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レントゲン診断の重要性を考える|竹井仁先生

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カパンディに書かれているのは本当か?

 

ーー 先生の専門領域について教えてください。

 

竹井先生 私は最初、代謝・心肺系の研究をしていました。徒手療法で論文を書くのは海外ではメジャーでしたが、日本ではまだまだマイナーでした。徒手療法でエビデンスを出すというのはなかなか難しい、まずは、業種として論文を書くことも必要でしたから、心肺系にも興味がありエネルギー代謝関係の研究をたくさんやっていましたね。

 

その後、MRIや超音波が導入されたのを機に運動器や基礎の研究にシフトしていきました。カパンディーに書かれていることにしろ、講習会で習った事にしろ、「本当かな?」と思うことがあります。

 

「仙腸関節は動くのか否か」などの論文がありましたが、生体でやっているものはほとんどない。当時はAKAなども学んでいたので、仙腸関節の前上方滑りなど、「なぜ前上方に動かすんだ?」という疑問を確認したいという思いがありました。

 

実際に仙腸関節とそれに伴う腰椎の動きなどを研究をしていました。肩関節にしても、あるコースで教わったことを「本当かな」と疑問をもって、研究してみるとそれは間違っていたり。全てを鵜呑みにするのではなく、自分の中で「これは本当にそうなのか」と感じたものは研究をしてみるしかない。

 

そういう思いでやっていました。

 

レントゲン診断の重要性を考える

 

ーー 先生は整形徒手理学療法認定士(OMPT:Orthopaedic Manipulative Physical Therapist)も取られていますが、レントゲン学なども学ぶと思います。徒手療法をやる上ではレントゲンの診断も重要視されていますか?

 

竹井先生 参考としては必要ですね。しかし実際に臨床では画像診断と一致しないケースは結構多いです。MRIをとってもL4/L5のヘルニアというのは半分ぐらいの若い子たちにも見られます。でもその子たちは何も症状を訴えていない。もしかしたらその子たちは一生そのままでも暮らしていけるかもしれない。

 

でも腰が痛くなってMRIをとったら医者に「ヘルニアです」と言われてしまう。それで本当にいいのか。デルマトームに一致しない痺れなんていうのは沢山ある。「どう考えたらいいのか」というときに、“筋膜” という考え方が重要になってきます。もちろん画像と一致しているケースも必ずあります。

 

 理学療法士として、「一致していないときにどうするのか?」を考えることが重要になってくると思います。

 

筋膜系との出会い

ーー 筋膜系に注目したのはいつ頃からでしょうか?

 

竹井先生 1995年に理学療法士のJohn F.Barnesから筋膜リリースを習って、それから、筋膜のことを勉強して、本を書いて、講習会をしていました。2003年にも、John F.Barnesのクリニックで1週間の臨床実習を受けてきました。

 

ただしエビデンスという点では物足りなかったんですね。イタリア発祥の理学療法士のLuigi Steccoが書いた筋膜マニピュレーションの本を、ふと見てみると、とてもいいことが書いてありました。「これは訳す価値があるな」と思い翻訳権を取得しました。

 

活動しているとイタリアの方から、「日本で1dayのワークショップをやりたい」という連絡がありました。ワークショップを開催した際に、向こうのインストラクターたちが「イタリアに受講しにおいで」と誘ってくれ、自分自身がその技術を習わないことには広められないと思い、全てのコースを受けてきました。

 

去年の9月にインストラクター試験に合格し、アジア初の国際インストラクターを取得し、それから日本でも一人で講習会をできるようになりました。

 

エビデンスがないとただの経験則になってしまう

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竹井先生 エビデンスがないとただの経験則になってしまい、やはり医学としては弱い。その点、筋膜マニピュレーションというのは1歩進んだ方法だなと感じています。私自身も画像の診断ではわからなかったパズルが、解けるようになってきてるかなと感じています。

 

ーー 東洋医学の経絡とも繋がりがあるという話を伺ったことがあります

 

竹井先生 最初からそこを参考にしたわけではなく、筋膜の筋外膜と深筋膜の間の入り込み、繋がりを解剖学的なところから解明した部位(協調中心CCと融合中心CF)を、あとで見てみると7、8割が合致していた。トリガーポイントとも合致している部分はあります。

 

ただトリガーポイントにしろ経穴にしろ、すべてそれは「そこを触ると何か効果がある」という経験則でした。それが解剖生理の中ではっきりとわかったということです。針とか指圧とかに否定的なところがあるのは、エビデンスがないからですよね。だから理学療法士がそこに頼るわけにはいかなかった。

 

ですが、経験則では無く、エビデンスがあって、さらには経絡やトリガーポイントともある程度合致している。ということは我々理学療法士にとって、とっつきやすいし、納得しやすいですよね。

 

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竹井 仁先生経歴

 

首都大学東京 健康福祉学部 理学療法学科 教授。

医学博士 理学療法士 OMT

首都大学東京健康福祉学部理学療法学科などの教育機関で学生教育を実践するかたわら病院と整形外科クリニックにおいて臨床も実践。

各種講習会も全国で展開中。

専門は運動学・神経筋骨関節系理学療法・徒手療法。解剖学にて医学博士取得。

Kaltenborn-Evjenth InternationalのDiploma取得(OMT)。

 

【著書】

 

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