院長からインソールの処方をもらうために
ーー アメリカに3度も徒手療法を学びにいったとお聞きしましたが、それはなぜですか?
礒脇先生 大きな理由は、継承・伝達するためです。自分が学んだことを誰かに評価してもらわないと下に伝えられない。そのために試験を受けに行ったです。
学んだことを自分のものとしてカタチにすることは誰にでもできます。それを自分の中だけではなく、下の世代に残していくことによって幸せになる患者さんが増える。とても大事なことです。
あと、今の医療を考えたときに、医療行為のなかでセラピストとドクターがお互いことを理解してやることに意味があると思っています。オペや処置などを理解しているセラピストがやるから色んな部分で対応できる。
症例発表や学会でセラピストがセラピスト向けに発表している機会ってよくありますよね。
でもドクターに対してはプレゼンテーションできない人が多い。
うちの病院では、患者さんにどういう評価をして、どういう治療をしているのかを院長先生に実感してもらう。インソールを入れたら、痛みはどうなるのかなども院長先生にしています。
この病院でインソールの処方がでるようになるのに4、5年かかりました。でも今はインソール目的で来院される患者さんもいる。院長先生からもインソールいれたらどうか、私に聞いてきたりもします。
テーピングでいいのか、インソールを削ったほうがいいのかこちらで判断したり、逆にインソールいれたいときは必ず先生に声をかけます。
この声かけがとても大切で、そうすることで信頼関係ができてくる。セラピストのなかで「理解してもらえない」ってあきらめて、自分が学んだことを自分のなかで終わらせている人って多いと思うんです。
自分の武器というものを後輩にも、医者など他職種にも伝えることがとても大事だと思っています。
徒手療法は問診が6割7割
ーー 徒手療法について少し詳しくお話しいただいてもよろしいでしょうか?
礒脇先生 徒手療法って問診が6割7割なんですよ。患者さんの膝が痛いっていう情報が入ったら、なぜその方が膝が痛くなったか、ヒストリーを聞いていく。その人を知ることから始まるのが理学療法です。
目に映るものだけでは錯覚もあるだろうから当然間違いは起こる。だから見るだけだけじゃなくて触るんです。触覚を使って、モニタリングする。
まあ、当たり前なことなんだけど一単位20分しかないからって、省略する人ってけっこういるんじゃないかな。でも、時間をかけていいものはかけていいんです。
例えば、首が痛くなったから診てくださいって来たとします。関節の歪みがあるのか、炎症があるか、動かしたときに何が起きるかわからないじゃないですか。
人が人を見る仕事なので、当然ミスは起きる可能性があります。そのミスの起きる確率をどれだけ少なくできるか、その評価という過程をしっかり踏むことそれが大事です。
磯脇先生にとって、プロフェッショナルとは
礒脇 雄一先生経歴
溝口整形外科
日本理学療法士協会会員
身体運動学的アプローチ研究会会員
日本徒手理学療法学会会員
日本徒手療法学会会員
*目次
【第1回】徒手療法を学びたくてアメリカへ
【第2回】運動器の診かたの継承と伝達