高齢者住まいの入居者に提供される介護サービスの報酬が、令和9年度改定の論点に上がりました。8月5日の社会保障審議会・介護給付費分科会(第262回)で、厚生労働省は「実態に合わせた必要な見直し」を検討課題として提示。保険者側などからは、同一建物減算のさらなる適正化を求める意見が相次ぎました。一方、日本医師会の委員は訪問リハビリテーション事業所などを挙げ、減算の廃止・緩和を提案しました。訪問リハ・通所リハも減算の対象です。
厚労省が示した論点は「実態を把握した上で必要な見直し」
この日の議題は、令和9年度介護報酬改定に向けた3つのテーマです。定期巡回・随時対応型訪問介護看護および夜間対応型訪問介護、高齢者住まいに対するサービス提供の在り方、地域区分。あわせて関係団体等との意見交換会の実施要領が諮られました。
リハビリテーション専門職に最も近いのが2つ目です。事務局は資料2の最終ページで、有料老人ホーム等の高齢者住まいの役割とサービス適正化の観点から論点を示しました。入居者にサービスを提供する事業所の経営実態・サービス提供実態を丁寧に把握したうえで、実態に合わせた必要な見直しを検討することについてどう考えるか、という内容です。
前提として置かれたのが、同一建物減算の仕組みです。事務局は現状と課題で、同一建物等居住者へのサービス提供割合が多くなるにつれて訪問件数は増加し、移動時間や移動距離は短くなっている実態を挙げました。これを踏まえ、訪問系・通所系サービスや居宅介護支援に減算が設けられています。減算の要件(同一敷地内建物等へのサービス提供の有無、同一建物の利用者数、提供割合など)は、サービスごとに異なります。令和6年度改定でも見直しが行われました。
一方で事務局は、中山間地域等のように人材確保やサービス確保が困難な地域が増えると見込まれる中、まちづくりと連動した形で高齢者住まいの健全な発展を図ることも重要だと併記しています。適正化と提供体制の維持、両にらみの論点設定です。

資料2「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」86ページより
訪問リハは減算を受けている事業所のほうが収支差率が高い
議論の材料として示されたのが、同一建物減算の算定の有無別に見た収支差率です。収支差率は、介護報酬などによる収入から費用を差し引いた利益率にあたります。令和6年度決算をもとにした「令和7年度介護事業経営概況調査」の集計で、介護事業経営調査委員会(第42回、令和7年11月26日)の資料から再掲されました。
訪問リハビリテーションは、全体が10.8%。このうち同一建物減算を算定している事業所が16.9%、算定していない事業所が9.9%です。減算を受けている側のほうが7ポイント高いという並びになっています。ただし減算あり側の回答数は29と限られ、減算なし側の367と比べて集計対象の規模に差があります。単純に一般化はできません。
通所リハビリテーションは逆でした。全体が2.0%、減算ありが1.7%、減算なしが2.0%。こちらも減算あり側の回答数は21と少数です。そもそも全体の水準が調査対象サービスの中で低い部類に入ります。同じ「リハビリテーション」でも、減算の有無で見た収支差率の並びは訪問と通所で逆になりました。
訪問介護は全体9.6%で、10%減算の事業所が11.5%、12%減算が7.7%、減算なしが10.0%。訪問看護は全体10.3%で、減算あり8.6%、減算なし10.6%でした。

資料2 77ページより
リハ系の算定率は訪問介護・通所介護より低い
では、リハビリ系サービスで実際にどれだけ減算が算定されているのか。介護給付費等実態統計(令和7年11月審査分)などから作成された算定状況も示されました。
事業所ベースで見ると、訪問リハビリテーションで同一建物減算(10%)を算定しているのは5.6%にあたる320事業所。15%の減算は8事業所で0.1%です。通所リハビリテーションは390事業所で5.1%でした。
これに対し通所介護は5,579事業所で22.9%、訪問介護の10%減算は5,469事業所で15.5%、居宅介護支援は5,141事業所で14.4%。リハビリ系の算定率は、訪問介護・通所介護より低い水準です。ただし制度上の対象であることに変わりはなく、見直しの射程には入っています。

資料2 78ページより
背景にある住宅型有料老人ホームの「囲い込み」への懸念
論点の土台には、住宅型有料老人ホームをめぐる問題があります。
住宅型有料老人ホームの79.1%、サービス付き高齢者向け住宅(特定施設に該当しないもの)の83.4%に、併設または隣接の介護等事業所があります。特定施設の23.7%とは対照的です。併設・隣接事業所を持つ住宅型で、入居者の7割以上が当該事業所を利用している割合は、訪問介護73.4%、通所介護64.4%、居宅介護支援44.5%でした。併設・隣接する訪問介護事業所の約5割は、そのホームの入居者以外にサービスを提供していません。
ケアマネジャーへの調査では、同一法人のサービスを優先したケアプランが作成されている、事業者の都合でケアプランが画一的になっている、区分支給限度基準額(要介護度ごとに定められた保険給付の上限額)いっぱいまで同一法人のサービスを設定したケアプランが多い、といった回答が一定数見られました。
これらを受け、2026年6月25日に社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)が公布されました。中重度の要介護者など入居者保護の必要性が高い方を入居対象とする有料老人ホームに、登録制が導入されます。施行は公布から2年を超えない範囲内で政令で定める日で、現時点では未施行です。ケアプラン作成と地域生活相談を一体的に提供する新サービス「登録施設介護支援」も創設されます(施行は公布から3年以内で政令で定める日)。
「使い切り」批判の陰で、リハなど医療系が届いていないという指摘
質疑で、リハビリテーションの届き方そのものに切り込んだのが、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長でした。
東会長は、併設・隣接事業所を入居者のほとんどが利用している一方で、そこに医療系サービスがほとんど含まれていないと指摘しました。2014年9月10日の第108回介護給付費分科会に提出された資料でも、有料老人ホームやサ高住では訪問リハなど医療系サービスの利用が極めて少ない実態が示されていた、とも述べています。特定のサービスに偏った提供が常態化し、それ自体がビジネスモデルになっているのだとすれば、利用者本位という介護保険制度の理念から見て看過できない。そうした認識です。
東会長は、有料老人ホームの入居者であっても一人の利用者として自立支援に資するサービスを適切に受ける権利があると指摘しました。住まいの形態によって受けられる支援の質や選択肢が狭められてはならない、という立場です。囲い込みを防ぎ、必要な医療・リハビリ・看護・介護が適切に届く仕組みへと制度を厳しく見直す必要があるとして、同一法人の居宅介護支援事業所がケアプランを作成することを認めない、といった趣旨の案も挙げました。
ケアマネジャー調査で課題を指摘する回答が一定数見られるという資料の記述について、東会長は「一部の事業者」という捉え方に異を唱えました。かなり多くのところで行われているのではないか、との見方です。
なお、この日の資料で併設・隣接事業所の利用状況を示した表には、訪問リハビリテーション単独の項目がありません。通所リハビリテーションも「通所介護、通所リハ」として通所介護と一括りの選択肢になっています。

資料2 48ページより
健保連・老施協は減算強化を要求
一方、減算を強める方向で足並みをそろえたのが、保険者側と施設側です。
健康保険組合連合会の伊藤悦郎委員は、制度の持続性を高める観点から適正化・重点化を図るべきだとしたうえで、同一建物減算について言及。減算の算定有無別の収支差率や他のサービス事業所との併設・隣接状況、地域の実情などを踏まえてほしいとしたうえで、減算率の拡大などさらなる適正化を検討するよう求めました。
全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は、事業者の都合による画一的なケアプランの作成や、併設事業所の利益を優先して区分支給限度基準額いっぱいまでサービスを位置づける実態を挙げ、遺憾だと述べました。特別養護老人ホームをはじめとする介護保険施設が厳しい収支差率の中で入居者の生活を包括報酬で支える一方、併設の居宅サービスの分解利用によって過度






