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病院リハ職の75%は紹介会社以外で採用──厚労省3万事業所調査が示す採用経路の実態

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厚生労働省は2026年3月10日、「医療等分野における雇用仲介事業に関する調査研究事業」の報告書および報告書別冊を公表しました。医療・介護・保育の3分野を対象とした大規模アンケート調査で、リハビリ専門職(PT・OT・ST)の採用市場が他職種と大きく異なる構造を持つことが裏付けられています。病院では採用の約75%が養成校・縁故など紹介会社を介さないルートで占められる一方、介護施設では約46%が有料紹介経由。紹介経由の6ヶ月以内離職率は病院5.80%、介護15.00%──紹介経由ではコスト負担と早期離職率の高さが、職種別データで具体的に示されました。

病院のリハ職採用──4人に3人は「紹介会社以外」

報告書別冊が示す採用人数ベースのデータは、利用率の数字以上に実態を映しています。

病院でリハビリ専門職の採用活動を行った施設(n=439)のうち、有料職業紹介事業者を「利用した」と回答したのは47.2%。ハローワーク(55.4%)を下回りつつも、半数近くが紹介会社に頼っている印象を受けます。ところが実際の採用人数(合計1,365人)で見ると景色は一変します。有料紹介経由は16.5%、ハローワーク経由は6.4%にとどまり、74.9%──4人に3人──は養成校(利用率51.3%)・直接募集・縁故などの「その他」ルートから採用されていました。

報告書別冊 p.30「医療(病院)分野 採用経路別採用人数」

看護師・准看護師(6,548人)は有料紹介経由が45.2%を占め、医師(891人)でも37.3%。リハ職の16.5%は、病院で働く医療職の中でも突出して低い水準です。養成校経由の利用率が51.3%と、看護師の31.3%を大きく上回っている点に、リハ職の採用市場の特性が表れています。

報告書別冊 p.26「医療(病院)分野 職種別の利用した採用経路」

介護のリハ職は「紹介依存」──採用の46%が有料紹介経由

病院とは対照的に、介護分野ではリハ職の紹介会社依存度が跳ね上がります。

介護施設でリハビリ専門職を採用した求人者(n=178)のうち、有料紹介事業者の利用率は53.9%、ハローワークは60.7%。利用率だけを見れば病院と大差ない構図です。しかし採用人数(合計175人)の内訳では、有料紹介経由が45.7%を占めました。ハローワーク経由19.4%、募集情報等提供事業(求人サイト等)経由10.9%、その他(縁故・直接募集等)24.0%。有料紹介の比率は病院の16.5%と比べ約2.8倍の差があります。

報告書別冊 p.49「介護分野 職種別の利用した採用経路」

なぜ同じリハ職でも介護と病院でこれほど差が開くのか。報告書にその分析はありませんが、介護施設は病院と比べ養成校との接点が薄く、新卒の就職先として選ばれにくいことが背景の一つと考えられます。養成校経由の利用率は病院51.3%に対し介護は9.6%にとどまりました。

紹介経由の離職率──病院で3.9倍、介護で2.9倍

報告書別冊には、リハビリ専門職の職種別・期間別離職データが明記されています。

病院(別冊p.34)では、紹介事業者経由のリハ職の6ヶ月以内離職率が5.80%(就職者224人中)、非紹介経由が1.49%(1,140人中)。約3.9倍の開きです。期間別では、紹介経由の離職率は1ヶ月以内1.34%、1ヶ月超3ヶ月以内1.79%、3ヶ月超6ヶ月以内2.68%と、時間の経過とともに上昇する傾向が見られます。非紹介経由はいずれの期間も1%未満で推移しています。

報告書別冊 p.34「医療(病院)分野 令和6年度就職者の職種別・期間別の離職状況」

介護(別冊p.57)では状況がより深刻です。紹介経由の6ヶ月以内離職率は15.00%(80人中)、非紹介経由は5.26%(95人中)。約2.9倍。倍率こそ病院より小さいものの、絶対値は紹介経由・非紹介経由ともに病院を大幅に上回ります。

【★画像挿入:報告書別冊 p.57「介護分野 令和6年度就職者の職種別・期間別の離職状況」の表をここに貼る】

紹介事業者側の自己申告データ(別冊p.97)でも、リハ職の6ヶ月以内離職率は15.5%と報告されており、求人者側の調査結果と概ね整合しています。

看護師・准看護師の紹介経由14.38%対非紹介経由6.56%(約2.2倍)と比べると、リハ職は病院では絶対値こそ低いものの、紹介経由と非紹介経由の「倍率」の差が大きい職種の一つとなっています。

紹介手数料は1人あたり93〜96万円──求人の「空振り」も浮き彫りに

料金負担についても、別冊にはリハ職固有の数値が示されました。

病院がリハ職1人を有料紹介経由で採用した際の手数料は、回答91事業所の平均93.4万円。介護施設では回答35事業所の平均95.8万円。いずれも看護師・准看護師(病院87.3万円、介護78.7万円)を上回り、医療・介護の現場職種の中でも高い水準に位置します。

【★画像挿入:報告書別冊 p.31「医療(病院)分野 採用1人あたりの手数料額」の表をここに貼る】
【★画像挿入:報告書別冊 p.54「介護分野 採用1人あたりの手数料額」の表をここに貼る】

紹介事業者側のデータ(別冊p.95)によると、リハ職の手数料率は決定年収の20〜25%が35.7%、25〜30%が42.9%。約8割が年収の20〜30%帯に集中しています。年収300万〜500万円帯では1件あたり平均85.3万円で、求人者側調査の数字と概ね一致します。

紹介事業者が報告した実績(別冊p.93)には、もう一つ注目すべき数字があります。リハ職の求人件数は32,365件に対し、紹介件数は8,315件、実際の就職件数は3,413件。事業者調査上の件数比で見ると、求人に対して紹介に至った割合は約26%、就職に結びついたのは約11%です。これは調査に回答した事業者の集計値であり単純に一般化はできませんが、紹介会社に依頼しても必ずしも人材が見つかるわけではない現実の一端を示しています。

病院の97.8%が「手数料は高い」──早期離職後は欠員のまま

手数料への不満は業界全体で根深いものがあります。病院では「経営上大きな負担で料金が高い」が75.2%、「大きな負担とまではいかないが高い」の22.6%と合わせ、97.8%が「高い」と回答。介護でも76.7%+20.9%=97.6%が同様の認識を示しました。有料職業紹介事業者に対する求人者の満足度(報告書p.24)は5点満点で病院2.46点、介護2.27点と「やや不満」寄りです。情報通信や小売では3点台前半の水準となっており、医療・介護との開きが際立ちます。

【★画像挿入:報告書別冊 p.32「医療(病院)分野 有料職業紹介事業手数料の負担感」の表をここに貼る】

紹介会社経由で早期離職が発生した後の対応も深刻です。「そのまま欠員になってしまった」と回答した施設は、病院53.5%、介護54.6%。別の紹介会社から採用し直すケースは病院46.1%、介護35.1%ありますが、いずれにせよ追加コストが発生します。返戻金についても「返戻金はなかった」が病院16.1%、介護17.4%を占め、手数料の25%未満にとどまるケースが最多(病院37.5%、介護39.7%)でした。

【★画像挿入:報告書別冊 p.35「医療(病院)分野 早期離職発生時のその後の対応」の表をここに貼る】

就職者が求めるのは「職場の実像」──制度の認知度には課題

就職者側の声にも触れておく必要があります。有料紹介事業者を利用した理由の最多は「スマートフォンで登録・相談が手軽」(病院52.6%、介護44.4%)。「求人企業の詳しい情報を知ることができる」(病院36.4%、介護32.6%)、「労働条件の交渉を代行してもらえる」(介護31.9%、病院21.4%)が続きます。

紹介事業者への要望では「求人元の詳しい情報を提供してほしい」が病院36.2%、介護31.5%と最多。求人の「量」ではなく、職場環境や実際の働き方といった「質」の高い情報が求められています。

一方、制度の認知度には大きな課題が残ります。就職後2年間の転職勧奨禁止ルールを「知らなかった」とする回答は病院で85.6%、介護で88.3%。お祝い金禁止についても病院81.9%、介護86.4%が認識していませんでした。

報告書別冊 p.44「医療(病院)分野 転職勧奨禁止・お祝い金禁止の認識」

まとめ・今後の展望

本報告書は、2025年6月~10月に実施された大規模アンケート調査の結果をまとめたものです。求人者約30,000事業所への1次調査、雇用仲介事業を利用した約4,200事業所への2次調査、有料職業紹介事業者約3,200社・募集情報等提供事業者約1,300社への調査で構成されています。前回調査(令和元年度・2年度)との比較では、6ヶ月以内の早期離職率は全職種で改善が見られました(看護師・准看護師:前回23.1%→今回14.38%、介護職員:前回38.5%→今回18.86%)。

リハビリ専門職にとって押さえるべきポイントは4つです。

第一に、病院では採用人数の約75%が紹介会社以外(養成校・縁故・直接募集)から採用されている一方、介護施設では約46%が有料紹介経由と、領域によって採用構造が大きく異なること。

第二に、紹介会社経由の6ヶ月以内離職率は病院5.80%(非紹介経由の約3.9倍)、介護15.00%(同約2.9倍)と、いずれの領域でも紹介経由の離職リスクが高いこと。

第三に、紹介手数料は1人あたり病院93.4万円、介護95.8万円に達し、約98%の施設が「高い」と感じている経営負担の現実。

第四に、紹介事業者の調査データ上、リハ職の求人件数に対して実際に就職に結びついた件数は約11%にとどまっており、依頼すれば確実に採用できるわけではない点です。

厚労省は本報告書を今後の政策検討の基礎資料として活用する方針です。管理職・採用担当者にとっては、自施設が病院か介護かで採用チャネルの最適解が異なることを、データに基づいて確認できる資料となっています。病院のリハ職採用では養成校との関係強化が依然として有効である一方、介護分野では紹介会社への依存度が高い分、離職率や手数料の管理が重要な経営課題となります。

出典:厚生労働省「医療等分野における雇用仲介事業に関する調査研究事業」報告書・報告書別冊(令和8年3月10日公表)

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