― 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年9月分)」より
厚生労働省が10月31日に公表した「一般職業紹介状況(令和7年9月分)」によると、医療・福祉分野の主要職種はいずれも高水準の求人倍率を維持しているものの、前月比・前年同月比ともに横ばいからやや減少傾向となった。
依然として医療・介護現場での人手不足は深刻だが、採用活動の勢いは一服している。
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医師・歯科医師・薬剤師やや減少傾向
有効求人倍率:1.87倍
新規求人数:3,108件(前月比 +3.2%/前年比 −7.4%)
有効求人:9,310件(前月比 −3.8%/前年比 −7.0%)
就職件数:138件(前年比 +11.3%)
保健師・助産師・看護師高水準維持
有効求人倍率:2.00倍
新規求人数:33,428件(前月比 +1.3%/前年比 −0.2%)
有効求人:99,084件(前月比 +0.7%/前年比 −0.3%)
就職件数:3,579件(前月比 +23.1%)
医療技術者(PT・OT・ST等)人手不足顕著
有効求人倍率:3.05倍
新規求人数:13,996件(前月比 +1.2%/前年比 +1.2%)
有効求人:41,328件(前月比 +1.1%/前年比 +0.8%)
就職件数:729件(前月比 +15.7%)
その他の保健医療従事者やや減少
有効求人倍率:1.82倍
新規求人数:6,847件(前月比 −8.9%/前年比 −1.7%)
有効求人:20,243件(前月比 −2.9%/前年比 −16.0%)
就職件数:395件(前月比 +5.9%)
社会福祉専門職業従事者高水準維持
有効求人倍率:2.61倍
新規求人数:42,174件(前月比 +4.5%/前年比 +2.3%)
有効求人:121,357件(前月比 +2.6%/前年比 −0.4%)
就職件数:3,599件(前月比 +18.7%)
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年9月分)」
※データは公共職業安定所(ハローワーク)における求人・求職・就職の状況を基にしたものです。民間の求人媒体は含まれません。

用語解説:新規求人数と有効求人の違い
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新規求人数:その月に新たに発生した求人の数。つまり、当月に事業主がハローワークへ新しく申し込んだ求人件数を指す。季節要因(新年度・年度末など)で大きく変動することがある。
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有効求人:当月末時点でハローワークに登録されている有効な求人の総数(新規+前月からの繰越分)。言い換えると、「まだ募集が続いている求人のストック量」。この数値は雇用市場の“人手不足感”や“求人の滞留”を反映する。
つまり、「新規求人数」は“今月の動き(フロー)”を、「有効求人」は“積み上がり(ストック)”を示す指標である。
医療技術者は高水準を維持、有効求人倍率3.05倍
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などを含む「医療技術者」の有効求人倍率は3.05倍で、前年同月比では横ばい、前月比ではわずかに上昇した。新規求人倍率は4.73倍と依然として高い水準を示しており、医療機関におけるリハビリ関連職の人手不足が続いている。新規求人数は1万3,996人(前年同月比+1.2%)と微増し、求職者も増加傾向にある。
看護師・福祉職も高倍率を維持
看護師などの「保健師・助産師・看護師」は有効求人倍率2.00倍(前年同月比−1.5%)で横ばい推移。新規求人倍率は2.97倍とわずかに低下したが、就職件数は前月比23%増と採用活動の動きが活発化している。
社会福祉専門職(介護支援専門員や社会福祉士など)は有効求人倍率2.61倍(前年同月比−4.0%)と依然高い水準にある。新規求人数は4万2,174人(+2.3%)と前年を上回り、福祉・介護分野の需要の底堅さがうかがえる。
医師・薬剤師職ではやや減少
「医師,歯科医師,獣医師,薬剤師」では、有効求人倍率が1.87倍(前年同月比−15.0%)と大きく低下。新規求人数も3,108人(−7.4%)と減少し、供給の回復傾向がみられる。一方で、就職件数は増加しており、採用活動そのものは引き続き活発と考えられる。
全体としては高水準ながらも“勢い鈍化”
医療・福祉分野の求人倍率は引き続き高く、医療技術者・社会福祉職で3倍超という水準を維持。しかし、前年同月比でみると求人の伸びは鈍化しており、現場の採用熱はやや落ち着きを見せている。依然として人材確保は難航しており、地域や施設規模による格差も指摘される。
※本資料は厚生労働省「一般職業紹介状況」に基づくものであり、公共職業安定所(ハローワーク)を通じた求人・求職・就職の状況を示す統計である。民間の転職サイトや人材紹介サービス経由の求人は含まれていないため、労働市場全体の動きを直接反映するものではない点に留意が必要。
まとめ
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医療技術者の有効求人倍率 3.05倍 と高止まり
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看護師・福祉職も 2倍超 の高水準を維持
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医師・薬剤師職は 求人減少・倍率低下
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分野全体では人手不足続くも勢いは鈍化傾向
理学療法士としての現場経験を経て、医療・リハビリ分野の報道・編集に携わり、医療メディアを創業。これまでに数百人の医療従事者へのインタビューや記事執筆を行う。厚生労働省の検討会や政策資料を継続的に分析し、医療制度の変化を現場目線でわかりやすく伝える記事を多数制作。
近年は療法士専門の人材紹介・キャリア支援事業を立ち上げ、臨床現場で働く療法士の悩みや課題にも直接向き合いながら、政策・報道・現場支援の三方向から医療・リハビリ業界の発展に取り組んでいる。







