29日の第24回「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で、大学附属病院本院以外の特定機能病院の機能について詳細な分析結果を提示しました。医療提供・研究・教育・医師派遣の各分野で大きな機能差があることが明らかになり、今後の承認基準見直しに向けた議論が本格化しました。
前回▶︎大学病院本院の特定機能病院改革、"基礎的・発展的"基準設計が本格化
医療提供実績に明確な差異
今回提示されたDPCデータによる疾患別実績分析では、大学附属病院本院以外の特定機能病院の機能に大きなばらつきがあることが判明しました。
悪性腫瘍領域では、特定領域型(がんセンターなど)で一定の実績があるものの、総合型では低い傾向が見られました。一方、急性白血病などの希少疾患では、ナショナルセンター以外では実績がない状況も確認されました。
コモンディジーズ(一般的な疾患)においても格差が顕著で、誤嚥性肺炎や股関節・大腿骨近位骨折などでは、特定機能病院以外の400床以上病院の方が高い実績を示すケースも見られました。
研究・教育機能でも格差鮮明
研究面では、ナショナルセンターの特定領域型でAMED研究費の獲得や論文発表実績が高い一方、その他の総合型では低い傾向が明確となりました。特に学振(日本学術振興会)の実績については、ナショナルセンター以外で大幅に低い状況が確認されました。
教育機能については、特定領域型で臨床研修医や専攻医の受け入れが皆無に近い状況が判明しました。内科専攻医については一部で受け入れがあるものの、外科・産婦人科・小児科では基幹型プログラムを有していない実態が明らかになりました。
支払い側は制度の厳格化を主張、現場は慎重論
機能格差が明らかになったことを受け、支払い側と現場側で異なる見解が示されました。
健康保険組合連合会の松本真人委員は書面意見で、「大学病院本院の基礎的基準と同じレベルで高度な医療技術の開発評価、研修などの機能を兼ね備えていることが不可欠」と厳格な姿勢を表明しました。「保険者が思い描く特定機能病院のあるべき姿に必ずしも合致しない」病院が存在するとして、制度の実効性確保を強く求めました。
代理出席した健康保険組合連合会の伊藤参考人も、「経過措置は必要最低限の期間と内容に限定すべき」として、支払い側の立場から厳格な制度運用を要求しました。
一方、現場側からは慎重な制度設計を求める声が相次ぎました。
昭和医科大学病院の相良博典委員は、「特定機能病院ということで考えると、網羅的な形で疾患をカバーしているところと、卒前卒後のシームレスな教育をやっているところもあるので、そういうところを含めて検討すべき」と指摘しました。
読売新聞の本田麻由美委員は一般の視点から、「頑張ってこられた病院側の医療安全の問題も理解できるので、違う基準で見ていくという考え方をこれから議論していただければ」と述べ、既存の取り組みを適切に評価する新たな枠組みの必要性を訴えました。
医療安全体制の継続評価が課題
特に注目されたのは、医療安全体制の継続的評価の重要性です。
名古屋大学医学部附属病院の長尾能雅委員は、複数の本院以外特定機能病院の安全監査委員を務める立場から、「特定機能病院になるために相当な患者安全上の変革努力をしてきた。特定機能病院でなくなったからといって安全面を縮小して良いというメッセージにならないよう配慮が必要」と強調しました。
地域医療への影響を懸念する声も
神奈川県健康医療局の山崎元靖委員は都道府県の立場から、「一部の県立がんセンター等も特定機能病院になっているので、該当する県にとって突然特定機能病院でなくなってしまうような不安は出てしまう」と地域医療への影響を懸念しました。
また、「ナショナルセンターとそれ以外の施設でも議論に入れていただけたら」として、ナショナルセンターと地方拠点病院の区別した評価の必要性を指摘しました。
臨床研究中核病院との関係も論点に
日本看護協会の吉川久美子委員は、「臨床研究中核病院の承認要件との関連も検討していく必要があるのでは」として、既存の病院機能評価制度との整合性も重要な検討課題であることを指摘しました。
次回はヒアリング実施予定
厚労省は次回検討会で、大学病院本院以外の特定機能病院からのヒアリングを実施する予定を明らかにしました。実際の運営状況や地域での役割について直接意見を聴取し、より実態に即した制度設計を目指します。
今村英仁委員(日本医師会常任理事)は、「特定機能病院というのは本来、大学病院本院が担うものではないか。外形基準が曖昧だったことの整理が必要」として、制度本来の趣旨に立ち返った整理の重要性を強調しました。
今回の分析により、同じ特定機能病院でも機能に大きな差異があることが客観的データで明確になりました。今後は各病院の特性を踏まえた適切な評価軸の構築と、地域医療への影響を最小限に抑えた制度移行が焦点となります。