はじめに
膝関節の評価において、荷重位と非荷重位の違いを適切に把握することは、より精度の高い評価と効果的な介入につながります。特に近年、膝の疼痛に対する評価の精度向上が求められる中で、この視点の重要性が増しています。
臨床でこのような場面に遭遇したことはありませんか?
☑︎荷重位では膝が外旋しているのに、非荷重位では正常な場合、どの組織が影響しているのか?
☑︎非荷重位では伸展可動域に問題がないのに、荷重位では伸展制限が出るのはなぜか?
荷重位と非荷重位では、関節や筋の機能が異なるため、どちらか一方の評価だけでは疼痛や動作異常の本当の要因を見落とす可能性があります。逆に、両者を正しく評価できれば、より適切なアプローチが可能になり、運動機能の改善につながります。
膝関節の評価では、
☑︎荷重位 → 動作全体の崩れや疼痛の要因を分析
☑︎非荷重位 → 関節構造や可動域の問題を特定
この2つの視点を組み合わせることで、より精度の高い評価と適切な介入が可能になります。
では、現在行っている評価基準は、最適なアプローチにつながっているでしょうか?
本記事では、見落としがちなポイントやより的確な評価を行うための具体的な方法を解説します。
1. 荷重位の特徴と評価ポイント
1-1 荷重位の特徴
荷重位では、膝関節は重力と体重の影響を直接受けるため、関節構造や筋・靭帯に大きな負荷がかかります。この状態で適切に機能しないと、全身の運動連鎖が崩れ、疼痛や動作の不安定性につながります。
■重要なポイント
<関節内圧と負荷の集中>
・歩行時:体重の 2~3倍 の負荷
・階段降り時:体重の 4~5倍 の負荷
➡ 半月板や関節軟骨へのストレスが増大し、疼痛の原因となる。
<動的安定性と運動連鎖>
・股関節や足部の影響が大きい
(例:股関節外転筋の弱化で Knee-in Toe-out が生じ、膝内側に負担が集中)
・全身のアライメントを含めた評価が必須
<筋と靭帯の協調性>
・静止時 → 靭帯の支持力が重要
・動作時 → 上記に加えて筋の協調が求められる
➡ 大腿四頭筋やハムストリングスの機能低下 があると、膝の安定性が低下する。
1-2 荷重位の評価ポイント
■動作観察
・立位、歩行、階段動作 などでの膝の動きを評価
<よくみる動作パターン>
☑︎Knee-in(ニーイン)
☑︎Lateral thrust(ラテラルスラスト)
☑︎過伸展(Hyperextension)
☑︎伸展不全(Extension lag)
■疼痛誘発テスト
・階段降りやしゃがみ込みで痛みの部位とタイミングを特定
・臨床では、階段降りで疼痛が起こることが多い
・しゃがみ込み動作は、膝関節の深屈曲だけでなく、足関節の背屈可動域、股関節の柔軟性、体幹の安定性 も必要とするため、動作全体の評価に適している。膝関節単体の評価だけでなく、他の関節との協調性を考慮することが重要
・関節面への偏った負荷や、軟部組織のストレスが原因になることが多い。
■動作連鎖の評価
・股関節(下行性運動連鎖)と足部(上行性運動連鎖)の影響を分析
ー例ー
「股関節外旋筋が弱いと、大腿骨が過剰に内旋し、結果としてKnee-in(ニーイン)を引き起こしやすい。」
「股関節外転筋が弱いと、骨盤が外側へシフトし、膝に外反ストレスがかかり、Lateral thrust(ラテラルスラスト)が生じる可能性が高くなる」
※特に中臀筋が弱いと、片脚立ちや歩行時に骨盤が外側へシフトしやすくなり、膝に外反ストレスが加わる。その結果、膝が外方へ押し出されるような動きが発生しやすくなり、荷重時にLateral thrustが生じる可能性が高くなる。
「距骨の過度な外転(過回内)があると、通常は下腿の内旋が促される。しかし、特定の条件下では、下腿が代償的に外旋する場合がある」
※一般的に、距骨の過回内は下腿の内旋を伴うが、重度の扁平足や荷重時のアライメント不良では、代償的に下腿が外旋するケースもよく見られます。
これらのことから、運動連鎖は『逸脱(正常なパターンからのずれ)』する場面があります。
運動連鎖は一般的に『ある関節の動きが、他の関節の動きに影響を及ぼすメカニズム』ですが、臨床では異常なパターンや代償的な運動連鎖が発生することがあります。運動連鎖が逸脱すると、膝に過剰なストレスがかかり、結果として痛みや機能障害を引き起こすリスクが高まります。
よって臨床では、運動連鎖を単なる『理論』ではなく、『実践的な動作評価』として活用することが重要です!
では、次に非荷重位ではどのような違いが見られるのでしょうか?
2. 非荷重位の特徴と評価ポイント
2-1 非荷重位の特徴
非荷重位では、体重の影響を受けずに、膝関節の構造や可動性を正確に評価できます。
非荷重位での問題は、荷重時の疼痛や不安定性につながることが多いため、両者を関連づけて評価することが重要です。
■重要なポイント
<関節可動域(ROM)の評価>
・他動的に膝を屈曲・伸展させ、関節包・靭帯・筋の緊張を確認。
・滑膜炎や軟部組織の硬化がある場合、可動域が制限される。
<スクリューホームムーブメント・下腿回旋可動性の評価>
・膝伸展時の脛骨外旋、屈曲時の内旋が適切かを確認。
➡ 異常があれば、関節内の問題が疑われる。
特に、下腿の過外旋は膝関節痛と強く関連する。
<膝蓋骨の可動性の評価>
・膝蓋骨の上下左右の動きを評価し、可動域や痛みを確認。
・可動性が低下すると、膝蓋大腿関節への負担が増大し、特に荷重負荷が大きい階段降りで疼痛が生じやすい。
そのため、モビライゼーションや大腿四頭筋のリラクゼーションが有効な介入となる。
➡ 膝蓋骨の可動性を正確に評価し、荷重位の動作分析と関連づけることが重要。
2-2 非荷重位の評価ポイント
■他動的可動域の測定
・屈曲伸展の可動域を測定し、回旋の程度も評価
・エンドフィールを確認し、可動域制限の原因を見極める
■エンドフィールの分類(可動域制限の要因)
-神経性・筋性 → 筋スパズムによる制限
-関節軟骨性 → 軟骨損傷・摩耗が原因
-関節包内・外軟部組織性 → 関節包・靭帯の癒着
-筋の防御性収縮 → 代償的な筋緊張
-痛み(無抵抗性) → 炎症による制限
➡ これらを把握し、適切な運動療法の方向性を決定することが重要!
■靭帯安定性テスト
・Lachmanテスト・内外反ストレステストを用いて、靭帯の支持性を評価
・非荷重時に靭帯の緩みがあれば、荷重時の不安定感につながる可能性が高い。
■膝蓋骨の動きの確認
・膝蓋骨の上下左右の動きを評価し、可動域制限や痛みの有無をチェック。
・膝蓋大腿関節の問題が疑われる場合、軟骨損傷の可能性も考慮。
3. まとめ
膝関節の評価では、荷重位と非荷重位を組み合わせる視点が不可欠です。
・荷重位の評価:
「動作の崩れや疼痛の要因」を特定
・非荷重位の評価:
「関節の構造や可動域の制限」を分析
これらを適切に評価することで、より精度の高い診断と効果的な介入が可能になります。
では、あなたの臨床評価には、この視点がしっかり組み込まれているでしょうか?
明日からの評価に、ぜひこの視点を取り入れてみてください!また、今回の記事を基に簡潔に動画にまとめております。併せてご覧ください。
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