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同一建物への訪問看護、包括評価を検討

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12月19日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションへの評価見直しが議論された。短時間で頻回の訪問を繰り返すケースに対し、時間を合算した「包括的評価」の導入が焦点となっている。支払側が包括評価導入を求める一方、診療側は「包括一本化は絶対にやってはいけない」と慎重姿勢を示した。

管理療養費1と2で別表7該当者の割合に差なし

厚生労働省が今回追加提示したデータによると、訪問看護管理療養費の算定種別(1と2)で利用者の状態像を比較したところ、別表第7(末期がん、ALS等の重症者)に該当する患者の割合は、管理療養費1で17.3%、管理療養費2でも17.3%と、ほぼ同水準であることが明らかになった。

一方、利用者1人あたりの1月あたり医療費をみると、管理療養費1のみの利用者は中央値が90,849円であるのに対し、管理療養費2のみの利用者は中央値が192,162円と、約2倍の開きがある。

この結果は、同一建物居住者への訪問を主とするステーション(管理療養費2)において、患者の重症度に大きな差がないにもかかわらず、1人あたりの請求額が高くなっている実態を示唆している。

包括評価への賛否、現場への影響を懸念する声

支払側の健康保険組合連合会・松本真人理事は、「同一建物に住む複数の利用者に対応する場合の訪問看護基本療養費や、同一建物の利用者が多いステーションに適用する訪問看護管理療養費の評価は適正化すべき」と主張。短時間の訪問を繰り返す場合に「時間を合算して一連の報酬として包括評価する仕組みの導入も必要」との考えを示した。

全国健康保険協会の鳥潟美夏子理事も同様に、「同一建物への訪問看護については包括的な評価の在り方を検討すべき」と発言した。

これに対し診療側の日本医師会・江澤和彦常任理事は、「一部の不適切と思われる一律の複数回訪問や複数スタッフによる訪問の請求は是正するとしても、それ以外の日夜献身的に頑張っている全国の大半の訪問看護ステーションが不利益を被らないようにすべき」と強調。「悪貨によって良貨が駆逐されることのないよう、しっかりと切り分けることが必要」と訴え、「包括に一本化することは決してあってはならない」とくぎを刺した。

日本看護協会の木澤晃代常任理事(専門委員)も、「多くの事業所では別表7・8の利用者をはじめとする医療ニーズを有する利用者に対し、病態に応じた個別対応を行っている」と現場の実情を説明。「頻回な訪問や緊急的な訪問を必要とする方も一定数おり、医療の必要性が高い方への訪問看護へのアクセスが阻害されることのないよう十分に配慮する必要がある」と述べた。

まとめ・今後の展望

今回の議論では、高齢者住まい等に併設するステーションによる効率的な訪問と、それに伴う高額な医療費請求の実態がデータで示された。支払側は包括評価の導入を求める一方、診療側・看護側は真に医療を必要とする利用者への影響を懸念している。令和8年度診療報酬改定に向けた議論が続く。

▶︎中央社会保険医療協議会 総会(第637回)

この記事の執筆者
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今井俊太
【POST編集部】取締役 兼 編集長

理学療法士としての現場経験を経て、医療・リハビリ分野の報道・編集に携わり、医療メディアを創業。これまでに数百人の医療従事者へのインタビューや記事執筆を行う。厚生労働省の検討会や政策資料を継続的に分析し、医療制度の変化を現場目線でわかりやすく伝える記事を多数制作。
近年は療法士専門の人材紹介・キャリア支援事業を立ち上げ、臨床現場で働く療法士の悩みや課題にも直接向き合いながら、政策・報道・現場支援の三方向から医療・リハビリ業界の発展に取り組んでいる。

同一建物への訪問看護、包括評価を検討

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