6日社会保障審議会・介護給付費分科会にて第2ラウンドの議論が開始。今回は訪問リハビリテーションに焦点を絞ってお伝えします。
論点1: リハビリテーションにおける医療・介護連携の推進
退院後のリハビリテーション利用開始の遅延問題
退院後迅速に訪問リハビリテーションを開始することは、機能回復において重要である。しかし、実際には退院後2週間以上経過してからリハビリテーションが開始されるケースが少なくない。この遅れは、機能回復の機会を逸する可能性がある。
情報の連携不足
疾患別リハビリテーションの計画書が介護保険のリハビリテーション事業所に伝わっているのは44%に過ぎず、より質の高い、連続的なリハビリテーションの提供が求められている。通所リハビリテーションでは、退院時の医療機関との連携に関する評価が現行基準では不足している。
医療保険から介護保険へのスムーズな移行
医療保険から介護保険への移行時に、質の高いリハビリテーションを早期かつ連続的に提供するための方策が求められている。
提案された対応策
○ケアプラン作成時の時間短縮を目指し、「主治の医師等」の範囲に入院先の医師を含めることの明確化。
○疾患別リハビリテーションを受けた利用者に対し、退院後の訪問リハビリテーションの必要性について、入院中の医療機関の医師が情報提供を行い、その情報を基に訪問リハビリテーションを実施した場合の評価の柔軟化。
○退院時の情報連携を促進し、退院後早期に質の高いリハビリテーションを実施するための新たな対応策の導入。これには、医療機関のリハビリテーション計画書を基にリハビリテーション計画を作成することを基本報酬の算定要件に加えることや、訪問リハビリテーション事業所の専門職が退院前カンファレンスに参加し、退院時共同指導を行った場合の加算設定が含まれる。
論点2: 介護予防訪問リハビリテーションの質の向上に向けた評価
長期利用者への新たな減算導入
令和3年度の改定で、介護予防リハビリテーションの長期利用者に対する12月減算が導入された。これは、適切なサービス提供を促すための措置であるが、長期利用者の割合は48.8%にも上っている。
機能維持の評価
介護予防サービスは、要介護状態の予防に重要な役割を持っている。そのため、単に長期利用を適正化するだけでなく、機能維持を達成していること自体を評価する意見が存在する。
アウトカム評価の現状
生活期リハビリテーションのアウトカム評価である事業所評価加算の算定率は4.6%と低い。要介護認定の期間が長いために改善が見られにくいというのが、算定が困難な理由の一つとされている。
現行評価システムの問題点
要支援の介護認定の有効期間が現在最長48ヶ月となっているため、加算新設当初の基準が現状に合致していない可能性がある。
質の確保に向けた提案
○長期利用者に対しては、リハビリテーション会議で計画の見直しを行い、適切なマネジメントのもとでLIFEへのデータ提出を定期的に行うことで、評価の差別化を図る。
○要介護認定制度の見直しに伴い、事業所評価加算の見直しを行い、LIFEへのデータ提出を推進する。これにより、より適切なアウトカム評価に向けた検討を進める。
論点3: 認知症リハビリテーションの推進
認知症ケアの現状
認知症患者に対するリハビリテーションは、介護老人保健施設や通所リハビリテーションでの評価が進んでいます。これに加えて、訪問リハビリテーションによる効果も注目されており、患者が住み慣れた自宅での生活を継続するための支援が求められています。
在宅リハビリテーションの目標
認知症患者の在宅リハビリテーションは、単に身体機能の維持・改善に留まらず、認知機能や生活環境を総合的に考慮したアプローチが必要です。応用的動作能力や社会適応能力を最大限に引き出すことで、患者の生活機能の改善を目指します。
新たな加算の提案
認知症患者の在宅リハビリテーションをさらに推進するためには、以下のような新たな加算の設定が提案されています。
○認知機能や生活環境を考慮した個別のリハビリテーションプランの策定。
○患者の社会的な適応能力を考慮したリハビリテーションの実施。
○これらのリハビリテーションを実施する際に、新たな加算を設けることで、質の高いリハビリテーションの提供を促進する。
論点4: 訪問リハビリテーション事業所のみなし指定
訪問リハビリテーション事業所の現状
訪問リハビリテーション事業所の開設者種別割合は、病院・診療所が大多数を占める一方で、介護老人保健施設は全体の約四分の一を占めています。しかしながら、介護老人保健施設のうち実際に訪問リハビリテーションを提供しているのは約三割にとどまっており、サービスの提供体制には改善の余地が見られます。
事業所開設の障壁
介護老人保健施設及び介護医療院における訪問リハビリテーションの促進に際して、病院・診療所と比較してみなし指定が認められていないため、介護保険事業所番号の取得が必要となります。この手続きは時間と手間を要し、新たな事業所の開設を妨げる要因となっています。
医師配置の要件差異
介護老人保健施設では、常勤の医師を1名以上配置する必要がありますが、一定の要件を満たせば常勤換算方法での計算が認められています。これに対し、訪問リハビリテーション事業所では、より厳格な医師配置が求められており、要件に差異があります。
提案された対応策
訪問リハビリテーション事業所の拡充を目指し、介護老人保健施設が医師の配置基準を満たした上で、介護保険法に基づく許可を得た場合には、訪問リハビリテーション事業所としての指定をみなしで受けられるようにする提案がなされています。これにより、訪問リハビリテーションサービスの提供拡大と手続きの効率化が期待されます。
論点5: リハビリテーション計画の作成に係る診療未実施減算
訪問リハビリテーションにおける現行制度
訪問リハビリテーションサービス提供時に事業所医師が診療を行えない場合、特定の要件を満たすことで他の医療機関の医師が代わりに診察を行い、適正化された単位数での算定が可能です。しかし、「適切な研修の修了等」の要件については、令和6年3月31日まで適用猶予が設けられており、多くの事業所で医師の研修受講状況が不透明な状態が続いています。
診療未実施減算の問題点
令和3年度の改定で診療未実施減算の減算幅が拡大されましたが、依然として一定の割合で算定されている状況があります。これは、訪問リハビリテーションが必要な利用者へのサービス提供維持と、事業所医師の関与を進めるという二つの観点から、適切な対応が求められています。
提案された対応策
事業所に対して「適切な研修の修了等」の確認を義務付け、研修受講状況を明確にすることが提案されています。さらに、適用猶予期間を令和6年3月31日からさらに3年間延長することで、事業所外の医師にも研修の修了を促すことが検討されています。また、次回改定に向けて、事業所医師の診察が困難な理由の解析と、診療未実施減算に対する適切な対応策の検討が求められています。
論点6: 訪問リハビリテーションと介護予防訪問リハビリテーションの評価の適正化
現行制度における基本報酬の同一性
現在、訪問リハビリテーションと介護予防訪問リハビリテーションは、基本報酬が同額で設定されています。これは、サービス提供の基本的な枠組みが同様であることに基づいていますが、実際のサービス提供における負担の違いは考慮されていません。
訪問リハビリテーションの負担の違い
要介護者は要支援者に比べて、心身機能や社会参加の機会が著しく低下しています。両者に対して提供される基本動作訓練や立位歩行訓練などの身体介助を伴う訓練は、要介護者の方が従事者にとって負担が大きいとされています。この点が現行制度において十分に評価されていないという問題があります。
適切な評価への対応策
要介護者と要支援者への訪問リハビリテーションサービスにおける従事者の負担の違いを考慮し、より適切な評価を行うためには、基本報酬に差を設けることが提案されています。これにより、要介護者へのサービス提供にかかる追加的な労力が適切に評価されることになります。
論点7: 地方分権
地方分権改革の提案と今後の検討
令和4年に行われた地方分権改革における提案募集では、リハビリテーション事業所の指定基準に関する変更が提案されました。これには、医師の必置要件や開設場所の制限など、現行の指定基準の制限を撤廃する内容が含まれています。社会保障審議会の意見を参考にしながら、令和5年度中にこれらの提案に対する結論を出すことが予定されています。
社会保障審議会の意見と対応策
これまでの社会保障審議会の意見を考慮すると、リハビリテーションの質を確保するためには、医師の配置などの人員基準が重要であるとの指摘があります。この意見を踏まえ、介護老人保健施設などで実施される訪問リハビリテーションについては、医師の人員基準を本体施設と同等に見直し、みなし指定を可能にすることで、訪問リハビリテーション事業所の拡充を図ることが提案されています。
▶︎https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001164600.pdf
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