- 口を開けると耳の前周囲(顎関節領域)が痛い
- カクカク音がする
- 口が開きづらい....
といった症状がある顎関節症。
歯科で診てもらうイメージが強いと思いますが、実は医師や理学療法士にも深い関わりがあります。
顎関節の機能不全は私たちが普段悩む頚部や頚部や肩・肩甲帯症状に関連していたり、逆に頚部や肩・肩甲帯機能が顎関節に影響するケースもあります。
この記事では理学療法士の視点から気づかれていない「隠れ顎関節症」の可能性と、顎関節のケアの大切さについて解説します。

普段の不調に潜む「隠れ顎関節症」
理学療法士、作業療法士、作業療法士など臨床家の先生方は、首や肩の痛み、嚥下に問題を抱える患者さんに日々対応します。
その中には自覚症状が少ない「隠れ顎関節症」、顎関節の機能障害を併発している方が高い確率で存在しています。
【「顎関節症」に隠された意外な副症状とは?】
顎関節症の主な症状は前述した通りですが、実は顎関節の領域以外にも様々な副症状が現れます。
顎関節の異常に気付くためには、これらの副症状を見逃さないことが非常に重要です。
【顎関節症の副症状の例】
- 頭痛、首や肩の痛み・こり、手の痺れなど
- めまい、耳鳴り、耳の閉塞感、難聴
- 目の疲れ、充血
- 噛みにくさ(咀嚼障害)、飲み込みにくさ(嚥下困難)
これらの症状があり、同時に顎関節に何らかの症状や所見がある場合は、顎関節症が原因の一つになっているかもしれません。

療法士と「顎(あご)の関節」の意外な関係
理学療法士等の専門分野は「運動器(骨、関節、筋肉など体を動かすための器官)」です。
「顎の関節(顎関節)」も、体を動かす関節の一つにほかなりません。
しかし日本の医療の現状では、全身の関節を扱う整形外科やリハビリテーションの分野で、顎関節が取り扱われる機会がほとんどありません。
これは、医科の教育プログラムに顎関節についての教育が含まれていないためです。
【世界との大きな「教育格差」】
世界に目を向けると、状況は大きく異なります。
海外、特にアメリカやドイツなどでは、理学療法士等の養成学校の段階から顎関節の構造や顎関節症の評価・治療法についてしっかりと教育されています。
そのため、現地の理学療法士等は、日本よりも早い段階から顎関節症のリハビリテーションに携わっているのが一般的です。
私の顎関節ラボという治療院には、海外からも顎関節症で来られる方が多いですが、 効果の有無は別として全ての方が理学療法士による理学療法を受けていました。

アゴのケアは全身の動きを整える第一歩
顎関節は、咀嚼・嚥下・発声・平衡機能といった生命活動に欠かせない重要な関節です。

また、顎関節に関与する筋肉は、頚部や肩・肩甲帯、さらには全身の姿勢や運動に関わる筋肉と複雑につながっています。

だからこそ、「運動器の専門家」である理学療法士等が顎関節を体の動きの一部として捉え、全身とのバランスを見ながらアプローチすることは非常に有効なのです。
まとめ:顎関節の機能障害を見過ごさないで
現在、日本の医療現場ではまだ十分とはいえません。しかし顎関節症の治療において、運動器の専門家である理学療法士等の関わりがもっと増えていくことが期待されています。
頚部や肩・肩甲帯、嚥下機能に悩んでいる方は、もしかしたらその原因が顎関節にある「隠れ顎関節症」かもしれません。
いつか日本でも、顎関節症に対するリハビリテーションが当たり前の医療として提供されるようになることが、一(いち)理学療法士である私の大きな目標です。

古泉貴章
顎関節ケアラボ代表 理学療法士・保健医療科学修士
整形外科クリニックで15年勤務されている傍ら、10年以上複数の歯科医院に非常勤勤務している日本でも珍しい理学療法士。現在も歯科医院で勤務する傍ら、2024年より東京で顎関節ケアラボという自費リハビリサービスを提供している。
執筆書籍
・「運動のつながりから導く歩行と姿勢の理学療法(顎関節から診る姿勢と歩行)」 文光堂
・「特別企画 顎関節症治療におけるセルフケアをマスターする!理学療法士からみた運動器疾患の対応」歯科展望 7月号 Vol.138 No.1
・「理学療法ジャーナルジャーナル(顎関節のインナーマッスル)」Vol. 1. 55 No.6 医学書院
・「赤ちゃん歯科ネットワーク(顎関節と姿勢の関係ー小児歯科での理学療法の経験を通してー」Vol.7 No.1※こちらは会員のみの閲覧できる書籍になります。
・「症例動画から学ぶ臨床姿勢分析 姿勢・運動連鎖・形態の評価法」.ヒューマンプレス.
2025年8月頃発売「歯科と理学療法士による歯科で行う顎関節症の理学療法」医歯薬出版株式会社.
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