問を解決し、臨床における実践力を高めるための大きな助けとなるでしょう。
専門性と実用性を兼ね備えた一冊
また、本書が非常にユニークなのは、整形外科的テストに焦点を絞り、それに基づく治療法の選択過程を症例を通して解説している点です。これまでにも症例をベースにした書籍は存在しましたが、整形外科的テストにこれほど特化した書籍はほとんどなく、まさに臨床現場で即戦力となる内容に仕上がっています。
もちろん、整形外科的テストだけで評価が完結するわけではありませんが、日々の臨床において正しい整形外科的テストを導入するための基本的なエッセンスを学ぶには最適な書籍です。
序文からの一節
本書の序文には、「臨床場面での実践的な活用に焦点を当て、その具体的な手法を詳細に記述している」と記されています。この言葉が示す通り、本書は辞書的な役割を果たす前作に続く形で、整形外科的テストを臨床でいかに有効に使うかを深く掘り下げた内容となっています。最新のエビデンスに基づき、写真やイラストを駆使した視覚的な解説も加わり、読み手にとって非常に理解しやすいものとなっています。
まとめ
『適切な臨床に導くための 整形外科徒手検査法ナビ−検査の選び方とエビデンスに基づくアプローチ』は、整形外科的テストの知識を持つだけでなく、それを臨床現場でいかに活用するかを具体的に学ぶための一冊です。整形外科的テストを正しく理解し、その結果を基にした治療法の選択ができるようになるための道筋を明確に示しており、臨床家にとって欠かせないガイドとなるでしょう。
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【目次】
1章 総論 松村将司,栗原 靖
1 整形外科徒手検査法とは
2 本書の使い方
2章 足関節 越野裕太
1 足関節外側靱帯損傷
「足関節が不安定な感じがあり,捻ると足首の外側が痛い」
3章 膝関節 栗原 靖
1 膝関節内側側副靱帯損傷
「膝の痛みがあって,しゃがむような動きができない」
2 膝蓋大腿関節症
「ランニング中,膝の痛みやグラグラする感じがある」
4章 股関節 平尾利行
1 股関節唇損傷「デスクワークをしていると右鼡径部が痛くなる」
2 変形性股関節症「歩くときに体重をかけると痛む」
5章 骨盤 半田 瞳
1 骨盤帯痛「前屈みになると腰が痛い」
6章 肩関節
1 腱板損傷「腕を動かすと肩に痛みが出る」 相馬章吾,坂 雅之
2 前方不安定症(肩関節前方脱臼)
「手を上げたり肘を後ろに引くと肩に不安感がある」 坂 雅之
7章 肘関節
1 肘外側痛(上腕骨外側上顆炎または外側上顆症)
「物を持つ・握ると肘の外側が痛い」 坂 雅之
2 肘関節内側側副靱帯損傷
「肘の内側が痛くて投げられない」 相馬章吾,坂 雅之
8章 前腕・手関節
1 手関節尺側部痛(TFCC 損傷・尺側手根伸筋腱鞘炎)
「捻る動きや握る動作で手首が痛い」 坂 雅之
9章 腰椎
1 腰椎椎間板ヘルニア
「屈むと腰と足が痛い/しびれる」 渡邊勇太,三木貴弘
2 非特異的腰痛
「前屈みの姿勢が続くと腰が痛くなる」 近藤 湧,三木貴弘
10章 頚椎 松村将司
1 頚椎症性神経根症「上を向くと腕がしびれる」
2 胸郭出口症候群
「腕を挙げると肩から手にかけて痛くて,手がしびれる」
11章 前庭
1 良性発作性頭位めまい症
「頭を動かすとめまいがする」 松村将司,近 裕介,那須和佳奈