「リハビリ・自立援助」、半数の病棟が他職種と分担 厚労省検討会

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看護師が担ってきた病棟業務は、どこまで他職種と分け合われているのか。厚生労働省は9月14日、「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」の第5回会合を開き、勤務環境の改善を議題にしました。44病棟を対象にした調査では、「リハビリ・自立援助」について半数にあたる22病棟が他の医療職とのタスク・シフト/シェアを行っていました。受け手側の人員が足りないことは、タスク・シフト/シェアの課題として最も多く挙がっています。リハビリテーション専門職の業務量に直結する内容です。

「リハビリ・自立援助」、半数の病棟で他職種と分担

事務局が示した資料1には、病棟の看護業務がどこまで他職種と分担されているかを項目ごとに数えたデータが含まれていました。

出典は令和7年度の厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「効率的な看護業務推進の評価に係る実態把握のための研究」です。研究代表者は東京医療保健大学医療保健学部の坂本すが副学長・教授。42病院44病棟の病棟師長から回答を得ています。病床機能の内訳は高度急性期8病棟、急性期26病棟、回復期5病棟、慢性期5病棟でした。

調査は85項目の看護業務を並べ、それぞれを誰と分担しているかを尋ねる形式です。選択肢は①看護補助者(介護福祉士を含む)②クラーク・事務職など非医療職 ③他の医療職(医師を除く)の3つ。これとは別に、ICTを活用している業務も併せて聞いています。

「リハビリ・自立援助」で「他の医療職」を選んだ病棟は22病棟、全体の50.0%でした。看護補助者と非医療職はいずれも0.0%です。

受け手の職種は調査項目に含まれていません。業務の性質からは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が中心とみられますが、この調査結果から職種を特定することはできません。

85項目のうち「他の医療職」が5割以上だったのは4項目だけでした。最も高いのは持参薬チェック・登録の70.5%。退院時の栄養指導と退院時の服薬指導がいずれも59.1%で続き、リハビリ・自立援助の50.0%が4番目です。薬剤の残薬確認・処方依頼・セットは38.6%、薬剤のミキシングは27.3%でした。

薬剤と栄養指導が上位を占めるなかで、患者に直接触れるケアの項目としては「リハビリ・自立援助」が突出しています。

病棟看護業務のタスク・シフト/シェアとICT活用の状況。厚生労働省 第5回検討会 資料1より

同じ研究班は、病棟看護師の1日の業務内容をタイムスタディで測り、2018年と2024年を比べています。43病棟41病院768名分のデータを24時間=1440分に換算した結果です。

減った業務の上位は、排泄介助が25.5分、バイタルサインの測定が23.3分、食事の世話が14.6分。増えた業務の上位は、観察が20.1分、患者等からの情報収集が19.0分、体位交換が13.2分でした。資料1は、実施時間が減った業務についてタスク・シフト/シェアの推進が要因として考えられる、との見方を示しています。

課題として最も多く挙がったのは「受け手の余力」 75.7%

タスク・シフト/シェアの阻害要因は、日本看護協会の2025年病院看護実態調査に出ています。全国8,022施設の看護部長に回答を依頼し、有効回答は3,502名。このうち医師以外の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアの実施状況に回答した3,486名の内訳は、実施あり2,552名、実施なし934名でした。

課題は3,486名全員に複数回答で尋ねています。実施あり2,552名で最も多かったのは「タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の余力(人員確保等)」で、75.7%・1,933件でした。2位は「医療従事者全体の意識改革・啓発」63.0%、3位は「受ける側の医療関係職種の知識・技能の習得」44.0%。渡す側より、受ける側の人手と習熟が壁になっていると病院看護部長が見ていることになります。

タスク・シフト/シェアの取組みを進めるにあたって課題になっていること。資料1より

福島県保健福祉部次長の風間雄一郎氏は、この点を議論の前提として取り上げました。看護補助者を含む受け皿に一定の体制がなければ、働き方を論じる土俵にも上がれないのではないか、と述べています。

事務局は資料説明の中で、タスク・シフト/シェアもICTの活用も「まだまだ道半ば」との認識を示しました。

ICT導入で看護配置1割減 現時点では対応不可能との指摘

勤務環境改善のもう一つの軸が、ICT機器による業務効率化です。令和8年度診療報酬改定で、ICT機器等の活用を要件に看護要員の配置基準を柔軟化する施設基準が設けられました。対象は①見守り②記録③医療従事者間の情報共有 に有用な機器で、3分野すべてを導入し、病棟の看護職員等が広く使用していることが条件です。これを満たす病棟は、看護職員・看護補助者の数などを1割以内の範囲で減らしても入院基本料等の所定点数を算定できます。

対象となる入院料は、急性期一般入院料1〜6、急性期病院一般入院料AB、7対1・10対1入院基本料、地域包括医療病棟入院料1・2、小児入院医療管理料1〜4、特殊疾患病棟入院料1・2、緩和ケア病棟入院料1・2です。

施設基準には超過勤務の要件も入っています。常勤の看護要員の1人1か月あたり超過勤務時間が平均10時間以下であること。非常勤職員を含めて、導入前と比べて増加する傾向にないこと。導入前後の業務内容・業務量・業務時間などを年1回程度、定量的または定性的に評価することも求められます。

令和8年度診療報酬改定 ICT等の活用による看護業務効率化の推進。資料1より

この仕組みに、日本医師会常任理事の江澤和彦氏が正面から疑問を投げました。ICT機器の評価は「利便性」と「労働時間短縮・人員配置の削減」を区別して行う必要がある、というのが出発点です。

江澤氏は、看護配置7対1・50床の病棟なら看護職員の必要数は35人で、その1割は3.5人にあたると試算。超過勤務時間が一定以内であることが前提の仕組みだと断ったうえで、現状のICT機器の活用で3.5人を削減するのは不可能だと述べました。ICT特有の用語による記録に不備がないか、診療録の記録が担保されているかといった確認作業が新たに発生する点も挙げています。

そのうえで、ICT機器を導入している全国の医療機関を対象に、労働時間の短縮、超過勤務時間の短縮、職員配置の緩和、シフトの改善について調査を実施すべきだと提案しました。タスク・シフト/シェアを行っても病棟の総労働時間が減らなければ意味がない、との指摘です。

2040年に向けて労働人口が2割減ることは、50床の7対1病棟が35人から28人へ7人減ることとも言い換えられる。江澤氏はそう述べ、現時点では対応不可能でも近い将来この仕組みを標準としなければならない現実に直面している、と続けました。職員の負担やストレス、労働時間を増やさずに人員配置を削減できた好事例を集めて横展開する必要があるとして、客観的データに基づく調査研究を求めています。

北海道大学大学院医学研究院教授の古元重和氏は、導入コストを地域医療介護総合確保基金、ランニングコストを診療報酬で支えるという制度的対応が進んでいると整理。課題は先進的な医療機関ではなく、いかに幅広い医療機関へ普及させるかだと述べ、現場に寄り添う伴走支援の重要性を挙げました。

看護職員の超過勤務そのものは緩やかに減っています。日本看護協会の病院看護実態調査による1人あたり月平均超過勤務時間は、2022年5.4時間、2023年5.2時間、2024年5.1時間、2025年4.8時間。500床以上に限ると2025年でも8.3時間でした。省力化投資促進プラン(医療分野)は、この指標を2029年度までに2027年度比で減らすことをアウトカム目標に掲げています。

2病院が事例発表 超短時間勤務と「昼夜遷移」

この日は病院2施設が参考人として取り組みを報告しました。

大阪府済生会吹田病院の村上志保看護部長が紹介したのは、1日2時間以上・週1回から働ける超短時間勤務制度「くわいナース」です。2008年、子育てとの両立困難を理由とする退職が続いたことを受け、師長会のワーキンググループが制度化しました。働く側が「働きたい時間」を申請し、看護部が部署のニーズと調整する仕組みです。

導入当初に任せた業務は保清、環境整備、患者搬送、記録を伴わない業務。習熟に応じて食事介助、点滴作成、バイタル測定、検査後観察、カンファレンス参加へ広げました。勤務終了の30〜60分前に主な役割を終える設計にし、定時で帰れることを運用ルールで担保しています。

超短時間勤務制度「くわいナース」の仕組み。大阪府済生会吹田病院 資料2より

村上氏は、在籍者数が年度平均で2019年度の28.0人から2026年度は11.8人へ縮小している現状も示しました。2026年度の値は4〜8月の平均です。減少の要因として、労働契約法の無期転換ルールに伴って契約期間を3年としたことと、コロナ禍の影響を挙げています。

くわいナース登録者の退職届は、2019年6月から2026年5月までに48件を把握しました。同じ人が再登録後に再び退職した可能性があるため、人数ではなく件数での集計です。理由の内訳は家庭・育児・介護・転居が19件で4割を占めました。制度を置くだけでは確保できない、というのが同院の総括です。看護職確保の視点として「何人いるか」に加えて「何時間なら働けるか」を見る必要がある、と結びました。

くわいナースは人員配置の計算には入らず、プラスアルファの体制として運用されているといいます。村上氏は、勤務が午前中から午後3時ごろに集中するため繁忙時間に合わせられていると説明。不在の日はかえって忙しく、「今日くわいちゃんがいない」という声が出るほどだと述べました。

藤田医科大学病院の眞野惠子統括看護部長は、「昼夜遷移の少ない勤務」の段階的な導入と検証結果を報告しました。昼夜遷移とは、生活リズムが昼間から夜間、夜間から昼間へ切り替わることを指し、勤務表の勤務記号の並びから回数を数えられます。同院の従来勤務では月8〜10回発生していました。

1か月を日勤週・長勤週・夜勤週にブロック化し、ブロックの切れ目に休みを挟む勤務表に組み替えています。精神科病棟の看護師20名を対象に活動量計で測定したところ、睡眠効率は3.8%改善、総睡眠時間は42分延長、入眠までの時間にあたる睡眠潜時は7.8分短縮。いずれも統計学的に有意な差です。連続日勤は4日目で睡眠効率が明確に下がることから、3日以内が妥当と結論づけています。

昼夜遷移の少ない勤務による客観的睡眠指標の変化。藤田医科大学病院 資料3より

睡眠指標の改善と本人の受け止めは一致しませんでした。新人看護師224名への調査(有効回答184名)で、勤務満足度が10点満点で8月の5.8点から翌2月の5.2点へ有意に低下しています。連続日勤が身体的にきついという自由回答が背景にありました。同院はこの結果も併せて報告しています。

眞野氏は質疑のなかで、新人看護師の離職率を2023年度7.5%、2024年度5.2%、直近5.3%と説明しました。全国平均の8.4%より低いとしたうえで、離職率で効果を測れるかどうかは現時点では判断できない、と述べています。

委員からは在宅・中小病院への目配りを求める声

質疑では、資料が病院中心である点への注文が相次ぎました。

日本看護学校協議会会長の水方智子氏は、2040年に向けて在宅医療の需要が高まるなか、訪問看護や介護施設で働く看護職員の勤務実態が十分に見えていないと指摘。給与、勤務時間、夜間対応、離職理由などのデータを示すか、なければ調査を実施するよう事務局に求めました。単独訪問時の安全確保とカスタマーハラスメント対策も、勤務環境改善の課題として位置づけるよう要望しています。

大分県看護協会会長の玉井保子氏は、論点4項目に沿って意見を述べました。3時間程度の短時間勤務、業務を限定したジョブ型雇用、1日単位のスポットナースなど選択肢を広げれば雇用は広がるとしたうえで、夜勤を担う看護師の確保が課題だと指摘。診療報酬上の夜間の看護体制の評価について、夜間手当が10年間変わっていないと述べ、仕組みの改善を求めました。

玉井氏はタスク・シフト/シェアに関して、特定行為研修修了者が急性期に偏っている状況を挙げ、在宅・慢性期を担う研修施設への支援拡充を要望。訪問看護ステーションへの看護補助者の配置や同行訪問の検討と、診療報酬上の評価も求めました。ハラスメントや暴力への対応、身体的負担の大きいケアなど、看護師1人では負担が大きい場面が多いことを理由に挙げています。

DXについては、今年度に設けられた200億円規模の補助制度は要件が厳しく対象が限られると指摘。病院規模を問わず利用しやすい制度への見直しを求めました。導入費だけでなく、運用保守や職員研修といった継続的な費用への対応も必要だとしています。資料1によると、業務のDX化に取り組む医療機関を支援するため、令和7年度補正予算で200億円が計上されました。

看護管理者の育成では、大分大学と連携してAIを現場で活用するための研修を今年度実施することを紹介。定員20名に対し130名を超える応募があったといいます。

山梨大学大学院総合研究部の小林美亜特任教授は、ICTは機器の導入自体が目的ではなく、業務の流れをどう変え、看護師の負担をどれだけ減らせたかが重要だと述べました。生み出された時間が専門性を発揮すべき業務に振り向けられたかまで評価する必要がある、との立場です。個別機器への補助にとどまらず、業務再設計・人員配置・タスク・シフト/シェアまで含めた組織変革を一体的に支援する仕組みを提案しました。評価の物差しとして挙げたのは、直接ケア時間、超過勤務、患者安全、職員負担といった共通指標です。

小林氏は看護管理者への支援についても、研修で知識やスキルを身につける段階から、実際に組織を変えるための支援へ発展させるべきだと述べています。

ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、タイムスタディとタスク・シフトの資料について、対象病院の規模や機能による分析を求めました。ICTを導入できる病院とできない病院があり、大学病院か民間病院か、都市部か地方か、急性期か回復期かで分けて考える必要があるとの理由です。事務局は、個別に分析することは可能だが44病棟という規模ではどこまで反映できるかが課題だと応じました。病床の特徴によって有効な機器が異なる実態は把握している、とも説明しています。

山口氏は、管理者になりたくないという声が増えている実感にも触れ、看護管理者を維持していくために何が必要かを若い世代に調査すべきだと提起しています。

風間氏は、今年度の医療機関の業務効率化・勤務環境改善に関する事業について、国と地方を合わせた約300億円規模に対して採択率が全国的にも福島県内でも低いと指摘。事業効果を見通せる形で重点化し、予算と支援内容を充実させるよう求めました。

カスハラ防止措置、10月1日から事業主の義務に

資料4は医療分野のカスタマーハラスメント対策です。労働施策総合推進法等の改正法(令和7年法律第63号)が令和7年6月11日に公布されました。カスタマーハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置が、事業主に義務付けられます。施行日は令和8年10月1日。病院をはじめ医療機関も事業主として対象です。

厚労省のリーフレットは、対象となる「顧客等」の例として、駅・空港・病院・学校・福祉施設・公共施設などの利用者を挙げています。

事業主が講ずべき措置は、方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、抑止のための措置、プライバシー保護など併せて講ずべき措置の5区分。特に悪質な事案への対処方針をあらかじめ定めて職員に周知し、対処できる体制を整えることが求められます。

労働施策総合推進法等の一部を改正する法律の概要。資料4より

令和8年度の「業種別カスタマーハラスメント対策の取組支援」モデル事業は、医療業を対象に実施されます。雇用環境・均等局と医政局が連携し、医師会や看護協会などの業界団体と検討委員会を設け、業界共通の対応方針と対処法を策定して傘下の医療機関へ周知する流れです。

資料4は令和5年度の「職場のハラスメントに関する実態調査」を引いています。過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為の相談を取り扱った企業(n=2,167)では、相談件数が「増加している」が23.2%。「減少している」の11.4%を上回りました。パワハラとセクハラでは減少が増加を上回っており、傾向が逆です。

該当すると判断した事案があった企業(n=1,880)の被害は、通常業務の遂行への悪影響が63.4%。労働者の意欲・エンゲージメントの低下が61.3%、労働者の休職・離職が22.6%でした。勤務先が予防・解決に積極的に取り組んでいる労働者で迷惑行為を経験した割合は12.8%、あまり取り組んでいない勤務先では23.1%です。

厚労省はeラーニング教材「医療現場における暴力・ハラスメント対策」を公開しています。1コンテンツ20分程度で全12本。総再生回数は令和8年3月末時点で25万5097回です。この教材を使った研修の経費には地域医療介護総合確保基金を充てられます。

示された論点と今後

事務局が示した論点は4つです。多様で柔軟な働き方の普及に向けた追加の取組。多職種がそれぞれの専門性を発揮するタスク・シフト/シェアの推進策。ICT機器等による看護業務効率化を広げる方策。勤務環境改善と業務効率化を進められる看護管理能力への支援。

看護職員の勤務環境改善に関する論点。資料1より

厚労省が第1回に示したスケジュールでは、2026年春ごろから秋ごろにかけて養成・確保対策と需給推計を議論することになっています。取りまとめに向けた議論は2026年冬ごろの予定です。

第4回に示された検討スケジュールで第6回以降に割り振られているのは、今後の看護職員に求められる資質、基礎教育等を含む養成課程・研修の在り方、医療業界外の社会人経験者のリスキリング支援、地域偏在への対応、ハローワークと一体となった就職支援、需給見通しです。進捗によって変わり得るとの注記が付いています。

病棟の「リハビリ・自立援助」を半数の病棟が他の医療職と分担している一方、タスク・シフト/シェアの課題として最も多く挙がったのは受け手の余力でした。看護の勤務環境をめぐる議論が、リハビリ職の業務量の議論と地続きであることを示す回です。

参考資料

第5回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料(厚生労働省、2026年9月14日)

第1回 資料2 今後の検討スケジュールについて(厚生労働省、2026年4月10日)

第4回 資料2 今後の検討スケジュールについて(厚生労働省、2026年7月23日)

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