キャリアコンサルタントが徹底サポート

インタビュー174回:理学療法士(PT)井ノ原裕紀子先生 リンパ浮腫治療と保険適応外でのケア no.2

5430 posts

保険適応外の領域

ino02

井ノ原先生:リンパ浮腫の治療は保険適用外なので、リハビリでオーダーが出ることがありません。だから、リハ職が直接関わる機会が本当に少ないんです。

患者さまの身近にいて、ベッドサイドで早い時期から直接悩みを聞いている看護師さん、特に中堅以上のベテランの方たちが、最も問題意識を持ちやすい立場にいらっしゃるようです。

そのため、リンパ浮腫に関わるのは圧倒的に看護師さんが多い印象があります。

保険適用外なので、一人に何十分も関わることは難しいため、業務の合間や業務後に、ほとんどボランティアという形で対応していたと聞きました。



だったら、リンパ浮腫に専従するスタイルを確立した方が、患者さまのためにもなるんじゃないかなと思い至って。

私の場合はもともとHer’sという事業体があったので、新事業という形でケア部門を立ち上げて、対応を始めました。 

インタビュアー:現在は、リンパ浮腫に関わる理学療法士は増えましたか?

増えたと思いますよ。現在では厚労省の後援で(一財)ライフ・プランニング・センターが主催する「がんのリハビリテーション研修」と並ぶ「新リンパ浮腫研修」が主流になってきつつあるようですから、リハ職は急増したんじゃないでしょうか。

インタビュアー:今もリンパ浮腫では点数は取れないのですか?

井ノ原先生:2008年から入院中の指導管理料として100点と、弾性装具の療養費の給付が認められて、その後さらに退院後1回は算定されるようになりました。

今度の改定で、ついに複合的治療も保険収載されることになるようですが、今のところ、時間や回数などに制限がついての最大200点と聞いています。

リンパ浮腫の原因の9割以上は、がんの外科手術

ino4

インタビュアー:がん患者の取り組みに興味を持ったのはどうしてですか?

井ノ原先生:リンパ浮腫の原因は、国内では九割以上ががんの外科手術(リンパ節郭清)です。原疾患を知ることで、患者さまの病態の全体像を捉えられるようになり、リンパ浮腫に留まらない、より慎重なリスク管理ができるようになるだろうと考えました。

原疾患であるがんを知らずにリンパ浮腫だけに着目するのは「木を見て森を見ず」となるのでは?と感じるようになったんです。

それに、病気や治療について十分な理解を持った上で患者さまとコミュニケーションが取れることで、信頼関係もぐっと向上するだろうと。それで、視野を広げていきましたね。

インタビュアー:昨年には芸能人が乳がんの手術をして話題になりましたが、乳がん患者は増えていますか?

井ノ原先生:婦人科系の疾患はマイナーな印象がありますが、乳がんはピンクリボン運動はじめ、様々な取り組みが活発に行われていて、患者さまが前向きになりやすい環境が整っていると感じます。なので、カミングアウトしやすいのかも知れませんね。

食生活や生活様式の変化も起こっていて、罹患しやすくなってきているということはあると思います。それと、芸能人のカミングアウト等の影響も含め、わずかながらも検診受診率が増加することにより、早期発見者も増え、結果として罹患率が増加しているように見える、ということもあるのではないかと考えています。

インタビュアー:理学療法士が、乳がん術後のリハビリを行うのは少ないのでしょうか?

井ノ原先生:術後に過度の安静を保ち過ぎると、皮膚の引きつれを生じ、肩関節の可動域障害から拘縮へと発展してしまう危険がありますから、早期から介入することが望ましいです。

しかし、乳がんの方の入院は約一週間〜十日間と短く、入院中、ドレーンが入っている間は、諸々のリスクが高いため積極的なROM運動が進められないので、実際にはちょっと難しいようです。

入院中から理学療法士が関わっている病院もありますが、その多くはセルフエクササイズ指導をするくらいと聞いています。退院後に何か問題があれば、介入できる可能性はあるようです。


  *目次
【第1回】ブラックジャックに憧れて
【第2回】保険適応外のケア
【第3回】リンパ浮腫、診療をしないと…?
【第4回】自費診療と病院との違い
【第5回】産後1ヶ月の職場復帰
【第6回】開業について、私はこう考える!

井ノ原先生も登壇し、女性医学が学べる「ウーマンズヘルスケアフォーラム2016」!

詳しくは、こちらから↓woman2016

井ノ原裕紀子先生経歴

1993年3月 神戸大学医療技術短期大学部 理学療法学科卒業
同 4月 ㈱塩野興産入社
2005年 11月 【Her's】創業
2006年12月 ㈱塩野興産退社
2007年3月 Her's・ケア部門立ち上げ
2008年4月 第3子(次女)出産
2013年1月 第1回リンパ浮腫療法士認定
2013年9月 一般社団法人WiTHs設立(代表理事)
2015年1月 一般社団法人WiTHs退社
2015年3月 がんリハビリテーション インテンシブコース修了
2015年11月 EPochアカデミック事業部部長就任

  【ようこそ!Her’sへ】
 http://hers.ko-co.jp/
インタビュー174回:理学療法士(PT)井ノ原裕紀子先生 リンパ浮腫治療と保険適応外でのケア no.2

Popular articles

PR

Articles