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包括期で求められる“週末リハ”と退院支援の強化――ADL低下5%要件の見直し含め議論が前進

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― 中医協総会(第624回)報告 ―

高齢患者の増加に対応、包括期入院医療の在り方を協議

11月5日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第624回)では、2026年度診療報酬改定に向けた議題として、地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟を中心とする包括期入院医療の評価が取り上げられました。厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長が現状と課題を報告し、施設基準の在り方、緊急入院、退院支援、ICT活用などに関して議論が交わされました。

地域包括医療病棟、ADL低下5%未満の達成は6割に

地域包括医療病棟は、高齢者の救急搬送を受け入れ、急性期治療からリハビリテーション、在宅復帰支援までを一体的に提供する病棟として位置づけられています。厚労省が示したデータによると、休日リハビリの提供量は急性期一般2~6病棟より多い一方で、退院時ADL低下5%未満という施設基準を満たす病棟は全体の6割未満にとどまっていることが報告されました。

同資料では、年齢が上がるほど在院日数が長くなる傾向も示され、85歳以上の患者では在院日数中央値が5~6日延びることが明らかになっています。

委員から相次いだ要件緩和の要望

議論では、現場の実態に即した基準見直しを求める意見が相次ぎました。

  • 江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「地域包括医療病棟では80歳以上の患者が3分の2を占める。ADL低下5%未満要件の維持は現実的でなく、リハ・栄養・口腔の連携評価と併せて見直しを行うべき」と述べました。
  • 太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)は、「ADL低下5%要件が高齢者救急の受け入れを制約している」と指摘し、「現実に即した施設基準への見直しが必要」と強調しました。
  • 松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「高齢患者割合が高い病棟に別基準を設けるなど、データに基づく柔軟な対応を検討すべき」と述べました。

緊急入院の「投下医療資源」を評価へ

地域包括ケア病棟では、救急搬送による直接入院患者は、予定入院患者に比べ包括範囲内の医療資源投下が多いことが報告されました。

厚労省は、「在宅患者支援病床初期加算」に緊急入院区分を設ける案を提示しました。

  • 江澤委員は「緊急入院では検査や処置の負担が大きく、包括点数が実態に合わない」と述べ、
  • 松本委員も「外科系・内科系でコスト構造が異なる。投下コストに応じた公平な評価を行うべき」と指摘しました。

入退院支援:退院困難要因の見直しを検討

林課長は、地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟では「ADL低下や生活再編が必要な高齢患者が多く、退院支援に人手と時間がかかる」と説明しました。資料では、退院困難要因の最多は「緊急入院」であり、次いで「ADL低下に伴う生活様式の再編」が多いことが示されました。

議論では、

  • 江澤委員が「退院支援の負担を踏まえた評価を設けるべき」と述べ、
  • 太田委員が「包括入院料に含まれる入退院支援を出来高算定できるように検討すべき」と発言。
  • 松本委員は「急性期とのメリハリをつけた評価を」と述べました。

また、退院困難要因に「身寄りのない患者」や「要介護区分変更申請が必要な場合」を追加する案が示され、異論は出ませんでした。 併せて、地域連携診療計画加算で検査・画像情報を添付した情報提供を評価する案、および市町村が策定する入退院支援ルールを活用した支援の評価も提示されています。

ICT活用で看護配置の柔軟化も議題に

看護職員の負担軽減策として、ICT機器導入による業務効率化を前提に、入院料の看護配置を柔軟化することができないかという論点も挙げられました。資料では、見守りカメラ、タブレット入力、音声入力システムなどの活用による業務時間短縮事例が紹介されています。

  • 太田委員は「ICT活用で効率化が進むなら、配置基準も見直すべき」と発言し、
  • 小阪真二委員(全国自治体病院協議会副会長)も「ICT導入の目的が制度上生かされるように」と述べました。
  • 一方、木澤晃代専門委員(日本看護協会常任理事)は「安全確保を前提に慎重な検討が必要」との見解を示しました。

今後の方向性

今回の総会では、診療側・支払側双方が「データに基づく制度見直し」の方向性を共有しました。厚労省は、地域包括医療病棟の施設基準緩和、緊急入院評価、退院支援加算の再設計などを引き続き検討し、次回以降の中医協総会で具体的な案を提示する予定です。

▶︎中央社会保険医療協議会 総会(第624回) 

【目次】

病院経営とリハ専門職をめぐる最新データ

令和6年度改定検証調査:新設加算の低迷浮き彫り

リハ職の活用拡大も論点に

回リハ病棟の実績指数「除外基準見直し必要」ほか

外来機能の分化推進と生活習慣病管理の評価見直しを議論

この記事の執筆者
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今井俊太
【POST編集部】取締役 兼 編集長

理学療法士としての現場経験を経て、医療・リハビリ分野の報道・編集に携わり、医療メディアを創業。これまでに数百人の医療従事者へのインタビューや記事執筆を行う。厚生労働省の検討会や政策資料を継続的に分析し、医療制度の変化を現場目線でわかりやすく伝える記事を多数制作。
近年は療法士専門の人材紹介・キャリア支援事業を立ち上げ、臨床現場で働く療法士の悩みや課題にも直接向き合いながら、政策・報道・現場支援の三方向から医療・リハビリ業界の発展に取り組んでいる。

包括期で求められる“週末リハ”と退院支援の強化――ADL低下5%要件の見直し含め議論が前進

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