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ランニング障害を減少させるランニングシューズの選び方

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靴がランニング障害に繋がる?

ランニングは多くの方が手軽に始められる運動のひとつです。

ですがオーバーユースによるランニング障害や身体機能に合わない靴選びによるトラブルが多く起きています。最近では厚底シューズやカーボンシューズなどにより痛みを訴えるケースも見受けられます。

ランニングにおける靴選びはランニングによる身体への負荷を軽減する重要なアイテムです。ランニングシューズはランナーのパフォーマンスや快適性だけでなく、障害発生のリスクにも大きく影響します。不適切なシューズは足だけでなく膝や腰などにも過剰なストレスを与え、痛みや障害を引き起こす可能性があります。

ランニング障害の多くは「オーバーユース(過使用)」によるものとされておりますが、ランニングフォームだけでなく、靴のフィット感、靴の機能も大きな要因になると言われています。

今回は弊社で行なっている靴選びやインソール対応(バランスケア対応)での臨床経験をもとに、みなさんにランニングにおける障害と靴の関係性についてお伝えさせていただきます。また実際の靴選びのポイントもお伝えしますので、臨床で競技レベル問わずランナーによく対応する方は最後まで記事をご覧ください!

<ランニングシューズ解説動画>

ランニング動作で負担がかかるタイミング

ランニングのサイクルはサポート期(立脚期)とリカバリー期(遊脚期)に分けられます。

下肢のトラブルは動作の特性上、サポート期で見られることが多いです。(1)

サポート期は3期に分けられ、足底の一部が路面に接触する瞬間のfoot-strike、足部が路面に固定され体重支持をして、踵部が路面から離れるまでのmid-support、足趾が路面を離れるまでのtakeoffに分けられます。

<横江清司 バイオメカニクスからみたランニング障害より引用>

足部の接地パターンによっても分類があり、一般的なパターンとして後足部接地(rearfoot strike;以下RFS)が98.12%と言われています。また前足部接地(forefoot strike;以下FFS)もあるが、これはケニアやエチオピアのトップランナーがこの走法を選択していることが多く、ケニアのマラソン世界記録保持者もFFSであったと報告があります。(2)(3)

サポート期では体重支持時の荷重分散と前方駆動力の発揮に、距骨下関節が重要な役割を担います。回外運動に伴う踵骨内反位でfoot-strikeをし、その後mid-suportにかけて回内運動が起こり、mid-supportでは足部アーチの弛緩によって床反力を分散させます。takeoffにかけて回外運動をして剛性を増し、推進力を発揮させやすくします。

ランニング障害は、このようなサポート期で本来行われるはずの距骨下関節の動きや足部のアーチ機能が発揮できないことで隣接関節や膝関節や股関節、体幹関節に負担をかけてしまうことで起こります。

ランニング障害を予防するためには、距骨下関節の過剰な回内・外の動きの防止、アーチ機能(トラス・ウィンドラス機構)が発揮しやすい環境を作ることが重要です。身体特性に応じたランニング方法の選択も障害予防には重要と考えられますが、その1つの方法として今回ご紹介させていただく、ランニングシューズの選択も重要な要素になります。

ランニングに多い障害と靴の関係

ランニング障害で多く見られる障害

①足底筋膜炎

②アキレス腱炎

③ランナー膝(膝蓋大腿痛症候群)

④シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎) 

⑤疲労骨折(中足骨、脛骨などに見られる)

⑥関節痛(膝関節痛、腰痛)

などが挙げられます。

上記の疾患に靴がどのように影響しているのか

・オーバーサイズ

・クッション性の不足

・ドロップの高低差(踵〜つま先への高低差) 

・靴の摩耗

などが影響しています。

オーバーサイズ

オーバーサイズは、靴の中に空間が生まれることで前後左右への動揺や捻れの動きを強めてしまいます。これにより、足底筋膜への負担や左右への動揺が近隣関節~膝関節、股関節、体幹関節の負担に繋がります。さらに大きすぎる靴は靴本来にあるアーチサポート機能を発揮することができません。

クッション性の不足

ランニング時に体重を支持する下肢には、垂直方向で体重の約3倍の反力があり(14)、適切なクッション性がない靴は衝撃吸収が不十分となり、身体への負担が高まります。

ドロップの高低差

踵と爪先の高低差の事を『ドロップ』と言います。

このドロップの大きさはランニング時の足の着地の仕方やランニングフォームに影響を及ぼします。ヒールドロップが大きすぎるシューズは、アキレス腱に過度のストレスをかけることがあります。逆に、ヒールドロップが低すぎても足首やふくらはぎに負担をかけるため、適切な高さが求められます。

ランニングシューズの選び方

これらの障害を予防するためには、靴の選び方が非常に重要です。次に、ランニングシューズを選ぶ際の具体的なポイントを見ていきます。

以前の記事で靴の構造や歩きに良い靴のポイントについてお伝えしていますが、ランニングシューズも基本的な構造やポイントは同じになります。

ランニングシューズを選ぶポイント

①フィット感を高い靴(サイズとウィズ、足の形状を合わせる)

②クッション性

③ヒールドロップの考慮

④硬度のあるヒールカウンター

⑤シャンクの有無

①フィット感(サイズとウィズ、足の形状を合わせる)

シューズのフィット感は、快適さと障害予防の両方に直結します。

足長だけでなく足幅(ウィズ)や足の形状に合ったシューズを選ぶことが重要です。

ウィズが狭すぎるシューズは足指が圧迫され、外反母趾や爪の障害を引き起こし、広すぎると足が靴の中で動いてしまい、靴擦れや筋肉の過度な緊張を招く原因に繋がります。

詳しくは8月の記事もご覧ください。

②クッション性

ランニングシューズのクッション性は主に『ミッドソール』の素材や厚みが重要だと言われています。 基本的には厚めのクッションが適しており、一般的にミッドソールが厚く(高く)、つま先にかけて薄く(低く)なる靴はクッション性の高さや重心移動が楽に行えるメリットがあります。逆に厚すぎる靴はクッション性は上がりますが、逆に不安定性も増すことを知っておいてください。

③ドロップの考慮

クッション性の部分で少し触れましたが、踵とつま先の厚みの高低差を『ドロップ』と言います。ドロップの高さは靴によって様々なものがありますが、今回は高い、低いの2つに分けて解説していきます。

【高ドロップ】

・走法としては、踵着地になりやすい

・クッション性が高く、衝撃吸収に優れている

・踵から着地して蹴り出しまでの重心移動がスムーズなため筋肉への負担を減らしてくれる

【低ドロップ】

・走法としては、中足部や前足部で着地になりやすい、自然な走り方に近くなる(短距離走向き)

・高ドロップと違い自分の筋力で重心移動をしていく必要があるため、ふくらはぎなどの筋やアキレス腱に負荷がかかりやすくなる

自分のランニングスタイルや競技レベル、既存の障害を考慮して、適切なドロップのシューズを選ぶことが大切になります。

④硬度のあるヒールカウンター

ヒールカウンターは、ランニングシューズの踵を補強している部分になります。

foot-strikeの距骨下関節の過回内、外を抑制することで筋肉の余計な負担を軽減させます。

⑤シャンクの有無

シャンクはミッドソール(中底)部分に配置される硬めの補強材で、主に足のアーチ部分をサポートし、足部の捻れや過度の曲がりを防ぐ役割があります。

厚底シューズやカーボンはどう影響するか

近年、厚底シューズやカーボンプレートを使用したシューズが流行していますが、それらがランニングや障害に与える影響についても考慮する必要があります。

①厚底シューズ

厚底シューズは特にマラソンなど長距離ランニングで人気が高まっています。

厚いクッションが衝撃を吸収し、足や膝への負担を軽減する効果が期待されています。

しかし、厚底シューズを使用することで足裏の感覚が鈍くなり、着地のコントロールが難しくなることも指摘されています(4)。これにより、特にスピードを出す場面ではフォームの崩れや負傷リスクが増加する可能性があります。

②カーボンプレート

カーボンプレート入りのランニングシューズは、エネルギーのリターンを増加させ、効率的な推進力を提供します。特にエリートランナーの間で、記録を狙うために多用されています。

しかし、カーボンプレートによる推進力の増加は、ランニングフォームや筋肉に新たなストレスをもたらすことがあります(5)。これにより、ふくらはぎやアキレス腱の過負荷による障害が発生するリスクが増える可能性があります。

さらに、カーボンプレート入りのシューズを使用する場合は、その特性に慣れるための適応期間が必要です。急に使用したり、筋力や関節可動域が見合っていない状態で使用したりすると、筋や関節に過度の負担がかかり、ランニング障害を引き起こす可能性があります。

リハラボBayWalkingでは靴とインソールを学べます

いかがだったでしょうか?ランニングシューズは、単に快適さやパフォーマンス向上を追求するためのアイテムではなく、ランナーの健康を守る重要なツールです。靴がランニング障害に与える影響を理解し、適切なシューズを選ぶことで、足や膝、腰への負担を軽減し、怪我を予防することができます。

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参考文献

1.横江清司:バイオメカニクスからみたランニング障害.臨床 スポーツ医学 1: 143-148, 1984.

2.肥田ら:足部接地パターンがランニングにおける推進特性に及ぼす影響 理学療法科学 

   31(6):815–818, 2016

3.善家 賢:42.195kmの科学.角 川書店,東京,2013, pp98-99.

4. Hoogkamer, W., et al. "A comparison of the energetic cost of running in marathon 

    racing shoes." *Sports Medicine*, 48(4), 1009-1019.2018.

5. Frederick, E. C., et al. "Factors affecting running economy." *Sports Medicine*,    

    3(2), 123-130.1986.

ランニング障害を減少させるランニングシューズの選び方

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