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オンライン心大血管リハビリ、2026年度改定での保険適用は「時期尚早」──中医協で診療・支払側双方が安全性を懸念

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12月24日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーションの保険適用について議論が行われた。今年6月に国内初の遠隔心臓リハビリ支援プログラム医療機器「リモハブ CR U」が薬事承認され、保険収載への期待が高まる中、診療側・支払側の双方から「安全な運用の仕組みの確立が先」との慎重意見が相次いだ。リハビリ専門職にとって、心大血管リハビリの提供体制のあり方を考える上で注目すべき議論となっている。

薬事承認された遠隔心臓リハビリ機器、6分間歩行距離で「非劣性」示す

厚生労働省は今回の総会で、遠隔心臓リハビリテーションを実施するプログラム医療機器「リモハブ CR U」の概要と治験データを提示した。

この機器は、専用エルゴメータとウェアラブル心電計を併用し、医療者が医療機関から遠隔で在宅患者を最大8名同時にモニタリングしながら心臓リハビリを実施できるシステムだ。対象患者は心不全、狭心症、開心術後、大血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患と幅広い。

医師主導治験では、入院中の集団心リハを実施し退院後に通院心リハを実施した患者を無作為に割り付け、当該機器を用いた遠隔心リハ群と通院群を比較。12週間の介入終了時における6分間歩行距離の変化量について「非劣性」が示された。

有害事象発生率49.1%、「因果関係は否定」も懸念の声

一方で安全性のデータが議論の焦点となった。

治験における有害事象の発生率は、遠隔心リハ群が49.1%、通院心リハ群が35.7%。いずれも機器使用との因果関係は否定されているものの、遠隔群の方が約14ポイント高い数値を示している。

現行の心大血管リハビリテーション料(I)の算定要件では、「医師が直接監視を行うか、又は医師が同一建物内において直接監視をしている他の従事者と常時連絡が取れる状態かつ緊急事態に即時的に対応できる態勢」が求められている。施設基準でも、専用の機能訓練室(病院は30㎡以上)に酸素供給装置、除細動器、心電図モニター装置などの設置を義務付け、緊急手術や緊急の血管造影検査を行える体制確保も要件となっている。

日本心臓リハビリテーション学会が2023年10月に公表した「心血管疾患における遠隔リハビリテーションに関するステートメント」でも、緊急時対応の観点から「遠隔心リハ中にケアギバー(患者をサポートする者)も状態を把握できる状況にあることが望ましい」とし、「独居で近傍にもサポートできるケアギバーがいない場合には、遠隔心リハの適応には慎重を期する」と記載している。

支払側・松本委員「安全な運用の仕組み確立が先」

議論では、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)が慎重な見解を示した。

「製品との因果関係は否定されているものの、有害事象発生割合がオンラインでは49.1%と高い点が気になる。外来でも35.7%であるが、病院ゆえ『迅速な対応』が可能である」

松本委員は続けて、「現在の診療報酬による心大血管リハビリ料の要件や、学会による遠隔リハビリの要件などを見ると、『保険適用して広範な医療機関で実施されること』に不安を覚える。まず遠隔リハビリの安全な運用の仕組みを確立し、その後に保険適用論議をすべきではないか」と述べ、拙速な保険収載に釘を刺した。

診療側・江澤委員「在宅の基準すらない中で、オンラインは時期尚早」

診療側からも同様の懸念が示された。日本医師会常任理事の江澤和彦委員は、より踏み込んだ問題提起を行った。

「オンライン診療の原則である『有効性、必要性、安全性』を最優先に検討すべきだ。本来、心大血管リハビリは病院においても一定面積以上の機能訓練室、酸素供給措置、除細動器などの機器設置、緊急の手術・検査体制などが求められる『リハビリの中でもとりわけ安全性への配慮』が求められるものである」

江澤委員はさらに核心を突いた。「医師による在宅での実施についても点数や基準すらいまだに設けられていない。それを飛び越えて、一気にオンラインでの実施を認めることは時期尚早であろう」

有害事象についても言及し、「因果関係は否定されているが有害事象が多い点が気になる。病院では迅速対応が可能だが、オンラインではタイムラグが生じ、危険である。まずは『在宅で心大血管リハビリを実施する際の基準』などを学会の見解、各種臨床データをもとに検討していくべき」と、段階的なアプローチを求めた。

まとめ・今後の展望

今回の議論では、診療側・支払側の双方から「安全性の確立が先」との認識で一致した格好となった。2026年度診療報酬改定での保険適用は見送られる公算が大きい。

リハビリ専門職として押さえておくべきは、江澤委員が指摘した「在宅での心大血管リハビリの基準すら整備されていない」という現状認識だ。オンライン化を議論する前提として、まず訪問リハビリテーションにおける心大血管リハビリの位置づけや安全基準の整理が求められることになりそうだ。

厚労省は今後、日本心臓リハビリテーション学会の指針や臨床データの蓄積を踏まえ、段階的に検討を進める見通し。心大血管リハビリの実施機会拡大という課題と、患者安全の確保という両立困難なテーマについて、引き続き中医協での議論が注視される。

▶︎中央社会保険医療協議会 総会(第638回) 

オンライン心大血管リハビリ、2026年度改定での保険適用は「時期尚早」──中医協で診療・支払側双方が安全性を懸念

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