要介護認定制度が15年ぶりの大幅見直しに向けて動き出すことが、第121回社会保障審議会介護保険部会で明らかになりました。現行の一次判定は施設入所者のデータを中心に構築されており、在宅や通所サービス利用者の実態が反映されていないとの指摘を受け、令和7年度に大規模な実態調査を実施します。
見直しの背景には、令和6年の規制改革実施計画での指摘があります。現行制度は介護保険制度開始時に特養・老健・療養型病床群のデータをもとに構築され、平成21年度の見直し以降、大規模な調査は実施されていません。在宅の生活環境やバリアフリーの有無などが十分反映されていないとの批判が高まっていました。
過去にも在宅介護の実態調査は行われましたが、いずれも一次判定への反映には至りませんでした。平成13年度の調査では「介護提供者や環境要因により同じ状態でも介護時間に大きな差があり、平均的なケア時間の算出が困難」、平成18年度調査では「データの精度に課題」として反映が見送られた経緯があります。
今回の調査は、平成18年度に実施した「高齢者介護実態調査」を参考に、同じケアコードを用いて在宅・通所サービス利用者を対象に実施予定です。対象者の状態に偏りが生じないよう選定し、来年度に部会へ結果報告する計画です。
ただし、現場からは慎重論が相次ぎました。認知症の人と家族の会の和田委員は「認知症に伴う周辺症状など、身体介助に現れない介護者の実際の手間を一次判定に必ず反映してほしい」と期待を示す一方、長崎県の新田参考人は「平成21年度の見直しで大きな混乱を招いた経緯があり、特定の介護サービスに限定した調査結果で機械的にロジックを変更すべきではない」と警鐘を鳴らしました。
全国町村会の中島委員は「要介護認定は制度の要。十分な期間を確保し、関係者の意見を踏まえて検討してほしい」と要望しました。
現場からは「自治体によって同じ状態でも認定結果が異なる」「認知症が認定結果に反映されにくい」との声が多く寄せられており、公平性確保への期待は高まっています。しかし、制度変更による混乱回避と実態反映のバランスをいかに取るかが今後の大きな課題となります。
調査結果を踏まえた具体的な制度見直しの議論は、令和8年度以降に本格化する見通しです。
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